広島大学 生物生産学部 鈴木 卓弥
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本研究成果のポイント
- 黒ショウガに多く含まれるジメトキシフラボンに腸管バリアを高める作用を見出した
- ジメトキシフラボンは、腸管バリア分子のOccudinとClaudin-1を増加する
- ジメトキシフラボンは、腸管の透過性を高めるClaudin-2の発現を抑える
研究成果の内容
腸管の管腔内には、腸内細菌や未消化の食事タンパク質などの異物が大量に存在します。よって、腸管の上皮細胞は栄養素や機能性成分を消化・吸収することに加えて、管腔内と体内の環境を適切に仕切るバリアとしても重要です。この腸管上皮のバリアが損傷すれば、管腔内の異物が体内に侵入して、腸管や組織の炎症を引き起こし、炎症を基盤する疾患の発症や進展につながることが知られています。ゆえに、食品成分により腸管上皮のバリア機能を適正に維持することは、ヒトの健康を増進するための新たな手段になりえると考えています。
本研究は、ヒト腸管上皮細胞を用いて、複数の食品成分の中から、黒ショウガに多く含まれるジメトキシフラボンという微量成分(フラボノイドの類縁体)が腸管のバリア機能を高めることを見出しました。一連の解析により、ジメトキシフラボンは、腸管バリアを強くするOccludinとClaudin-1という分子を増加させることが明らかになりました。さらに、ジメトキシフラボンは腸管のイオン透過性を高めるClaudin-2というタンパク質の発現を抑えることもわかりました。このClaudin-2の抑制には、遺伝子発現を負に制御するマイクロRNA(miR-16-5p)の発現上昇が関わることも示されました。
今後は、ジメトキシフラボンを利用した高機能食品の創製が期待されます。本成果は(株)資生堂との共同研究によるものです。

論文情報
- 掲載誌: JOURNAL OF FUNCTIONAL FOODS
- 論文タイトル: 5,7-Dimethoxyflavone enhances barrier function by increasing occludin and reducing claudin-2 in human intestinal Caco-2 cells
- 著者名: Yunika Mayangsari, Mayu Okudaira, Chinatsu Mano, Yuki Tanaka, Osamu Ueda, Tomohiro, Sakuta, Yoshiharu Suzuki, Yoshinari Yamamoto, and Takuya Suzuki
- DOI: 10.1016/j.jff.2021.104641
掲載日:2021年10月6日