派遣国:フィリピン共和国
派遣期間:2008.1.17〜2008.2.18
国際協力研究科教育開発専攻博士課程前期1年(2008年3月現在)
1)派遣国について
フィリピン。実は日本との距離はわずか480 kmで、意外にもこれは東京−大阪間よりやや短い距離に当たります。島の数は7000以上でインドネシアに次いで世界第2位、英語を話す人口は世界第3位。100以上の民族グループ、80前後の言語を持つ多民族国家です。公用語はフィリピノ語。国民の8割以上がカトリック教徒。通貨単位はペソ。温暖な国として知られるフィリピンですが、国が縦に長いため、その場所の、緯度、高度、時期、により様々な気候が存在します。
歴史的には、マゼランが到着したフィリピンは、スペインの統治、アメリカの統治、日本の軍政を経験している国です。ちなみに首都マニラの正式名所はメトロ・マニラです。
2)現地での生活や文化について
上記のように多様な文化が存在するため、ひとくくりにするのが難しいです。今回でフィリピンは2回目になりますが、前回はスラム地域、今回は大学内での滞在だったため、生活の質の差はだいぶ感じましたね。そういった多様でさらに格差のある生活が混在していること自体が、フィリピンとしての特徴なのかもしれません。
大学内も然り。大学と地域の密着度が高い。非常にオープンです。老いも若きも。物乞いもお偉いさんも。学内で商売している人もいれば、敷地内にスラムのような場所もある。フィリピンの縮図と言えるかもしれません。
滞在に関しては、非常に楽でした。滞在したホステルは冷房、温水シャワー完備で、セキュリティーもしっかりしているので快適です。食事はほとんど大学内か人の家で、現地の人と同じものをとりました。大学近くのモールに行けば各国の料理があります。必要なものはほとんど学内で手に入ります。心配な方は薬類(蚊取り線香など含め)ぐらい日本から持っていくと良いかもしれません。現地の学生は男女ともにほぼTシャツにジーンズです。
3)派遣先について
UP NISMED (University of the Philippines National Institute for Science and Mathematics Education Development) は、1964年フィリピン大学内に設立された、初等中等理数科教育におけるカリキュラム・教材開発、現職教員研修、研究・開発を仕事の軸とする機関です。日本との関係も深く、JICAが1988年に無償資金協力でSTTC (Science Teacher Training Center)を建て、その後1994年に技プロとしてSMEMDP (Science and Mathematics Education Manpower Development Program)を開始し、その際に広島大学の先生方も専門家としてプロジェクトに関わっておられました。
現在UP NISMEDは国内の現職教員研修に留まらず、外国からの要請も多くあり、南南協力の拠点となることが期待されています。
4)研修内容について
参加したプログラムは上記の南南協力の一つで、JICAの第三国研修にあたります。正式なプログラム名はSecondary Mathematics and Science Education for Kenyan INSET Trainersでして、40名のケニアの教員(数学、物理、化学、生物、各10名)がNISMEDの研修を受けに来られていました。インターンとしては、その時々で研修参加者、オブザーバー、スタッフという形をとってプログラムに参加しました。私は中等化学のグループに配属され、ケニア人の教員とともに授業に参加したり、実験の助手を務めたり、また授業自体をさせていただく機会もありました。
5)このインターンで一番得たもの
何かを得たというよりも、国際教育協力に対する自分なりのイメージが展開したことが収穫です。それに付随し、以下二つのことが収穫です。
一つは関係の構築です。UP NISMEDスタッフ、ケニアの教員、現地で出会った人。どこでもそうですが、人とのつながりは財産だと思います。今でも連絡をとっていますが、この関係はずっと続けていきたいものです。
二つ目は、現地で新しく知ったこと全てです。実質的には、知ったと思っていることは、ただそれを垣間見ただけにすぎないかもしれませんが、やはり新鮮で刺激的でした。
6)未来の派遣学生にむけて、事前準備や注意点などがあれば教えてください。
このフィリピンのインターンシップは他のインターンシップと若干色が違う気がします。以下はこのインターシップに限って書きます。
事前準備に関しては、自分の活動に必要な情報を集めて、なるべく英語で電子ファイル化しておくことを進めます。特に配属先の仕事が、日本ではどのように行われているかをまとめておくと良いと思います。
語学に関しては英語のみで十分ですが、現地の人と仲良くなる上で、挨拶だけでもフィリピン語を覚えておくと重宝します。スタッフの方が親切なので、英語力に関してはそれほど心配しなくてよいと思いますが、よりレベルの高いことをしたければ、それ相応の英語力は必要だと思います。
どこでも言われますが、何より重要なのはコミュニケーション力。語学はあまり関係ないところの部分で、です。どんな関係構築がされるかが、インターンシップ内でできることできないこと、自分の満足度を左右すると思います。毎日新しい人と出会いますが、自己紹介のときの押し所(特に特技)を作っておくと覚えてもらえ、話のきっかけになります。イベントやパーティーは体力的に問題なければ、できるだけ顔出すのが良いと思います。今回私はサックスを持っていきましたが、インターン中かなり助けられました。“芸は身を助く”です。
7)その他、「これはいいたい!」と思われることがあればご自由にどうぞ・・・
今回貴重な経験ができたのも、UP NISMEDのスタッフ並びにi-ECBOスタッフのおかげだと思います。まずこのようなインターンシップの機会があること自体恵まれていると感じます。分野問わず、現地に入れる機会は貴重で、なかなかできることではないと思います。感謝いたします。ありがとうございました。
8)後輩の方々へ一言メッセージを・・・
広島大学の学生として海外のインターンシップをすることは、他のスタディーツアーなどと比べ様々なメリットがあります。研修内容そのものやそれに付随して学ぶこと、そのサポート体制、国内外の関係者とのつながりなど。行けない、行く必要がないという人以外は応募する価値があると思います。
参加される方は自分の中で、このインターシップがどういう位置づけになるかをよく考えるのが大事だと思います。初海外の人もいるだろうし、研究目的の人も、正直その国にただ行ってみたいという人、目的は人それぞれだと思います。目的には本音、建前、あると思いますが、両方明確に持っていけばより有意義なインターンになると思います。