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[研究成果]「うつ病改善に重要な神経栄養因子の分泌」に抗うつ薬のグリア細胞への薬理作用が関与



広島大学大学院医歯薬保健学研究院の薬効解析科学研究室・仲田 義啓教授らと国立病院機構呉医療センター中国がんセンターの臨床研究部・竹林 実副部長ら の共同研究グループは、抗うつ薬を飲み続けた場合に脳内に存在すると推定される比較的高濃度の既存の抗うつ薬が、モノアミン神経への作用だけでなくグリア細胞への作用を介して、神経栄養因子を誘導することを発見しました。

【本研究成果のポイント】

●従来の抗うつ薬が、神経細胞でのモノアミン再取り込み阻害作用(※1)だけでなく、脳の構成細胞の一つであるグリア細胞から、うつ病改善に重要な神経栄養因子を分泌する機構を解明



●グリア細胞からの神経栄養因子分泌作用の発現に必要な抗うつ薬の濃度が、臨床において治療効果発現に必要な期間(2~3週間)抗うつ薬を服薬した際の脳内濃度に類似し、治療効果が発現するまで数週間要することへの関与を示唆



●新たな薬理作用がグリア細胞にもあることが判明し、脳内の神経栄養因子を速やかに増加させる作用を併せもった新規の抗うつ薬の開発につながることが期待

うつ病はストレスの多い現代社会において患者数が増加しており、しかも罹患者の自殺率の高さが社会問題にもなっています。うつ病には抗うつ薬が有効です。しかし、抗うつ薬の治療効果が発現するには、抗うつ薬を2~3週間飲み続ける必要があります。ところが、なぜ抗うつ薬を数週間飲み続ける必要があるかの理由は明らかにされていませんでした。

また、神経細胞でのセロトニンなどのモノアミン再取り込み阻害作用も、抗うつ薬の臨床効果に重要であることが以前から言われていましたが、臨床効果が現れるまでには、その阻害作用発現に必要な濃度よりもはるかに高い抗うつ薬の濃度がうつ病患者の脳内に存在していることが知られていました。

本研究成果から、従来の抗うつ薬の新たな薬理作用がグリア細胞にもあることが判明し、脳内の神経栄養因子を速やかに増加させる作用を併せもった新規の抗うつ薬の開発や抗うつ薬の適量投与などにつながることが期待できます。



本研究成果は、平成27年7月16日に科学誌「Journal of Neurochemistry」のオンライン版に掲載されました。

【研究に関するお問い合わせ先】

広島大学大学院医歯薬保健学研究院薬効解析科学研究室 

教授 仲田 義啓 (なかた よしひろ)

TEL:082-257-5310

FAX:082-257-5314

E-mail:ynakata*hiroshima-u.ac.jp

独立行政法人 国立病院呉医療センター 中国がんセンター

精神科・臨床研究部

科長・副部長 竹林 実 (たけばやし みのる)

TEL:0823-22-3111

FAX:0823-21-0478

E-mail mtakebayashi*kure-nh.go.jp

※*は@に置き換えてください。


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