第16回 石井勲助教

低温と超音波と車

石井 勲 助教

 現時点での私のキーワードを並べると,このような意味のわからないタイトルになりました。この3つについて,できるだけ平易に書きたいと思います。

 最初の2つ,低温と超音波は日々の研究活動に関することです。「低温」は研究室名にも入っていますが,低温物理学研究室では低温(絶対零度:マイナス273.15℃,0ケルビンの近くまで)に物質を冷やして,その性質を調べる研究を行っています。わざわざ絶対零度の近くまで温度を下げる必要があるの?室温で良いのでは?と思われるかもしれません。しかしながら,温度は熱エネルギーとも考えることができ,室温は絶対零度から約300ケルビンのエネルギー状態下にあると考えることができます。物質の性質には,物質中の電子の状態が重要な役割を果たしています。温度を下げることによって熱エネルギーによる攪乱,ぼやけが無くなり,その物質が本来もちうる電子状態が見えてきます。故に低温に温度を下げて物質の性質を調べ,これまでに誰も見つけていない電子状態(新機能)を探して研究を行っています。

 「超音波」は,私が主としている物質の電子状態を調べる実験方法です。簡単には,物質に超音波を当てて,その硬さを調べています。こう書くと古典的なことをやっているように感じるかもしれませんが,物質の硬さには電子状態が大きく影響していて,実際は電子状態の応答を調べています。一般的に物質は温度を下げると硬くなりますが,物質によっては軟らかくなるものがあり,量子力学などを駆使して,その軟らかくなる特異な電子状態を明らかにしていきます。電磁気学で多重極展開を習うと思いますが,超音波は特にその中の電気四極子と呼ばれる電荷分布の良いプローブになっています。物質数は少ないですが,電気四極子が平行に揃って秩序化すると,秩序化する温度で硬さが無くなる!ふるまいが見られます。また,超音波実験では量子振動を観測出来たりもします。余談ですが,我々と同じ実験方法を用いた研究を行っている機関は国内外でも限られており,あまり人と同じことをしたくない私には合っていたりします。

 最後の「車」は,完全に趣味(特に運転すること)です。昔はそこまで車に興味は無かったのですが,10年ほど前から何故かスポーツカーに目覚めました。一応先に断っておくと,職を失うと路頭に迷うので,危険な運転,暴走行為はしていません。現在の車は,普段乗りとしては性能的にも十二分で,なによりも見た目が好みです。購入する前は前方からの見た目が好きでしたが,購入して近くで見ていると後方からの見た目(車体の曲線)も好きになりました。運転席のすぐ後ろにある水平対向6気筒エンジンの音,振動に包まれつつ,車の足回りから伝わってくるロードノイズを感じながら運転するのがとても良いです。ステアリングフィールもとても良く,頭の中のイメージどおりに動かせるので,運転しているとストレスの解消にもなります。などと書いてきましたが,そろそろ文章が気持ち悪い感じになっている気もするので,このへんで終わりにします。

石井先生と車

(2017年12月21日掲載)


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