広島大学 生物生産学部
稲生 雄大 E-mail:inabu*hiroshima-u.ac.jp
(注: *は半角@に置き換えてください)
乳牛の生産性や内分泌代謝は牛舎の照明により変化するか?~白色LEDと無電極照明の比較~
本研究成果のポイント
- 青色光強度の高い白色LEDの照射は、青色光強度の低い無電極照明と比較し、暗期の血漿メラトニンおよびコルチゾール濃度を増加させた
- 白色LED照射により血中NEFA濃度が高い傾向を示し、光波長の違いが脂質代謝に影響する可能性が示された
- 白色LED照射群と無電極照明照射群間で、乳生産成績に差は認められなかった
研究成果の概要
白色LED(WLED)は、蛍光灯や水銀灯と比べて寿命が長く、各種施設で広く普及しています。WLEDは可視光の中で最も波長の短い青色光域(400–500 nm)に強い放射強度を有することが特徴です。一方、無電極照明(IL)は青色光域での光強度が低く、不快な眩しさが少ない照明源であり、電極を持たないため酸化や劣化が起こりにくく、寿命が長いことから酪農場での利用が進んでいます。しかし、WLEDとILの波長特性の違いが乳牛の乳生産や内分泌動態に及ぼす影響は明らかになっていませんでした。そこで本研究は、長日(16時間明期・8時間暗期)条件下でWLEDまたはILを照明として用い、乳牛の乳生産成績および血液成分に及ぼす影響を検討しました。その結果、乳量や乳成分には差が認められなかったものの、暗期の血漿メラトニンおよびコルチゾール濃度はWLED群で高値を示しました。コルチゾールはストレスマーカーであることから、WLED照射は乳牛にストレスを与えることが示唆されています。また、血漿NEFA濃度もWLED群で高い傾向を示し、これは脂質代謝亢進作用をもつメラトニンやコルチゾールの血漿濃度の上昇と関連する可能性が考えられます。今後は、分娩移行期における照明波長の違いが乳生産や繁殖成績に及ぼす影響について検討する必要があります。
出典:Inabu et al. (2025)より執筆者改変
論文情報
- 掲載誌: Domestic Animal Endocrinology
- 論文タイトル: Comparison of milk production and endocrine profiles of dairy cows exposed to either white light-emitting diode or induction lighting
- 著者名: Y. Inabu, Y. Takakura, Y. Shinohara, M. Sunadome, R. Watanabe, S. Kushibiki, T. Sugino
- DOI: https://doi.org/10.1016/j.domaniend.2025.106958

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