武内 康佳 (D1)

文学研究科人文科学専攻-博士課程後期1年(2019年3月現在)

派遣先:Sina Rang Lemulung Homestay
派遣国:マレーシア
派遣期間:2019.3.12~2019.4.5
*遡上プログラム

1)派遣国について

 マレーシアは東南アジア諸国の国の一つです。国は13の州と3つの連邦領土からなります。それらは海により、マレー半島とボルネオ島の東マレーシアの2つに分けられています。マレーシアは3つの主要な民族、すなわちマレー人、中国人、インド人、で構成されていると言われています。ボルネオ島の東マレーシアには2つの州、サラワク州とサバ州があり、サバ州には32の民族が、サラワク州には27の民族が居住しています(MAMPU 2016)。私のインターンシップの受入機関はこの東マレーシア、サラワク州のバリオ村というところにあります。

2)現地での生活や文化について

 バリオ村にはケラビット人という民族が居住しています。ケラビット人は周辺のいくつもの言語を使用しており、ケラビット語、ルンバワン語、カヤン語、ケンヤ語、また、マレー語やインドネシア語、時にはプナン語も話すことができます。主要な宗教はキリスト教です。第二次世界大戦終了前にイギリス人の宣教師が村を訪問してから、アニミズムからキリスト教へ改宗が進められてきました。ケラビット人は稲作、農耕、森での狩猟により生計を立てています。2020年以前には観光もまたバリオ村で重要な産業となっていました。
 日本国内の諸方言と同様に、現在多くのローカルな諸言語が、「言語の死」の危険に瀕しています。ケラビット語もまた、消滅の危機に瀕した言語として考えられています。ケラビットの人口は5,000〜6,000人といわれているが(Amster 1995)、その多くは都市部に居住し彼らの母語であるケラビット語を用いることなく生活をしています。近年では、ケラビット語の流暢な話者は60代以上の方で、若い世代はケラビット語を学ぶ機会を失いつつあります。

3)派遣先について

 シナランレムルンホームステイは地域の中で最も古いロングハウスの中にあります。ロングハウスとは、木造の建造物で、そこの片側は居住する家族それぞれの生活スペースで、もう片側は文化的なイベントや会議などの集まりで使用するスペースです。バリオのロングハウスでは、20以上の家族が生活できる程長く、空き部屋は外部から来た訪問者の宿泊スペースであり、また村人の集まる場にもなっています。
受入機関はシナランと彼女の息子、ジュリアンにより管理されています。しかし、私のインターンを助けてくれたのは、シナランとジュリアンだけでなく、周辺の家族も非常に親切に接してくれました。

4)研修内容について

 このインターンシップの目的は、(1)用例の収集、(2)自分の研究や技能をもってケラビットコミュニティへ貢献することでした。(1)では、用例と歌を収集することができました。(2)では、現地のガイドに日本語の基本的な会話を教え、第1回先住民セミナーで言語類型論的観点からの発表を行うことができました。

5)このインターンで1番得たもの

 最も印象的な経験は、バリオ村で世界中の様々な人に会うことができたことです。ケラビット語の調査協力者(言語コンサルタント)や、生物学や教育学の研究者、ノマドワーカーとも会うことができ、自分のこれからの生き方について考えさせられました。また、みんなが自分の研究の価値を認めてくれたことが自分の研究に対するモチベーションにも繋がりました。

6)インターン経験を今後どのように生かしていきたいですか?

 現在、私は日本学術振興会の特別研究員をしていますが、このような身分がもらえたことも、G.ecboのインターンの経験が活かされたチャンスの1つだと考えています。博士課程修了後、アカデミアの世界に入りたいと考えています。G.ecbo参加の際の事前研修(プレゼンテーション、研究計画、他の参加者との学際的なコミュニケーション)はこれからも特に役に立つと考えています。

7) 未来の派遣学生にむけて、事前準備や注意点などがあれば教えてください。

 受入機関と蜜に連絡を取ることをおすすめします。計画通りに進めることはほぼ不可能だと考え、元々のプランが崩れた時に別のプランを立てることができるように、受入機関とよい関係を築くことが大切だと思います。

8) その他、「これはいいたい!」と思われることがあればご自由にどうぞ・・・

 悩んだらまず申請しましょう!

 

9) 後輩の方々へ一言メッセージを・・・

 インターンシップに申請する前におすすめなのが、将来5年くらいを含む計画を立てることです。
「5年で自分が何をしたいか」、「3年ではどうか」、そして、「そのためには今年やることは何か」。考えてみてください。


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