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【開催報告】【2020.12.12】広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」第60回定例オンラインセミナー「広島叡智学園HiGAの平和教育への挑戦(2)-日米の子どもによるヒロシマ教科書づくり-」を開催しました

広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は、2020年12月12日(土)、定例オンラインセミナー講演会No.60「広島叡智学園HiGAの平和教育への挑戦(2)-日米の子どもによる教科書づくり-」を開催し、大学院生や学校教員など35名の皆様にご参加いただきました。

広島叡智学園プロジェクトシリーズでは、Peace Makerの育成をねらいとするGlobal Justiceの単元デザインと子どもの学びに注目し、ヒロシマ発・HiGA発の平和教育のあり方を提案していきます。第2回の今回は、Global Justiceの第1単元「日米の子どもによる教科書づくり」(以下、本単元)の成果をめぐって意見交換することとしました。

第1パートでは、広島大学の草原和博教授が本プロジェクトの歴史的経緯を紹介するとともに、広島県立広島叡智学園中学校・高等学校教諭の徳田敬氏よりGlobal Justiceのカリキュラム上の位置づけが解説されました。とくに本単元には、学校のミッションに直接的なつながる場として、平和の担い手の育成に期待を寄せたことが語られました。

第2パートでは、広島大学の金鍾成助教と草原和博教授が、単元のねらいと構造を解説しました。金鍾成助教は、国家の語りを超えて子どもが公共圏をつくる単元のデザイン原則を示すとともに、草原和博教授は叡智学園と米国のL小学校がともに「ヒロシマ」の「教科書」を作成し、相互に批評しあう対話の過程(5回のラウンド)を写真を交えて紹介しました。また、広島と長崎、そして核兵器廃絶について知識を深めていったL小学校の子どもと、教科書記述に隠されたバイアスとそのバイアスを生み出すナショナルな歴史言説と教科書制度についてメタ認知を深めた叡智学園の子ども、それぞれの言葉が再現されました。あわせて両校の子どもが、双方の立場を「ヒロシマ教科書」に併記することで公正さを追究し対立を解消しようとする相対主義的な合意形成の実態も確認されました。

続いて広島大学の川口広美准教授、鈩悠介氏(同大学大学院生)、星瑞希氏(東京大学大学院生)が、両校の児童生徒にみる歴史観を報告しました。ヒロシマをめぐる17の歴史的出来事の重要性(歴史的意義付けの仕方)を調べたところ、広島の歴史に焦点化するか/核軍縮の課題を語るのか、広島の被害を強調するか/被爆者のトラウマを強調するのか、歴史的に解決された出来事として描くか/現在進行形の出来事として描くかで、日米で違いが見られたことが報告されました。また学校外の経験や個人のアイデンティティが、歴史認識に影響を与えている可能性が指摘されました。

第3パートでは、原爆文学を研究する川口隆行教授と被爆の心理的社会的影響を研究する川野徳幸教授がコメントしました。川口隆行教授は、教科書に語られていないことにこそ注目する必要性を説き、米国国内の核実験地や先住民・ウラン鉱山等の被爆者の存在、広島で被爆した南方留学生や朝鮮人の存在を紹介しながら、子どもの語りを二国間の語りに収束させず、多様な声と語りに開いていく可能性を提起しました。川野徳幸教授は、対話を通して歴史認識の合意をつくっていく教育の価値に言及するとともに、教育現場で核兵器廃絶の主張や被爆者感情の取り扱う難しさを指摘しました。あわせて教育内容に原爆後障害の問題を組み込む必要性を提案しました。
これらのコメントを受けて、Global Justiceの学びを1回に留めるのではなく螺旋型カリキュラムとして編成する可能性、そしてヒロシマや被害・加害を語る「視点」と「当事者」を徐々に複線化、重層化していくカリキュラムのあり方が議論されました。

本セミナーは、平和教育を共通テーマに異なる分野の専門家が語り合い、本単元の改善・発展の行き先を考える貴重な場となりました。次回は、概念を通して平和のあり方を考える第2単元の成果と課題を報告します。

 

 

プロジェクト説明の様子(左:金鍾成助教、右:草原和博教授)

徳田敬氏(広島県立広島叡智学園中学校・高等学校)

川口広美准教授

鈩悠介氏(広島大学大学院)

星瑞希氏(東京大学大学院)

川野徳幸教授

川口隆行教授

会場の様子

当日の様子はこちらをご覧ください。
セミナーシリーズについてはこちらをご覧ください。

 

【問い合わせ先】

広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI) 事務室

E-Mail:evri-info(AT)hiroshima-u.ac.jp
​※(AT)は@に置き換えてください


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