イセエビ類の卵に擬態して寄生する新種のカイアシ類を発見

本研究成果のポイント

  • 台湾に生息するネッタイイセエビの卵塊から寄生性のカイアシ類が発見された
  • これまでに発見されている近縁種と形態的に比較した結果、新種であることが分かった
  • このカイアシ類は球状の前体部を持っており、宿主の卵に擬態していると考えられる

研究成果の内容

ニコテ科のカイアシ類はエビやカニなどの様々な甲殻類の卵塊や育房に寄生します。寄生性カイアシ類の多くは宿主の形態や生態に応じて体を様々な形へと進化させているようで、ニコテ科カイアシ類は宿主の卵や卵塊に擬態して寄生します。

Choniomyzon属のカイアシ類は十脚目甲殻類の抱卵に寄生することが知られています。インドに生息するケブカイセエビの卵塊から初めて見つかり、その後、日本のオオバウチワエビの卵塊からも発見されています。ケブカイセエビとオオバウチワエビは、どちらもイセエビ下目というグループに属しており、生息場所も離れていることから、他のイセエビ下目のエビ類にもChoniomyzon属の寄生が予想されていました。そこで、台湾に生息するイセエビ類の一種、ネッタイイセエビ(Panulirus longipes longipes)の雌が腹部に抱える卵塊を調べたところ、Choniomyzon属に属するカイアシ類が発見されました。本種は、触角にある節の数、小顎基部の剛毛数、卵嚢内に収容される胚の配置などで他種とは形態的に明確に区別できることから、新種であると判断されました。

図.ネッタイイセエビの卵塊に寄生するChoniomyzon taiwanensis
A.宿主の腹部(ここから本種を発見)
B.成体雌
C.卵嚢(右の矢印)をもつ成体雌(左の矢印)
スケールバーは、A=2 cm、B、C=200 µm。

論文情報

  • 掲載誌: ANIMALS
  • 論文タイトル: Choniomyzon taiwanensis n. sp. (Crustacea: Copepoda: Nicothoidae) Parasitic on the External Egg Mass of the Longlegged Spiny Lobster Panulirus longipes longipes (Crustacea: Decapoda: Palinuridae) from Taiwanese Waters
  • 著者名: Yu-Rong Cheng, Kaori Wakabayashi, Yen-Ju Pan
  • DOI: 10.3390/ani11082475.
【お問い合わせ】

広島大学 生物生産学部 若林 香織
Tel:082-424-7989
E-mail:kaoriw*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)

掲載日:2021年10月15日


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