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【論文公開】応用動植物科学プログラムの上田晃弘教授らの論文が公開されました

カリウム輸送体OsHAK17はイネの塩アルカリストレス耐性向上に寄与する

本研究成果のポイント

  • イネは塩ストレスよりも塩アルカリストレス下で害となるNaを多く蓄積
  • 塩アルカリストレス下でのイネの網羅的遺伝子発現プロファイルを解明
  • Na駆動型KトランスポーターOsHAK17は塩アルカリストレス耐性向上に重要

研究成果

降雨量が少ない乾燥地ではしばしば塩類集積とともに土壌のアルカリ化が進行して塩アルカリ土壌が生成されます。アルカリ化は土壌中の養分の難溶化を進行させるために、植物に養分欠乏を引き起こしてその生育を阻害します。つまり、塩アルカリ土壌で生育する植物は塩ストレスとアルカリストレスの両方による生育阻害を受けますが、塩アルカリストレス耐性品種の開発は進んでいないのが現状です。

本研究では、塩アルカリストレス耐性イネ品種(Shwe Nang Gyi)と感受性イネ品種(コシヒカリ)を用いたイオノーム解析を行いました。その結果、塩アルカリストレスは塩ストレスよりもイネへのNa蓄積を促進することやイネ葉身部のKやP、Ca、Mn、Fe、Cu含量を低下させることが明らかとなりました。ただし耐性品種は塩アルカリストレス下でK獲得能が感受性品種よりも高いことが示されました。RNA seq解析や定量的発現解析の結果、耐性品種ではK輸送体をコードするOsHAK遺伝子群の発現増加が塩アルカリストレス下で著しいことが分かりました。

最も発現誘導が強かったOsHAK17遺伝子をクローニングし、Na感受性酵母変異株で発現させたところOsHAK17による塩アルカリストレス下での生育改善が確認されました。OsHAK17は高濃度のNa存在下でK輸送を担うNa駆動型K輸送体として、塩アルカリストレス下におけるイネの根においてK獲得に機能していることが示唆されました。

イネの塩アルカリストレス耐性を向上させる遺伝子候補はあまり見つかっていませんが、本研究によりOsHAK17遺伝子がその有力な候補になりえることが示されました。今後はOsHAK17機能を強化したイネ品種の開発を進めていきます。

本研究は科研費・国際共同研究強化(B)の支援により実施されました。

塩アルカリストレス耐性品種と感受性品種の生育の違い

OsHAK17の発現は塩アルカリストレス下での酵母変異株の生育を改善(赤枠)
OsHAK17を発現させない酵母変異株の生育は悪い(緑枠)

論文情報

  • 掲載誌: Journal of Plant Research
  • 論文タイトル: Potassium transporter OsHAK17 may contribute to saline‑alkaline tolerant mechanisms in rice (Oryza sativa)
  • 著者名: Mami Nampei, Hiromu Ogi, Tanee Sreewongchai, Sho Nishida, Akihiro Ueda
  • DOI:  https://doi.org/10.1007/s10265-024-01529-0
【お問い合わせ】

広島大学 生物生産学部 上田 晃弘
E-mail:akiueda*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)


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