学部長挨拶

多様性が拓く次世代の歯科医学・口腔健康科学

 歯学部長 加藤 功一

 私たちの健康を守る医療は、幅広い学問分野によって支えられています。その中で歯科医学・口腔健康科学は、先人たちの長年にわたる努力によって独自の発展を遂げ、今日の高度な歯科医療の実現に大きく貢献してきました。その結果、さまざまな口腔疾患の治療が可能になるとともに、乳歯のう蝕や成人の喪失歯数を減少させることに成功しました。このように、国民の口腔の健康は、歯科医学・口腔健康科学の発展と実践を通して着実に増進しています。

 一方、わが国は超高齢化社会に突入し、疾病構造の変化や基礎疾患をもつ患者の増加への対応が求められるようになりました。これらに加えて、近年、口腔の健康状態とさまざまな全身疾患との密接な関係が盛んに議論されています。また、国民医療費の高騰や歯科医師の過剰が国家的問題となっています。その一方で、歯学教育には世界水準を見据えた質保証が求められ、また、歯科医療界のグローバル化という課題が目前に迫るなど、歯科医学・口腔健康科学を取り巻く環境は地球規模で変化しています。私たちは、これらの変化に上手く対応できる人材、そして将来の歯科医療界を牽引できる人材を育成して行かなければなりません。

 上記のような変遷の時代にあって、現在そして未来の社会から強く求められる歯科医療人を育て、新たな歯科医療・歯科保健の在り方を提案し、実践して行くことが広島大学歯学部の使命だと認識しています。私たちは、この理念の実現のため、口腔の病態や健康状態を現代生物学の知識をベースに理解・制御したり、多岐にわたる医療従事者が有機的に連携して歯科治療や口腔ケアを行ったりする能力を育成しています。それと同時に、学生や教職員の国際競争力を高めることを目的として、教育・研究・診療現場のグローバル化にも多大な力を注いでいます。これらの努力は、従来の学問体系や歯科医療人の働き方に多様性を与えることによって、歯科医療の様々な側面に新たな価値を創発し、また、変化に対する高い適応能力をもった歯科医療人を輩出できるという私たちの信念に根差しています。

 日進月歩する多様な科学技術を柔軟に取り入れることも、私たちの知識・技術・組織・人材の強化につながるでしょう。そこで広島大学歯学部では、従来の歯科医学・口腔健康科学を基盤として、幹細胞、ゲノム編集、エピゲノム、ナノテクノロジー、デジタル技術など、広範な科学技術との融合を進めています。創立から50周年を迎えた広島大学歯学部は、このような多様性の獲得をいっそう進めることで、さらなる発展を目指しています。

プロフィール

 昭和40年大阪に生まれ、三重県立津高等学校を経て京都大学農学部を卒業。京都大学博士(工学)を取得の後、神戸大学工学部助手、京都大学再生医科学研究所准教授を経て、平成23年広島大学教授となった。平成11~12年には、ドイツ・フライブルグ大学高分子化学研究所にてタンパク質集合体のミクロメカニックスに関する研究に従事した。平成24年から広島大学ナノデバイス・バイオ融合科学研究所の併任教授となり、平成28年から歯学部長を務める。上記の経歴が示すように、そのバックグランドは多岐にわたり、「多様性の体現」と言っても過言ではないであろう。そのような多様なバックグランドを武器にして、歯学・医学・工学・農学を融合したユニークな研究を展開している。とりわけ再生医療の実現に熱意を傾け、幹細胞の大量供給、品質管理、機能分析、分化制御を目的とするバイオデバイス・バイオマテリアルの創成に長年携わってきた。平成26年には、大会長として第64回日本歯科理工学会学術講演会を広島で開催した。

略歴

  • 昭和58年 3月 三重県立津高等学校 卒業
  • 昭和63年 3月 京都大学農学部林産工学科 卒業
  • 平成 6年 3月 京都大学大学院工学研究科博士課程 退学
  • 平成 8年 3月 博士(工学)(京都大学)
  • 平成 8年 4月 日本学術振興会 特別研究員
  • 平成 8年 5月 神戸大学工学部 助手
  • 平成11年 2月 フライブルグ大学高分子化学研究所 フンボルト財団研究員
  • 平成13年 4月 京都大学再生医科学研究所 助教授
  • 平成23年 4月 広島大学大学院医歯薬学総合研究科 教授
  • 平成24年 3月 広島大学ナノデバイス・バイオ融合科学研究所 教授(併任)
  • 平成24年 4月 広島大学大学院医歯薬保健学研究院 教授
  • 平成25年 4月 広島大学大学院医歯薬保健学研究院 副研究院長(併任 同28年3月31日まで) 
  • 平成25年 4月 広島大学大学院医歯薬保健学研究科 副研究科長(併任 同28年3月31日まで)
  • 平成28年 4月 広島大学 歯学部長(併任 同32年3月31日まで)                                                                                       


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