谷口万里子(D2)

国際協力研究科開発政策専攻-博士課程後期2年(2008年3月現在)

派遣国:バングラデシュ人民共和国
派遣先:NRECA International, Ltd.(NRECA農村電化事業)
派遣期間:2008.3.9〜2008.3.27

1)派遣国について

バングラデシュは南アジアの国です。国境のほとんどがインドと接していて、インドに囲まれるような形になっています。一部(南東部)はミャンマーと接し、南部はベンガル湾に面しています。イギリスの統治を経て1947年にパキスタン(東パキスタン)として独立し現在のパキスタン(当時は西パキスタン)と共に一つの国を為していましたが、独立戦争を経て1971年にバングラデシュとして独立を果たしました。イスラム教徒が人口の8割以上を占めています。面積は日本の約3分の1しかありませんが、人口は日本よりも多く、人口密度の高い国として知られています。また、世界最貧国の一つであるバングラデシュは、多くのドナーや国内外のNGOが活動しており「援助の実験場」と呼ばれることもあります。サイクロン・洪水など自然環境は厳しく、最近では地下水のヒ素汚染が新たな問題となっています。バングラデシュと日本の関係は極めて良好で、親日的な国民性を有しています。ちなみに、バングラデシュの国旗は日本の日の丸と似ていて、緑地に赤の円が描かれています。バングラデシュでは、貧困層を対象に低金利・無担保で融資を行うマイクロクレジットがグラミン銀行により行われており、生活水準の改善や女性の社会的地位向上に有効であるとして近年世界的な注目を集めています。2006年にはグラミン銀行とその創設者であるムハマド・ユヌス氏がノーベル平和賞を受賞したことでも知られています。

2)現地での生活や文化について

服装

イスラム教の国なので女性は特に素肌の露出やタイトな服装はなるべく避けた方が良いと思います。『郷に入っては郷に従え』で民族衣装であるサロワ・カミューズ(ワンピース・ゆったりめのパンツ・ストールの3点セット)を着るのもお勧めです。着心地が良く便利です。なかなかファッション性もあります。サロワ・カミューズは仕事などオフィシャルな場面でも通用するので、インターン中はいつもサロワ・カミューズを着ていました。男性はルンギやパンジャビなどといった民族衣装を着ている人もいますが、大抵の場合、仕事中はシャツにパンツ、普段はTシャツまたはポロシャツにジーンズなど日本とほとんど変わらないスタイルだと思います。 

食べ物

バングラデシュの食事はおいしいのですが、スパイシーで脂っこいので気を付けていてもおなかの調子を悪くする可能性があります。当たり前のことですが、生水は厳禁です。ペットボトルの水か沸騰した水を飲むことを強くお勧めします。バングラデシュでは、チャ(チャイ)を飲む習慣があり、食後や休憩時など一日に何杯も飲んでいます。私はコンデンスミルクを入れたチャがお気に入りです。ただ、どのチャもとても甘いので飲みすぎると太るかもしれません。 

言葉

公用語はベンガル語で、第二言語として英語が多く使われています。首都ダッカでは英語が話せる人は多いですが、挨拶や数字など簡単なベンガル語を知っていると何かと役に立つと思います。ただ、ベンガル語が話せなくても困っていたら英語の話せる人が助けてくれたり、身振り手振りで伝わったりします。そういう人と人とのコミュニケーションが外国へ行った時の醍醐味の一つかもしれません。 

交通(ダッカ市内)

首都ダッカでは交通渋滞が日常茶飯事となっています。信号はほとんどなく、交通ルールもあってないような状態であるため、歩行者にとっては道を渡るのも命がけです。近距離の移動はリキシャ(人力車の自転車版)が便利だと思います。また、オートリキシャ(CNG、天然ガス使用の三輪タクシー)やタクシーも主要な移動手段です。バスは地元の人が多く利用しており運賃も手頃なのですが、現地事情に精通していない外国人にとってはなかなか敷居が高いかもしれません。 
町並み

治安

基本的に治安は悪くはないのですが、何が起きるかわからないので夜間一人での外出は控えた方がよいと思います。歩いているとリキシャワラ(リキシャ引き)が客引きのために声をかけてきますが、乗らない時ははっきりと断ってください。態度を曖昧にしているといつまでもついてくることがあります。 

その他

バングラデシュはホスピタリティ(もてなし)の国です。短時間の滞在でも、訪問先では必ずフルーツ、菓子、チャなどが出され、温かい歓迎を受けました。バングラデシュ人はフレンドリーで親切です。また、家族との絆をとても大切にしています。こうしたバングラデシュ人の優しさや心の豊かさは、私が最も感銘を受け見習いたいと思ったことです。

3)派遣先について

NRECA International, Ltd. 
(NRECA=National Rural Electric Cooperative Association:全米農村電化組合協会) 
派遣先のNRECAは開発途上国における農村電化事業のコンサルティング業務を行っているアメリカの団体です。アメリカでは1930年代に農村地域への電化が行われ、そこで得られた教訓やノウハウを他地域へ活かすためNRECAが設立されました。NRECA Internationalは技術支援や人材育成などを通じて農村電化事業の円滑・効率的・公正な運営をサポートしています。これまで世界40ヶ国以上で農村電化事業の運営に携わってきました。NRECAバングラデシュ事務所にはアメリカ人のチームリーダーと、20名ほどの現地スタッフが働いており、スタッフのほとんどは技術者で構成されています。

4)研修内容について

電力供給状況や電化のインパクトについて農村で実態調査を行いました。バングラデシュでは電力不足などにより毎日停電が起きています。この調査では、電力利用状況や電力供給状況の変化、停電対策などについて人々にアンケートに回答してもらい現状把握を行いました。また、将来の電力料金の設定のため、電力料金に対する意識調査も行いました。

5)このインターンで1番得たもの

インターンで最も心に深く染みたことは『人の温かさ』です。多くの人の支えがあってこそ無事にインターンシップを終え、日本に帰国することができました。NRECAのスタッフはもちろん、アンケート調査に快く協力してくれた関係機関の方々、見ず知らずの外国人である私を笑顔で迎え入れてくれた農村の人たち、そしてこの貴重なインターンシップの機会を提供し、温かく見守ってくださったG.ecboのスタッフや先生方に心から感謝したいと思います。

6)インターン経験を今後どのように生かしていきたいですか?

インターンを通して学んだこと感じたことはたくさんあります。新しい環境で多くの人に出会い、インターンシップは私の内面を成長させてくれました。自分が将来国際協力にどのように関わっていくかというビジョンも考えることができました。ここで感じ取ったことや将来への志を忘れずに持続させ、これからへつなげていきたいと思います。

7) 未来の派遣学生にむけて、事前準備や注意点などがあれば教えてください。

現地に行ってみないとわからないことも多いので準備は難しいのですが、出来るだけ事前に情報を集めて計画を立ててください。出来れば、受け入れ先に計画を見せて意見をもらうなど、行く前に密に連絡を取った方が良いと思います。

8) その他、「これはいいたい!」と思われることがあればご自由にどうぞ・・・

はっきりとした目的意識を持っていないと、あっという間に終わってしまいます。インターンシップを通しての最終目標を設定し、その目標を達成するために、1日もしくは1週間毎のスケジュールを立てていくと良いと思います。

9) 後輩の方々へ一言メッセージを・・・

恥ずかしがらずに積極的に行動してください。また、日本や広島について興味のある人が多いので、日本の歴史などを勉強しておいたら話の幅が広がると思います。


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