自分自身の設計事務所で、住宅や、医療施設、公共の集合住宅や学校などの建築を設計しています。大量生産されるものが多い中で、建築はいまだにフルオーダーメードの一品生産です。他の分野の設計やデザインに比べて、設計する個人の考え方が反映されやすく、やりがいを感じますが、同時に責任も大きな仕事です。

　大学院まで進学して建築を学び、今は建築設計事務所をしているので、大学で学んだ事は今の仕事に生かされています。しかし、専門分野の知識よりも、まず建築という、自分の一生を捧げても良いと思える仕事に出会えたことが大学生活で得られた何よりも一番大きなことです。もう一つは友人です。卒業後に時間が経ち、お互いが成長し責任ある立場になるにしたがって、仕事でもプライベートでもますますかけがえのないものになっています。

　この仕事をしたら自分は幸せになれるだろうという仕事をするのが幸せか、この仕事ができるのであればどれだけ苦労してもいい、と思える仕事に出会えるのが幸せか、今でもよく悩み、考える事です。少しだけ後者に重きを置いていろいろな決断をしているような気がします。自分で買った苦労を伴う仕事が、その後のとても大切な人との出会いや、技術や実績の向上、新しい可能性や展望をもたらしてくれました。工学を武器に人生を生きるのであれば、適切なリスクを正しく背負いながら、自分を謙虚に研鑽し続けていくことが、最も安定した道となると思っています。