学長式辞 令和7年秋季入学式 (2025.10.1)
本日、広島大学に329人の皆さんを、新しい仲間としてお迎えできました。学長として、また、広島大学同窓生の一人として心よりうれしく思います。この記念すべき日にあたり、これまで皆さんを支えてくださったご家族をはじめ、先生、友人の方々への感謝の気持ちを忘れないでいただきたいと思います。
皆さんの中には、海外から初めて日本に来られた留学生の方もいらっしゃるでしょう。気候や言葉、文化が異なる地で学ばれることに、期待とともに不安の念を抱いたとしても不思議はありません。私自身もかつて海外留学を経験し、そのような気持ちをよく覚えています。どんなことでも遠慮なく教職員や先輩学生に相談してください。私たちは皆さんを全力で支援することを約束します。同時に、社会に貢献できる自立した大人へと成長してほしいと願っています。そしていつの日か、皆さんが誇りをもって「広島大学で学んで本当に良かった」と言ってくれることを願っています。
今年は、広島に原爆が投下されてから80年の節目の年にあたります。広島大学は、前身校で数多くの学生、生徒、児童、教職員、そして留学生の尊い命が失われた壊滅的な状況から立ち上がり、1949年に開学しました。初代学長に就いた森戸辰男先生は、「平和を希求する大学」を構想し、学びと生活を取り戻すために、世界の大学に向けて書籍や苗木の提供を呼びかけました。その呼びかけに応えて、数千冊に及ぶ書物や植物が寄せられました。それらは連帯の絆を体現するものであり、広島大学が平和を追求し続ける中で、その精神を形作り、本学のアイデンティティとして今日まで受け継がれています。
今や広島大学は12学部と4研究科1研究院を擁する国内有数の総合研究大学へと発展しました。本学には、約1万5000人の学部生や大学院生が在籍しており、その中には100を超える国と地域から集まった2000人を超える外国人留学生も含まれています。本学の卓越性は、国による多くの助成事業を通じて認められており、またTimes Higher Educationの「インパクトランキング2025」においては、本学が世界で101-200位に入り、国内では2位にランクインしました。皆さんには、そのような本学の一員となられたことに、大いに誇りをもってほしいと思います。
古代中国の儒家の経典(けいてん)『礼記(らいき)』には「学びて然る後に足らざるを知り、教えて然る後に困(くる)しむを知る」とあります。学ぶことで足らない自分に気づき、人に伝えることで理解の浅さに気づく。学びに終わりはありません。広島大学では幅広い教養と深い専門知識を身に付け、失敗を恐れずさまざまなことに挑戦し、友人や先生と議論して自身を磨いてください。
終わりに、今日から第一歩を踏み出される皆さんの広島大学での学びが、実り豊かなものになり、生涯にわたって誇りとなることを心よりお祈りして、私からのお祝いの言葉といたします。
あらためまして、本日はご入学おめでとうございます。
令和7(2025)年10月1日
広島大学長 越智光夫