広島大学 生物生産学部
上田 晃弘 E-mail:akiueda*hiroshima-u.ac.jp
(注: *は半角@に置き換えてください)
塩ストレス下での高い根圏pHはイネの若い葉へのナトリウム蓄積を促進する
本研究成果のポイント
- 塩ストレス下での根圏pHの上昇(アルカリ化)はイネの生育をより阻害
- 塩ストレス下での高い根圏pHはイネの若い葉へのナトリウム蓄積を促進
研究成果の概要
土壌表層に塩類が集積すると塩害が発生し、農作物の生育を阻害します。塩害には中性塩(NaCl等)が集積する場合と、アルカリ性塩(NaHCO3等)が集積する場合があります。後者の場合、土壌中の高濃度の塩分とともにアルカリ化が作物に悪影響を与えるので、より深刻な塩害であると言えます。
本研究では、塩害とアルカリ害が併発したときに、なぜ作物の生育がより深刻になるのかを明らかにするために、イネを使った検証実験を行いました。その結果、塩害単独処理よりも塩害とアルカリ害が併発した場合のほうがイネの生育が悪くなることが確認されました。一般的に、作物体内に過剰量のナトリウムが蓄積されると生育が阻害され、最終的には枯死に至ります。塩害下ではイネは根や古い葉にナトリウムを多く蓄積することで、若い葉を保護する機構を持っていますが、塩害とアルカリ害が併発するとイネは若い葉を保護する機構を働かせることができずに、若い葉に多くのナトリウムが蓄積されることが分かりました。本発見により、塩害とアルカリ害を併発した農地でも育てることができる強いイネを作るための育種目標が見えてきました。
本研究は科研費(20KK0129、23KJ1637)の助成を受けて行われました。
各栽培条件下におけるイネの生育。対照区(Control)や塩害区(Saline)と比較すると
塩害+アルカリ害区(Mild, Moderate, Severe SA)ではイネの生育阻害が顕著になる。
イネの若い葉におけるナトリウムの蓄積。
塩害+アルカリ害区(Mild, Moderate, Severe SA)では
より多くのナトリウムが蓄積されていることが分かるが(左図)、
塩害区(saline)では古い葉に多くのナトリウムが蓄積される(右図)。
論文情報
- 掲載誌: Journal of Soil Science and Plant Nutrition
- 論文タイトル: High pH Promotes the Buildup of Na+ in Rice Seedlings’ Young Leaves in Saline Conditions
- 著者名: Mami Nampei, Mitsuki Kondo, Nguyen Manh Linh, Akihiro Ueda
- DOI: https://doi.org/10.1007/s42729-025-02591-w

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