理学部長 水田 勉
理学部で扱うサイエンスは、地球を含む宇宙全体、生命や生物の生態、物質の機能や性質、分子の構造や反応、数と図形などあらゆる森羅万象がかかわる自然科学を対象としています。
現代社会では、私たちはさまざまなサイエンスの恩恵を受けています。スマートフォンを取り上げると、検索には人工知能、動画には仮想現実画像、人工衛星を使ったGPS、半導体素子を構成する先端材料、アプリによる生命活動のモニタリング、緊急地震速報などが、日常生活をより便利で安全にしてくれています。これらは現代社会が築き上げた技術の成果ですが、この技術の基盤となるものは、サイエンスとして人類が蓄積してきた叡智です。
個々の叡智は、スマートフォンを作るために研究されたものではなく、夜空に見える星のかなたはどうなっているのか、手にしている物質の性質は原子や分子のどのような働きによるものか、日常現象はどのようにすれば数式化できるか、など、個々の研究者が興味や知的好奇心に端を発して、探求を進めた成果です。星空、物質、社会現象など日常的にあるものに対して現代人として単に満足するだけでなく、研究者としてその奥ではたらいている法則や原理を解き明かしたいという探求心が原動力となって日々の研究は行われています。ここで培われる、洞察力や探求力は、人類が知的活動を行い、文明を維持するうえで必要となる普遍的な能力です。理学部では、このような科学者として必要なあらゆる素養を育成するために、各専門分野で教育カリキュラムを構築しており、卒業研究で最先端の研究を行うことで、科学者としてスタートできる人材を養成しています。
理学部は、1929年に創設された広島文理科大学が源流です。100年近い歴史を刻む中で、高い研究成果を数々と挙げるとともに、社会に非常に多くの人材を送り出してきました。高校をはじめとした教育者や大学や会社において要職を務める研究者や技術者など、多くの優秀な人材が活躍しています。数学科、物理学科、化学科、生物科学科、地球惑星システム学科の5つの分野が自然科学のほとんどをカバーし、入学生が満足できる質の高い教育を提供しています。理学部を卒業する学生の多くは、さらに高い専門性を求めて大学院へ進学します。最先端の卒業研究を通じて学部から大学院へとシームレスな研究指導体制がとられており、より高度な研究を行えることが理学部の特徴です。
関連教育施設も多数あり、放射光科学研究所、宇宙科学センター、両生類研究センター、自然科学研究支援センター、向島臨海実験所、宮島自然植物実験所が整備されています。これに、ゲノム編集イノベーションセンターと世界トップレベル研究拠点(WPI)が新たに加わり、一層の充実が図られています。
みなさんの興味や探求したいことに応えられる教育環境と研究設備が用意されています。存分に活用して飛躍されることを願っています。
本学部の教育研究活動を、本ウェブサイトでご紹介致します。
