本研究成果のポイント
〇管内定常流・高周波脈動流における壁面熱伝達に対して、脈動周波数・管形状が及ぼす影響を調査した。
〇流動場の乱れ、曲り管のみで生じる曲り部での二次流れ・渦構造の時間変化が壁面熱伝達に影響し、曲り管の伝熱抑制・熱損失低減に繋がることが分かった。
〇本研究成果の流速脈動周期が短い流動場・渦構造と壁面熱伝達機構の解明は、例えば複雑な曲り形状を有する自動車用エキゾーストマニホールドからの壁面熱損失低減要素の設計に寄与できる。
概 要
自動車排気ガスに含まれる窒素酸化物 (NOx) などの有害物質排出低減は、地球温暖化などの環境問題対策に重要かつ喫緊のテーマである。エンジンシリンダから出る排気ガスは、曲りを有する排気管を通り三元触媒で浄化されるが、効果的な触媒反応の活性化には排気管からの熱損失低減が必要であり、高周波脈動乱流場構造と壁面熱伝達の相関を明らかにすることで、実機での熱損失低減要素を見出すことができる。
本研究室ではマツダ株式会社との共同研究で、自動車排気系の形状・運転条件を模した直管・二重曲管内の定常・脈動流における管の曲り、および流動場の脈動が壁面熱伝達特性に及ぼす影響を、Womersley数 (Wo:無次元脈動周波数) Wo=33-80 の範囲で調査した。本研究で用いた直管ではヌッセルト数 (Nu:伝熱特性評価の無次元数) が最大・伝熱促進が生じる Wo=42-49 で、曲管ではNu数が最小・伝熱抑制が生じることが分かった。脈動流の加速・最大流速時に生じた乱れが減速時に残留、さらに曲管では曲り部の二次流れが伝熱促進の源になるが、脈動流では二次流れ強度が減速時に弱まる効果が支配的で、壁面熱流束も定常流より小さくなることが実験・シミュレーションで分かり、曲り管における高周波脈動乱流の伝熱抑制機構が明らかにされた。本研究成果は学術ジャーナル「International Communication of Heat and Mass Transfer」に掲載された。


論文情報
Y. Kato, K. Fujimoto, H. Yanagida, K. Nakamura, and Y. Ogata, Effect of the flow structure of pulsating turbulent flow in a duct with a double 90°bend on convective heat transfer at the wall,
International Communication of Heat and Mass Transfer (2025)
DOI : 10.1016/j.icheatmasstransfer.2025.108795