研究内容(久米グループ)

モデル生物(酵母)を用いた細胞の構造と機能に関する研究(久米グループ)

私たちのグループでは、ヒト細胞と同じ真核細胞である分裂酵母をモデルとして用い、生命の基本単位である細胞の成り立ちと細胞がもつ機能に関する研究を行っています。特に、細胞の形や細胞を構成する細胞内器官(オルガネラ)について、その制御メカニズムの解明を目指し、研究を行っています。細胞の形やオルガネラ構造の制御は、細胞が正常に増殖したり、細胞がもつ機能を発揮するうえで重要です。細胞の形やオルガネラ構造の異常は、がん細胞や老化した細胞でみられることから、本研究は、細胞のがん化や老化の理解、関連する各種疾病の理解に貢献することが期待されます。以下に、分裂酵母を用いた具体的な研究内容について簡単に紹介します。

1. 細胞の形(細胞形態)に関する研究: 細胞増殖と連動した細胞極性制御機構の解明
すべての真核細胞は、固有の形(細胞形態)をもち、それぞれの細胞がもつ本来の機能を発揮するために重要です。細胞形態は、自身の増殖と連動し、適切に制御されていますが、その破綻は、細胞がん化を引き起こす要因であると考えられています。

私たちは、細胞増殖と連動した細胞形態形成制御機構の解明を目指し、増殖(細胞周期)に伴い、細胞形態形成に重要な細胞極性が、ダイナミックに変化する分裂酵母を用い、細胞形態に異常を示す変異体の解析を中心に、研究を行っています。

図1. 分裂酵母の正常細胞と形態異常変異体

図1. 分裂酵母の正常細胞と形態異常変異体
分裂酵母(左図)は、楕円形の出芽酵母とは異なり、円筒形の細胞形態を示します。サイズ(長径)は、7-14µm。
右図は、細胞形態に重要な遺伝子に変異が入り、円筒形を維持できず、球形の細胞形態異常を示した細胞。

 

2. 細胞核のサイズおよび形に関する研究
細胞核(以下、核)は、細胞内で最も重要な細胞小器官(オルガネラ)の1つであり、DNAの核内への収納・保護に重要です。教科書で細胞の絵を見ると必ずと言っていいほど、細胞の中央には核があり、球形または楕円形の構造をしています。しかしながら、すべての細胞が、球形の核形態を示すわけではありません。実際に、がん細胞では、核の形が異常になり、肥大化した核が観察されます。では、何が核の形やサイズを決めているのでしょうか?そして、核サイズや形を維持する重要性とは何でしょうか?このような疑問に限らず、核サイズや核の形についてはまだまだ不明な点が多くあります。私たちは、分裂酵母を用い、核サイズや形が異常になる変異体の解析を中心に、以下の研究を行っています。

2-1. 細胞核サイズ決定因子の探索とその制御機構の解明
2-2. 細胞核形態の制御機構の解明

図2. 分裂酵母の正常細胞と核サイズ、核形態異常細胞

図2. 分裂酵母の正常細胞と核サイズ、核形態異常細胞
左図は、正常細胞の核を緑色蛍光タンパク質・GFPで可視化した細胞。
中央は、核サイズが異常な細胞。右図は、核形態が異常な細胞。


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