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【論文公開】食品科学プログラムの矢中規之教授らの論文が公開されました

脳機能改善の食品サプリメントの副作用を軽減する方法

本研究成果のポイント

  • GPCは腸管内でコリンへと分解され、TMAが産生するが、腸管の細胞で発現するGpcpd1遺伝子は、GPCからコリンへの代謝に関与することを明らかにしました。
  • 腸管でGpcpd1遺伝子を欠損させたマウスをゲノム編集法で作製し、血液中のTMAO濃度が低下することを示しました。

研究成果の概要

コリンは生体内でのホスファチジルコリンや神経伝達物質であるアセチルコリンの合成などの大切な生理機能を担うことから、米国やヨーロッパなどでは必須の栄養素として認められています。しかし、欧米など先進緒国の栄養調査ではコリン摂取量は基準に達しておらず、コリンの摂取量不足と認知症リスクとの関連性が示されています。α-グリセロホスホコリン(以下、GPC)は母乳や牛乳に豊富に含まれる天然成分として注目されており、認知症予防効果が期待されるサプリメントとして現在服用されています。一方で、コリン補充を目的としたGPCの摂取量の増加は、脳内でのアセチルコリンの産生への貢献が期待されるものの、消化管内での腸内細菌によりトリメチルアミン(TMA)が産生され、肝臓内でトリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)へと変換されることで心筋梗塞などの副作用が指摘されており(図1)、食品サプリメントとしてのジレンマが示されていました。

本研究では、GPCの腸管内での代謝や吸収機構を解明する中で、腸管の細胞で発現するGpcpd1がコリンへの変換に関与し、さらにゲノム編集法によって作製した腸管特異的Gpcpd1欠損マウスを用いて、腸管内でのGPCの代謝を抑制した場合に、血中のTMAO濃度の低下し、GPC摂取時の副作用の予防につながることを見出しました(図2)。

この研究成果により、Gpcpd1を抑制する食品成分との同時摂取(フードペアリング)によってGPCの副作用の軽減につながる可能性が示されました。

図1
GPCの摂取量の増加は脳内のアセチルコリンの産生が期待されるものの、トリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)へと変換されることで心筋梗塞などの副作用が指摘されている
(Created with BioRender.com)
 

図2
GPCは腸管内の酵素Gpcpd1によりコリンへ代謝され、腸内細菌によりTMAへと変換される 
(Created with BioRender.com)

論文情報

  • 掲載誌: The Journal of Biological Chemistry
  • 論文タイトル:  Role of Gpcpd1 in intestinal alpha-glycerophosphocholine metabolism and trimethylamine N-oxide production
  • 著者名:Siyi Chen, Shiho Inui, Rahmawati Aisyah, Ryoko Nakashima, Tatsuya Kawaguchi, Minori Hinomoto, Yoshiko Nakagawa, Tetsushi Sakuma, Yusuke Sotomaru, Noriyasu Ohshima, Thanutchaporn Kumrungsee, Takeshi Ohkubo, Takashi Yamamoto, Yutaka Miura, Takuya Suzuki, Noriyuki Yanaka
  • DOI: 10.1016/j.jbc.2024.107965.
【お問い合わせ】

広島大学 生物生産学部 
矢中 規之 E-mail:yanaka*hiroshima-u.ac.jp
(注: *は半角@に置き換えてください)


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