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【論文公開】応用動植物科学プログラムの上田晃弘教授らの論文が公開されました

イネ実生へのビタミンB2(VB2)処理による耐塩性強化の分子機構の解明

本研究成果のポイント

  • イネ実生へのVB2処理(実生プライミング)はイネの耐塩性を強化する
  • VB2は塩ストレス下で発生する活性酸素消去能を持つ
  • VB2プライミングはVB2合成系やNa輸送に関わる遺伝子群の発現を強く誘導する

研究成果

乾燥地や沿岸部では塩類集積が進むことで塩害土壌が生成されます。塩害土壌では作物の生産性は低下するために、分子育種による耐塩性品種の創出が望まれています。本研究では、イネの根にVB2処理(実生プライミング)を行うことでイネの耐塩性を強化できるかを検証するとともに、その分子機構の解明を試みました。

塩害に弱いインディカ栽培品種IR29の実生に24時間のVB2処理を行い、塩害環境下(50 mM NaCl)で栽培を継続しました。その結果、VB2処理は塩害下でのイネの生育量を改善することや活性酸素発生による細胞膜の損傷を軽減することが分かりました。In vitroの実験によりVB2は活性酸素消去能を持つことや、外的に与えたVB2が内生VB2合成に関わる遺伝子群の発現を誘導してより多くのVB2の蓄積を促進することが明らかとなりました。RNA seqによる網羅的遺伝子発現解析の結果、VB2は耐塩性強化に寄与するNa輸送体遺伝子群のみならず、多くの新規な遺伝子群の発現誘導に関わっていることが分かりました。

筆者らはすでにVB2を用いた種子プライミング(Jiadkong et al. (2022), J. Plant Growth Regulation)がイネの耐塩性強化に有効であることを示しましたが、将来的には、発芽前の種子へのプライミングと発芽後の実生へのプライミングを組み合わせることで、分子育種に頼ることなくイネの生育初期段階の耐塩性強化技術を開発できる可能性が示されました。

本研究は科研費・国際共同研究強化(B)の支援により実施されました。

植物のVB2合成に関わる遺伝子群の発現

VB2処理や塩処理によって発現量が変動する遺伝子数

論文情報

  • 掲載誌: Plant Science
  • 論文タイトル: Exogenous riboflavin (vitamin B2) application enhances salinity tolerance through the activation of its biosynthesis in rice seedlings under salinity stress
  • 著者名: Kamonthip Jiadkong, Anisa Nazera Fauzia, Nobuo Yamaguchi, Akihiro Ueda
    DOI:  https://doi.org/10.1016/j.plantsci.2023.111929
【お問い合わせ】

広島大学 生物生産学部 上田 晃弘
E-mail:akiueda*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)


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