文学研究科の教育―21世紀の人文学

理念と目的

広島大学大学院文学研究科の理念は、人文科学の伝統的なディシプリンを踏まえながら、人間およびその文化を根源的かつ全体的に捉えるとともに、常に新しい知の探求と開拓を目指すことです。

この理念に基づき、本研究科では自立的で特色ある研究教育活動を推進し、文化の進展に貢献することを目的とします。知識偏重に陥ることなく、豊かな感性と、人間およびその文化に対する深い洞察力を養います。豊かな学識と、自立的・創造的研究を行うための基礎的能力を身につけ、社会的要請に十分に応え得る高度な研究能力と学識を養うことを目標とします。

特色

人間学を真摯に追求し、未来への責務に応えます。

広島大学大学院文学研究科の目指す人文学とは、人間の思想、人間の生活の営みの歴史、人間の言語など、人間そのものにかかわる諸問題を総合的に究明する学問です。

20世紀は自然科学および社会科学の発展に邁進し、人文科学分野が軽視されてきたという反省が世界的規模でなされています。本研究科はその反省に立って、「人間学の復興」を基本理念とした高度の教育研究を目指します。

平成13年(2001年)、文学部から大学院文学研究科へ部局が移行(大学院部局化)しました。同時に大学院の改組も行われ、人文学1専攻・5教育研究分野、7基幹講座・1協力講座からなる新・文学研究科が発足しました。平成19年(2007年)には、新たに比較日本文化学(平成22年に人間文化学と改称)を開設し、6教育研究分野となりました。さらに講座再編も行い、平成20年(2008年)からは、6基幹講座となっています。

今、広島大学大学院文学研究科は名実ともに大学院大学としての地歩を固めつつあります。
本研究科では人文科学を全体として有機的に統合する人文学の教育研究を推進します。従来のディシプリンを踏まえながらも分野横断的教育を提供することにより、時代の変化に対応しうる柔軟な発想を持った人材を養成することを目指しています。このため、人文学専攻全体を方向づける俯瞰型教育研究のコアとして総合人間学講座を設けています。

教育システムでは、コアカリキュラム・ミニコアカリキュラムの開設、複数教員指導制、学位取得スケジュールの明確化などにより柔軟化を図り、大学院の教育機能を大幅に拡充しています。また、複数機会入試制、外国人留学生特別選抜、社会人入試枠の拡大、教育コースの複線化を実施し、社会の多様化した高等教育のニーズにも対応しています。

広島大学大学院文学研究科は、これまでのすぐれた研究教育実績の上に立って、新たな大学院教育への挑戦を行っています。

教育研究分野を支える講座群

文学研究科の教育研究は、6つの講座からなる教員組織によって支えられています。また、人文学専攻共通科目や複数指導教員制などによって、講座の枠組みを超えた幅広い教育研究を展開します。

  • 総合人間学講座
    (教育研究分野:人間文化学)

文化多元主義など世界的な規模で起こっている大きな認識の変革の流れを踏まえ、哲学、史学、文学等の伝統的な学問体系を骨格としながら、総合的な人間学を開拓し、領域横断的な新しい人文学の確立を目指します。このため分野を横断する研究を行い、文学研究科全体を方向づける俯瞰型教育研究を担当します。

  • 応用哲学・古典学講座
    (教育研究分野:思想文化学)

多様な価値観が錯綜する現代社会の諸相を思想文化の観点から哲学的に考察するために、先端的な応用哲学の実践的横断的研究を行うとともに、欧米・インド・中国・日本等の古典の中で培われた人類の英知を教育研究します。

  • 歴史文化学講座
    (教育研究分野:歴史文化学)

各国の歴史的個性と世界的連関に着目し、日本・アジア・ヨーロッパといった広領域での相互の関連性や多様性を重視した教育研究を行い、現代社会の歴史的課題を究明します。そのために、従来の講座の垣根を越えて日本史学と世界史学の両講座を統合し、国際的・学際的な教育研究を進めます。

  • 日本・中国文学語学講座
    (教育研究分野:日本・中国文学語学)

日本と中国の文学と言語を、各専門分野で確立した方法によって実証的に考究するとともに、新しい方法と領域を常に開拓し続ける柔軟性をもって見直すことに努め、古代から現代まで密接な関係を築いた両国文化の総体をも視野に入れつつ教育研究を行います。

  • 欧米文学語学・言語学講座
    (教育研究分野:欧米文学語学・言語学)

文化多元主義の観点から、英語、ドイツ語、フランス語、日本語を含む諸言語の歴史的研究、記述および理論的研究を推進するだけではなく、主として欧米の言語を駆使して創造された文学を、文芸理論、言語理論、文献学的手法を援用して研究します。

  • 地表圏システム学講座
    (教育研究分野:地表圏システム学)

多様な地表圏文化の有様を過去から現在にわたって解明し、その調和的な保全と活用を図ることを目指し、都市農村、歴史的景観、文化財、遺跡などの諸事物を歴史的・社会的環境や自然環境と関連づけて総合的学際的な教育研究を行います。


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