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[研究成果]サンゴの白化につながる共生藻の排出メカニズムを解明!



【概要】

広島大学大学院生物圏科学研究科の小池一彦 准教授、藤瀬里紗さん(同研究科博士課程前期修了、現オーストラリアUniversity of Technology,Sydney)、水産総合研究センター西海区水産研究所の山下 洋 研究員らを中心とする研究チームは、サンゴからの共生藻の放出現象を解明しました。

サンゴは褐虫藻とよばれる藻類と共生していますが、水温上昇などが原因で褐虫藻を失い、その結果「白化」します。白化が進むとサンゴは死亡し、サンゴ礁の生態系の崩壊につながります。小池准教授らのグループは水槽実験によりサンゴから排出される褐虫藻の数や生理状態を調べました。その結果、サンゴは褐虫藻を消化して排出する機構をもともと持っていること、水温が上昇しサンゴ内に弱った褐虫藻が増えると、その消化・排出機構が加速されることを突き止めました。これは、サンゴにとって有害であるダメージを受けた褐虫藻を排除するための、サンゴの防御機構だと思われます。

また、水温上昇の期間が長引くと、弱った褐虫藻の増加にサンゴの消化・排出が追いつかなくなり、今度は褐虫藻を消化せず排出し始めることも判明しました。これはサンゴの「緊急的な処置」です。ただしその結果、サンゴからは徐々に健常な褐虫藻が減ってゆくと思われます。また、サンゴからの排出能力を上まわるほどに弱った褐虫藻が増えてしまうと、サンゴ内にダメージを受けた褐虫藻が増え、この「褐虫藻の全体密度の低下」と「弱った褐虫藻の蓄積」が、サンゴの白化につながっていると推測しています。

白化したサンゴ
白化したサンゴ
褐虫藻
褐虫藻



【波及効果と今後の展開】

サンゴは、世界中のあらゆる生物の中で最も速く絶滅に向かっているとされます。サンゴ礁は海の熱帯雨林ともよばれ、生物多様性の宝庫です。このすばらしいサンゴ礁を残し保護していくには、その最大の減少要因である「サンゴの白化」のメカニズムを知る必要があります。

今回の成果においては、サンゴがある程度の水温上昇に自ら適応しようとする姿がみえますが、同時に、それが長期間に及ぶと白化につながる危険性も示唆されています。サンゴが変わりゆく地球環境に懸命に戦っている姿を知り、気候変動をもたらす人間が自らの責任を感じるときではないでしょうか。



【発表論文】

著者 Lisa Fujise、 Hiroshi Yamashita、 Go Suzuki、 Kengo Sasaki、 Lawrence M. Liao、 Kazuhiko Koike*

* Corresponding author(責任著者)

論文題目 Moderate thermal stress causes active and immediate expulsion of photosynthetically damaged zooxanthellae (Symbiodinium) from corals

掲載雑誌 PlosOne DOI: 10.1371/journal.pone.0114321



この研究成果は、12月10日付で米科学雑誌プロス・ワン誌(オンライン版)に掲載されました。



【お問い合わせ先】

広島大学大学院生物圏科学研究科 環境評価論講座 小池 一彦(コイケ カズヒコ)

Email:kazkoike*hiroshima-u.ac.jp(*を@に変えてください。)


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