西川ゴム工業株式会社 技術企画部 部長 重村 泰広さん

母校キャンパスのカフェにて今思うこと

重村 泰広さん

 

西川ゴム工業株式会社 技術本部 技術企画部 部長

重村 泰広 さん

広島大学工学部 機械設計工学講座

1985年度卒業

広島県立広島国泰寺高校卒業

 
 母校のHPに寄稿する機会を頂き、折角なので、その原稿を母校で書こうと思い立って西条にやって来ました。というわけで、私は今、母校の校内の中心部にあるカフェでこの文章を書いています。

 卒業してもう30年以上。あまり優秀な学生でなかった私ですが、研究室の恩師(第一類 濱村司郎先生)に言われた2つのことが今も忘れられません。その一つは「年寄りを大事にせえ」、そしてもう一つは「日本語を大切にせえ」です。何気ない一般的姿勢についての言葉ですが、今こうして自分が結構な歳になって会社で仕事を進める中で、私はこの2つの言葉の大切さを大いに感じています。

 さて、その仕事ですが、私は西川ゴム工業株式会社という自動車用シール材を主力製品とする会社に勤めています。そのシール材の中で最も多いのが「ウェザーストリップ」というもので、これは、自動車のドアを開けた時にドアの周囲やそのボディ側についている黒いゴム材です。いつの時代にも憧れの商品として華々しい存在である自動車を構成する部品としては、このウェザーストリップ、実に地味な部品で(色も大体黒ですし)、ほとんどの人は普段気にも留めない部品だと思います。その役割としては、主には車室内に雨水やほこりが入ってこないように密封(シール)するということですが、その役割を果たす上で自動車メーカーから求められる性能が実は結構あります。正常に機能している時は全く注目されないですが、一度機能が損なわれると搭乗者の快適性が大きく損なわれると共に、その自動車が持つ情緒的価値(ブランド感)をも下げてしまいかねないという「縁の下の力持ち的な部品」です。
 その西川ゴム工業で、私は「技術企画」という仕事をしています。この技術企画という言葉がまた判りにくいのですが、特許や商標などの産業財産権や、技術スタッフが作成する技術報告書の管理や技術教育、はたまた技術開発活動全体に関する活動など多岐にわたり、総じて一言で表わすならば「知的財産に関する業務」と言うところです。

西川ゴム工業(株) 本社社屋
重村 泰広さん

 この仕事の中で、数年前から「技術系インターンシップ」の受け入れのお手伝いをさせてもらっています。当社は、広島でこの制度が近年注目され始めた当初から参画させてもらっています。この関わりを通じて思うことは、皆さんとても真剣に取り組んでおられるという事で、その一生懸命さにいつも感心しています。その学生さんによく言うのですが、自分も同じ頃、「自分がこの先どういう職種につくのか」、「今学んでいることが将来の自分にどう役立つのか」など漠然とした疑問・不安感が常にありました。でも今は、その疑問に対して一つの答えらしき思いを持っています。それは、「学生さんや社会人に成りたての人達は、皆それぞれの専門分野で、等しく、問題解決力を鍛えるトレーニング中なのだ」と。つまり、今後自分がどんな方向・世界に向かって進んで行こうとも、今現在の立ち位置で課題に全力で取り組んでいくことが即ち自分自身のスキル向上となり、それは色々な領域において共通的なことが多く、結果としてそれが自分の将来の姿にもつながるという事です。ですから学生の皆さんは、まずは今学んでいる専門分野についてしっかり学ぶとともに、クラブ活動等の団体活動における先輩・後輩とのコミュニケーションや、インターンシップなどでの学校外・社会人と接する経験など、色々なことを積極的に自分の糧にして欲しいと思います。

 さて、最後になりますが、今、こうやってキャンパス、そしてそこを行き交う学生さん達を眺めていると、自分の時代と決定的に違うことが一つあることに気づきます。それは「図書館」です。(このカフェも加えて二つと言うべきかも?)以前と比べてとても綺麗で開放的になりましたね!ここなら学問的困難にも、青春時代のほろ苦き苦難にも効く有効な解決策があるような気がします。

 西条キャンパス。広島からの移転当時はその移転の目的・意義もよく判らずにいましたが、大きく発展した西条の街で、伝統や独自文化を大切にしながらその時代の斬新さにも敏感である、そんな広島大学に共感すると共に、いつも心の中で応援しています。

マーメイドカフェ(広島大学構内)


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