本研究成果のポイント
〇カーボン担体に代わる高耐久な酸化物担体として、マクロポーラスNb–SnO2を開発した。
〇火炎を用いた噴霧乾燥プロセスにより、数百nmスケールのマクロ孔を粒子に導入した。
〇触媒層形成後も多孔質構造が保持され、ガス拡散抵抗が低減し、最大電流密度が向上した。
概 要
水素などの燃料に含まれる化学エネルギーを直接電力へと変換する燃料電池技術の発展が期待されています。現在の固体高分子形燃料電池 (PEFC) の電極触媒には、プラチナを担持したカーボン微粒子が広く用いられています。しかし、カーボンは高電位条件下で劣化することが知られており、トラックやバス、船舶など多様なモビリティへの応用拡大に向けて、その代替材料の開発が急務となっています。
これまでカーボン代替材料として熱的・化学的に安定な金属酸化物が検討されてきましたが、カーボンのような発達した多孔質構造を欠くため、十分な性能を発揮できないという課題がありました。
本研究では、この課題を克服するために、マクロポーラスNbドープSnO2 (NTO) 粒子を触媒担体として導入し、PEFCの耐久性と発電性能を両立させる新しい材料設計を提案しました。NTOに数百nmスケールのマクロ孔を導入することで、触媒層内のガス拡散と水排出が促進され、ガス拡散抵抗の低減とともに発電性能の向上に成功しました。本成果は、酸化物担体の高い耐久性とカーボン担体の優れたガス輸送特性を兼ね備える新しい触媒担体設計指針を示すものであり、次世代の高耐久・高性能燃料電池の実現につながることが期待されます。
なお、本研究成果は米国化学会の学術誌 Nano Letters に掲載されました。
【論文情報】
Tomoyuki Hirano*, Takama Tsuboi, Thi Thanh Nguyen Ho, Eishi Tanabe, Aoi Takano, Mikihiro Kataoka, and Takashi Ogi*, Macroporous Structures of Nb–SnO2 Particle as a Catalyst Support Induce High Porosity and Performance in Polymer Electrolyte Fuel Cell Catalyst Layers, Nano Letters, 24(34), 10426-10433, 2024.

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