• ホームHome
  • 生物生産学部
  • 【論文公開】応用動植物科学プログラムの中村隼明准教授の論文が公開されました

【論文公開】応用動植物科学プログラムの中村隼明准教授の論文が公開されました

ニワトリ始原生殖細胞に適した凍結保存液の開発

本研究成果のポイント

  • 始原生殖細胞は、胚(はい)と呼ばれる卵内で個体が発生する過程で現れる卵や精子のもとになる最も未熟な生殖細胞です。
  • 受精卵の凍結保存ができないニワトリにおいて、始原生殖細胞を高生存率で回収することができる凍結保存液を開発した。
  • この凍結保存液を用いて凍結した天然記念物「黒柏鶏」の始原生殖細胞から個体を復元することに成功した。

研究成果の内容

ニワトリは高品質な卵と肉を生産するための産業動物として世界中で広く飼育されています。鳥類の卵は巨大な卵黄に付着しているため、ほ乳類のように受精卵を凍結保存することができません。このため、ニワトリは一般に生体で継代・維持されていますが、近年世界中で猛威をふるっている高病原性鳥インフルエンザの流行によって消失してしまうリスクがあります。一方、ニワトリでは、卵や精子のもとになる始原生殖細胞を取り出し、凍結保存しておいて、移植することで他個体(宿主)の生殖巣を借りて精子や卵を作らせることが可能です。私たちの研究グループは、ニワトリ始原生殖細胞の凍結保存に適した凍結保存液を開発しました。

私たちは、二価アルコールの一種であるプロピレングリコールがニワトリ始原生殖細胞に対して高い凍結保護作用を持つことを発見しました。また、糖質の一種であるトレハロースや、ニワトリ由来の血清には、凍結保護作用を増強する効果があることを明らかにしました。これらを適切な濃度で組み合わせて添加することで、凍結保存した始原生殖細胞の約60%を融解後に生きたまま回収することが可能になりました。本研究で開発した凍結保存液の実用性を検討するため、天然記念物「黒柏鶏」の始原生殖細胞を凍結保存しました。凍結融解した始原生殖細胞を移植することで、宿主の生殖巣を借りて機能的な精子や卵を作らせることができました。また、オスとメスの宿主を交配することで「黒柏鶏」のヒヨコが産まれたことから、凍結細胞から個体を復元できることが明らかとなりました。

本研究は、ニワトリを細胞レベルで凍結保存するジーンバンク事業への実用化が期待されており、卵と肉の安定的な生産や希少な在来品種の保存に貢献することができます。

論文情報

  • 掲載誌: Journal of Reproduction and Development
  • 論文タイトル: Development of cryopreservation media for the slow-freezing of cultured primordial germ cells in chicken
  • 著者名: Natsuko Hamai, Chihiro Koide, Yuki Tansho, Yukino Ooka, Mayo Hirano, Effrosyni Fatira, Masaoki Tsudzuki, Yoshiaki Nakamura
  • DOI:  10.1262/jrd.2022-123 DOI
【お問い合わせ】

広島大学 生物生産学部 中村 隼明
E-mail:ynsu*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)


up