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[研究成果]地中の未利用資源―腐植物質―を有効化する微生物を世界で初めて捕獲



【研究成果のポイント】

◆地下環境に豊富に存在する未利用有機物資源である腐植物質*1を、酸素の少ない地下環境で分解できる微生物の捕獲に成功した (Clostridium sp. *2 HSAI-1株の捕獲)。

◆腐植物質は微生物分解が難しいため、酸素がなくては分解不可能と考えられていたが、本研究により、嫌気的*3な地下の原位置でも分解が可能であることが明らかになった。また、この分解産物は地下の他の微生物、たとえばメタン生成菌などの餌に利用可と考えられる。

◆したがって、本成果は、地下の未利用有機物資源の有効化、特に微生物的なメタン生産への展開も期待される。



【研究成果の概要】

現在まで、難分解性の有機物である腐植物質は、酸素を利用する好気性の微生物により分解されると考えられており、その反対の条件である嫌気性の微生物が腐植物質を分解することは困難であると考えられてきました。

しかし、本研究では、酸素が行き届かない地下環境において腐植物質を分解する微生物を、世界で初めて捕獲しました。今回の成果において、微生物により地下環境にある未利用有機物を分解できる可能性があることを明らかにしたことで、地下に存在する有機物資源から、工業的に有用な物質を生産する技術開発への貢献が期待されます。



(上段)幌延地圏環境研究所の先行研究で明らかにした部分。

(下段)Clostridiumsp.HSAI-1 株による腐植物質分解の概念図。





【発表論文】

<研究論文名>

Anaerobic decomposition of humic substances by Clostridium from the deep subsurface

(地下環境由来のクロストリジウム属細菌による嫌気条件下での腐植物質分解)



<著者>

上野 晃生1、清水 了1、玉村 修司1、奥山 英登志2、長沼 毅3、金子 勝比古1

(1 幌延地圏環境研究所、2 北海道大院・環境科学院、3 広島大院・生物圏科学研究科)



<公表雑誌>

Scientific Reports (自然科学および臨床科学一般を扱うNature groupのオンライン雑誌)



【用語解説】

*1 腐植物質 :

ほぼあらゆる環境の土壌や天然水に含まれる「天然有機物」の1つ。地殻内の巨大な‘炭素貯蔵庫’である(地殻内炭素の約10%;残りの大部分は石灰岩として存在)。大量に存在するが難分解性で生物的にはほとんど利用されていない。朽ちた木や動植物の遺骸等が風化等で分解された後、長期間の様々な化学反応を経て形成されると考えられている。この意味で‘生物と化石の間’といえる非生体有機物(有機分子)である。分子としてはとても大きくて複雑かつ多種多様なので、ひとつの純粋な分子として扱うことができない。身近な例として石炭にも含まれている。



*2 Clostridium sp.(Clostridium属細菌)

土壌内部や生物の腸内などの酸素濃度が低い環境に棲息する偏性(絶対)嫌気性細菌の一種。有名な嫌気性細菌の一種。酸素存在下(好気的条件)では生育できないという特徴がある。



*3嫌気的条件 :

生物が関わる現象のうち、酸素が無い条件で生命現象を行う条件。逆に、酸素を使って生命現象を行う条件を「好気的条件」という。







【お問い合わせ先】

広島大学大学院生物圏科学研究科

教授 長沼 毅

E-mail:takn*hiroshima-u.ac.jp(注:*は半角@に置き換えてください)



広島大学学術・社会産学連携室広報グループ

三戸 里美

TEL:082-424-3701

FAX:082-424-6040

E-mail:koho*office.hiroshima-u.ac.jp(注:*は半角@に置き換えてください)


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