• ホームHome
  • 生物生産学部
  • 粉末食品を置いておくと固まってしまうのはなぜ?その予防と予測

粉末食品を置いておくと固まってしまうのはなぜ?その予防と予測

本研究成果のポイント

  • 粉末のガラス転移や応力緩和と固着との関係を明らかにした。
  • 分散体(微結晶セルロース)の効果を明らかにした。
  • 紛体食品の固着を予測するための実用的なアプローチを提案した。

概要

粉末食品を置いておくと、条件によっては粉末同士が固まってしまい、ハンドリングが悪化します。この現象を固着といいます。本研究の目的は粉末食品の固着挙動を解明し、その予防・予測について検討することです。物性論的には、粉末食品は非晶質(アモルファス)材料として捉えられます。非晶質とは広義の液体のような状態で、流動(巨視的な分子運動)を伴います。親水性の非晶質材料は温度や湿度(水分)変化によってガラス-ラバー転移します。ガラス状態の非晶質材料は分子運動が見かけ上凍結しており、物理的に安定です。非晶質粉末はガラス状態にあるとき、サラサラとした粉としての流動性を示すのです。一方、ラバー状態になると分子運動が回復し、液体のように振舞い始めます。液体は混ざり合います。したがって、粉末同士が徐々に固まるのです。本研究によって食品粉末の流通・保存条件を決めたり、固着を抑制するための物性改良剤の使用を最適化したり、いままで粉末として扱えなかった食品素材(例えば果物粉末は特に固着しやすい)を扱えるようにしたりといったことが可能になると期待されます。

研究成果の内容

試料には粉末食品モデルとしてデキストリン(多糖)、グルコース、微結晶セルロースを凍結乾燥によって分子レベルで混合した粉末を用いました。示差走査熱量測定によって粉末のガラス転移温度を調べ、保存温度とガラス転移温度との差(分子運動性を反映した指標)と固着率との関係をデータ整理しました。また、レオメーターによって粉末の応力緩和挙動を調べ、緩和荷重と固着率との関係をデータ整理しました。また、ここで得られた結果を実在する粉末食品での固着挙動と比較し、その利用性や今後の課題について議論しました。本研究は世界最大手の某食品メーカーも興味を示しており、今後も議論を継続する予定です。

論文情報

  • 掲載誌: LWT Food Science and Technology
  • 論文タイトル: Effect of cellulose powder content on the water sorption, glass transition, mechanical relaxation, and caking of freeze-dried carbohydrate blend and food powders
  • 著者名: Alex Eduardo Alvino Granados and Kiyoshi Kawai
  • DOI:https://doi.org/10.1016/j.lwt.2021.111798
【お問い合わせ】

広島大学 生物生産学部 川井 清司
Tel:082-424-4366 FAX:082-424-4366
E-mail:kawai*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)

掲載日:2021年9月11日


up