学部長挨拶

経済学部長  鈴木 喜久

世界の共通言語である経済を学び,より良い社会を築く

経済の語源である経世済民「世を経(おさ)め,民を済(すく)う」が意味する通り,経済学は社会を良くして人々を幸福にするための学問分野です。社会科学の一分野として,広範な課題を対象とし,分析手法を駆使して社会に対する理解を深めます。経済学の分析は,人々は目的を持っていてできる限り上手くその目的を達成しようとする,と仮定することから始めます。次に,そうした多数の人々が互いに影響をおよぼし合いながら行動する結果として生じる,市場や企業,また,政府やさまざまな仕組みの振る舞いについて分析します。そして,人々の生活をより良くするための政策や制度について検討します。
ICTやAIなどの急速な技術進歩とDXが社会の仕組みを大きく変えつつあるなか,社会的課題の解決に取り組む新たなビジネスが次々と創出されています。しかし,日本は技術分野では世界最高レベルでも,技術を事業化し経済価値に結びつける能力は先進国の平均以下だと言われます。また,労働生産性が低くイノベーションも生まれにくいとも言われます。その原因として指摘されるのが,異分野間や国際的な協同作業の実行力が極めて弱いことです。ダイバーシティがもたらす多様な視点や価値観の相互理解は画期的なアイデアにつながり,イノベーションの可能性を高めます。
広島大学経済学部では,柔軟な思考能力を持ち変化に適応して新しい社会を築いて行ける人財の育成を目的としています。経済学というモノの見方,考え方を活用して新たな価値を生み出して行く能力を養成します。そのために,国際的視野と外国語によるコミュニケーション能力の習得を奨励しており,単位互換制度の積極的な活用などにより,留学しても4年間で卒業できるように支援しています。また,他学部とも共同してデータ分析に関する学習機会を提供し,テクノロジーを利用した問題解決能力の習得を支援しています。さらに高度な経済学を学ぶ意欲のある学生のために,学部4年次に大学院授業の履修を開始し,学部卒業後に大学院に進学すれば1年間で修士課程を修了できる学部・修士5年一貫教育プログラムを提供しています。
地域社会や環境などが直面する身近な課題から国際社会が直面するグローバルな課題まで,好奇心と探究心を活かして理論とデータに基づく分析を行い,より良い未来への可能性を考えていきましょう。


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