本研究成果のポイント
〇スラウストキトリッドという微生物を広島菜などの漬物調味廃液を用いて培養すると、有用なドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)といった多価不飽和脂肪酸が生産できた。
〇スラウストキトリッドの培養に際しては、漬物調味廃液の滅菌操作は不要であり、また、漬物調味廃液は繰り返し使用することができた。
〇スラウストキトリッドの培養産物は、DHA・EPA強化鶏卵の生産に利用できることが期待される。
概 要
DHAやEPAは健康維持に有用な多価不飽和脂肪酸であり、DHA・EPAサプリメントなど機能性食品の生産に使用されている。また、海産魚の成育にはDHAやEPAが必要であり、養殖魚の飼料にも利用されている。DHAやEPAの主な原料は魚油であるが、これら多価不飽和脂肪酸の今後の需要の増大を鑑みれば、漁獲に依存する魚油の生産は持続的ではない。そこで本研究では、DHA・EPAを生産する微生物スラウストキトリッドに着目し、有機物を豊富に含むが、高塩分のため再利用が難しい漬物調味廃液を基質として活用する炭素循環シナリオ(図1)を検討した。
漬物調味廃液をpH7に調整してAurantiochytrium sp. L3W株を培養した結果、人工培地には及ばないものの、DHAやEPAを含むバイオマスの生産に成功した(表1)。特に広島菜や梅干しの調味廃液から得られたバイオマスは、鶏卵のDHA強化に利用可能な水準であった。一方、サクララディッシュ廃液では共雑微生物の影響によりDHA・EPA含有量が低下した。さらに広島菜調味廃液を用いた培養後に上澄みを再利用してL3W株を繰り返し培養したところ、L3W株の増殖とDHA・EPA生産は継続したものの、再利用回数の増加に伴い低下した。原因を検討した結果、乳酸の蓄積がL3W株の増殖を阻害したことがわかった。また、後期の著しい生産性低下には利用可能な基質の枯渇も関与すると考えられた。本研究は、漬物廃液をDHA・EPA生産に有効活用できる可能性を示すとともに、乳酸によるスラウストキトリッドの増殖阻害を初めて明らかにした。
図1 炭素循環による漬物調味廃液からのDHA・EPA生産
表1 各漬物調味廃液を用いたL3W株の培養で得られたバイオマス(培養産物)生産量、そのDHA、EPA含有量
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広島菜 |
サクララディッシュ |
梅干し (5倍希釈) |
人工培地 (対照系) |
|
培養産物[g/L] |
3.2 |
2.3 |
2.8 |
1.69 |
|
DHA [mg/g] |
60.6 |
8.9 |
49.6 |
150 |
|
EPA [mg/g] |
2.5 |
0.28 |
0.45 |
4.59 |

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