ダイキョーニシカワ株式会社 R&D本部 R&D統括部 MBR推進Gr. 下松 恒太 さん

「あらゆる経験は今後の糧となる」

 

ダイキョーニシカワ株式会社
R&D本部 R&D統括部 MBR推進Gr.

下松 恒太 さん

広島大学大学院工学研究科博士課程前期応用化学専攻
2021年度修了 
広島市立舟入高等学校 出身

現在の仕事内容について

 現在の主業務は樹脂材料の開発であり、モデルベースリサーチ(MBR)という手法に取り組んでいます。MBRとは、材料の機能と工法のメカニズム解明を行い、それに基づいたシミュレーションなどのモデルを活用して、質の良い最小限のデータから材料開発を効率的に進める取り組みを指します。従来の材料開発では、試作改良を繰り返しながら材料開発から量産までつなげていく、モノを使った開発を行っていますが、その過程で多くの手戻りや無駄が発生し、開発に時間がかかる事が課題として挙げられます。この課題を解決するために、メカニズムに基づいたモデルをベースに開発を進めようとしています。私はモデル構築の足掛かりとしてメカニズム解明の研究に産学連携で取り組んでおり、そのために日々複合材の特性測定や測定中の挙動観察に取り組んでいます。測定データと測定中の挙動を結びつけるための考察は、在学中の研究活動を通じて得られた経験、知識が活かされていると思います。
 また、樹脂の分析業務にも携わっており、不良品の要因解析や開発品の性能などを社内に設置している測定機器を用いて分析しています。測定機器を用いた各種分析は学生時代から力を入れて取り組んでいたため、測定装置の原理や得られた結果から考察につなげるまでの考え方も在学中の研究活動がベースになっています。

社内の分析機器を用いて樹脂の分析を行っています。
写真ではSTA(熱重量・熱量同時測定装置)で樹脂の初期重量に対する減少率と反応温度を測定しています。耐熱性能の評価や寿命推定によく用いられています。

社外の分析機器を用いて複合材の分析を行っています。写真ではデジタルマイクロスコープと呼ばれる顕微鏡を用いて複合材の表面観察を行っています。測定ポイントを探したり、作製したサンプルに不備が無いかの確認によく用いられています。

学生時代について

 研究室に配属されてからの3年間がより鮮明に記憶に残っています。研究内容は無機触媒の新規合成でしたが、初めて見聞きする化合物でしたので、実験手順の習得と並行して多くの文献を読んで得られた知見をインプットしていきました。卒業後は扱う対象が無機触媒から樹脂に変わりましたが、この経験によって新しく取り扱う対象と向き合う際に役に立っていると思います。また、インプットした知見を基に新規化合物の合成に成功した体験も業務を前向きに取り組む後押しとなっています。
 学業以外に関しては、長期休暇に入るとよく旅行に行っていました。観光先から滞在時間まで綿密にスケジュールを組む人もいれば、泊まる場所だけ決めて行先は当日決める人もいて、一緒に行く人によって趣が大きく変わりましたが、多種多様な方と交流できたのはいい思い出です。

広島大学・工学部在校生へのエール・メッセージ

 学生時代の6年間はあっという間に過ぎ去ってしまいましたが、その中で多くの出会いや経験をさせていただきました。どんな経験が今後に生きてくるかわからないので、失敗を恐れず積極的に行動してみてください!


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