広島大学 生物生産学部
川井 清司 E-mail:kawai*hiroshima-u.ac.jp
(注: *は半角@に置き換えてください)
米粉蒸しケーキが膨らみにくい理由を解明し、改善方法を見出した
本研究成果のポイント
- 蒸しケーキの理想の膨化状態を計算で求め、現実との差を明らかにした
- レオロジー(変形と流動の科学)により米粉および小麦粉ケーキ生地の特徴を解明した
- ケーキ生地に軽くて丈夫な蓋を乗せて蒸すことで、米粉蒸しケーキの膨化は改善された
研究成果の概要
近年、小麦アレルギー疾患の増加等の理由により、グルテンフリー食品のニーズが高まっています。小麦粉代替物として米粉の利用が広く検討されていますが、品質の低下が課題となっています。例えば、小麦粉の代わりに米粉を用いた蒸しケーキでは、膨化不良が起こります。これは、米粉にはグルテンが含まれていないためと考えられていますが、なぜグルテンが無いと膨化不良が起きるのか、また膨化不良を改善するにはどうすればよいのかについて、これまで十分に検討されてきませんでした。
蒸し過程におけるケーキ生地の理想の膨化状態を、気体の状態方程式をベースにした式によって算出しました。その結果、小麦粉生地は理想の膨化状態に近かったのに対し、米粉生地は理想の膨化状態に達する前に膨化停止することが分かりました。米粉および小麦粉ケーキ生地のレオロジー特性を比較した結果、澱粉の糊化温度以下において小麦粉生地は米粉生地よりも降伏歪みが高いことが明らかになりました。いずれの生地も糊化温度以上では固化しましたが、米粉生地の方が若干柔らかい傾向にありました。蒸し過程において、生地中の澱粉の糊化度が一定レベルまで増加した段階で、蒸しケーキは膨張から収縮に転じました。小麦粉生地は米粉生地よりも高い糊化度で膨化停止しました。蒸し後の放冷過程でケーキは更に収縮しました。小麦粉生地の収縮度合いは米粉生地よりも低いことが分かりました。
以上の結果を整理し、改質剤の添加や成分組成を変化させることなく、蒸し条件を変更することによって膨化を改善する方法を検討しました。その結果、米粉ケーキ生地に軽くて丈夫な蓋を乗せた状態で蒸す方法を考案しました。この方法を採用することで、米粉蒸しケーキ生地の膨化が大幅に改善することが確認されました。本研究成果は、他の膨化食品に対しても適用可能であり、幅広い展開が期待されます。
論文情報
- 掲載誌: Journal of Cereal Science
- 論文タイトル: Effects of starch gelatinization, rheological properties, and a top cover on the height of steamed cakes made with rice flour and wheat flour
- 著者名: Rinka Omura, Kiyoshi Kawai
- DOI: https://doi.org/10.1016/j.jcs.2025.104194