脱炭素時代の海上輸送を支える船舶運航最適化 ― 実船計測データに基づくCII適合運航支援技術の開発 ―

本研究成果のポイント

〇実船計測データに基づき、船速・主機運転状態・燃料消費量・CO₂排出量の関係を解析し、IMOのCarbon Intensity Indicator(CII)制度に対応した船速最適化手法を提案した。

〇 CIIランクA~Eを対象に、運航レベルごとの減速シナリオを比較し、環境性能の改善効果と輸送効率・経済性への影響を定量的に評価した。

〇過度な減速による輸送サービス低下を避けながら、安全性、省エネルギー運航、CII適合を同時に考慮する実用的な意思決定支援技術の基盤を構築し、現場適用への展開を示した。

概  要

 国際海事機関(IMO)は、国際海運の温室効果ガス削減に向けてCarbon Intensity Indicator(CII)制度を導入した。CIIは、船舶が単位輸送量あたりに排出するCO₂量を評価し、A~Eのランクで運航効率を示す指標である。船会社にとって、CII改善は単なる環境対策ではなく、運航計画、燃料費、サービス品質、船隊管理に直結する課題となっている。特に既存船では、主機や船体を大きく改造することが難しいため、実運航データに基づく船速管理が現実的な対策となる。 

 本研究では、実船から取得した航海データおよび機関運転データを用いて、船速と燃料消費量、CO₂排出量の関係を解析した。さらに、通常運航、段階的減速、CIIランク維持を想定した複数の船速最適化シナリオを構築し、各運航レベルにおけるCII適合可能性を評価した。その結果、適切な減速運航はCO₂排出量の削減とCII評価の改善に有効である一方、過度な減速は到着時間の遅延や輸送効率の低下を招く可能性が示された。また、船速を一律に下げるのではなく、航海区間や運航目的に応じて調整することが重要であることを明らかにした。 

 本研究は、実船データに基づいて環境性能と運航性能のバランスを定量化した点に特徴がある。今後、気象・海象予測や航路最適化と連携することで、安全性、経済性、環境性能を統合的に考慮した船舶運航支援システムへの発展が期待される。 

 本研究成果は、学術的・実用的価値が評価され、環境科学・海洋汚染分野のQ1ジャーナルである国際科学誌 Marine Pollution Bulletinに掲載された。

論文情報
Yan, D., Chen, C., Gan, W., Sasa, K., He, G., Yu, H. (2025). Carbon intensity indicator (CII) compliance: Applications of ship speed optimization on each level using measurement data. Marine Pollution Bulletin, 212, 117593,
10.1016/j.marpolbul.2025.117593


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