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広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,平和・市民性教育ユニットの活動の一環として,2021年5月30日(日)に,第78回定例オンラインセミナー「これからの平和教育を考える(1)-平和教育者アーカイブ構築の意義と可能性-」を開催しました。大学院生や学校教員を中心に136名の皆様にご参加いただきました。
「これからの平和教育を考える」シリーズは,PELSTE(平和教育・授業研究国際セミナー)や広島叡智学園との共同研究プロジェクトといった,これまでEVRIで取り組んできた平和教育の実践と研究を,より総合的に展開していくために考えられたシリーズです。
シリーズ第1回となる本セミナーでは, EVRIが取り組んでいる,広島の平和教育者のオーラルヒストリーをまとめた動画作成の意義と可能性に関して,動画作成に協力して頂いた平和教育者をお招きして,それぞれの立場から具体的な報告が行われました。
はじめに,司会の川口隆行教授より,本セミナーの趣旨が説明されました。社会におけるアーカイブのもつ意義,平和教育者(教師教育)におけるアーカイブのもつ意義に触れながら,特に新しい知を作り上げるアーカイブの創造的機能を考える必要性について,セミナーの参加者全体で確認されました。
司会の川口教授
インタビュー動画のイメージ
次に,草原和博教授,宮本勇一助教,小松真理子氏(広島大学大学院・博士課程後期)から「なぜアーカイブをつくったのか」と題して発表が行われました。草原教授からは,アーカイブ作成に至る経緯の説明があり,さらに今後の方向性として,多様性が担保されたアーカイブのデザイン,広島の平和教育の歴史的見取り図の作成,アーカイブを利用した新しい平和教育の提案が示されました。小松氏からは,取材対象や質問項目の選定で考えた問題,取材時における「聞き手」としての役割の難しさや葛藤について報告がありました。宮本助教からは,動画編集者としてコンセプトの限定化や技術的な限界と向き合った経験,そこから考えるアーカイブの活用可能性と持続可能性について報告がありました。
報告を行う草原教授
報告を行う宮本助教
次に,動画作成に協力してくださった森下弘氏(元広島県立高校教諭),多賀俊介氏(廣島ヒロシマ広島を歩いて考える会・元私立中高教諭),野元祥太郎氏(小学校教諭)の3名に「どうアーカイブをうけとめたのか」についてお考えを語っていただきました。まず,それぞれの方に自分の動画についての感想や意見を確認し,さらにはお互いの動画を視聴しての気づきなどを自由に語っていただきました。公開された動画を通して,自分の教育活動を改めて振り返ることができたこと,三人の動画を見ることで自分の教育活動の歴史的位置を知ることができたことなどが話題となりました。また,三人の動画や解説動画で詳しく触れることができなかった話題,特に九〇年代後半の平和教育の動向についても話題になりました。
平和教育者の方々からお考えを聞く小松氏
アーカイブについて語る森下氏
アーカイブについて語る多賀氏
アーカイブについて語る野元氏
以上の発表を受けて,指定討論者の川口広美准教授からは,平和教育アーカイブを利用した教師教育の可能性について,金鍾成准教授からは,今後の平和教育・実践研究の体系化におけるアーカイブの果たす意義について,それぞれ問題提起がなされました。
指定討論をする金准教授
指定討論をする川口准教授
また,ウェビナーのQ&A機能を活用して行われた質疑応答では,「動画の解説もバージョンアップする必要があるのではないか」「アーカイブをオンラインで公開する際の問題はないのか」といった質問や「教育現場における平和教育実践の継承のために,動画をうまく活用できるのではないか」「動画編集される過程で切り落とされざるを得なかった要素について,他のメディア(Webサイト等)を用いてスピンオフ的な情報として配置してアクセス可能にしてはどうか」といった意見も出されました。平和教育者のアーカイブ構築に向けて,具体的にどのようなことを考えて行けば良いのか,参加者全体で理解が深まりました。
今後もEVRIでは「平和・市民性教育ユニット」ユニットを中心に,平和教育の実践と研究のあり方について引き続き検討してまいります。
広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI) 事務室