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【開催報告】【2021.06.06】広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター (EVRI)」は,第79回定例オンラインセミナー「教科教育学・心理学・日本語教育学の視点からインクルーシブな学びを考える(1)-インクルーシブな社会を作るための「社会科」の役割とは」を開催しました

広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,Inclusive・日本語教育ユニットの活動の一環として,2021年6月6日(日)に,第79回定例オンラインセミナー「教科教育学・心理学・日本語教育学の視点からインクルーシブな学びを考える(1)-インクルーシブな社会を作るための「社会科」の役割とは-」を開催しました。大学院生や学校教員を中心に75名の皆様にご参加いただきました。

「教科教育学・心理学・日本語教育学の視点からインクルーシブな学びを考える」シリーズは,教科教育と特別支援教育とが手を組み,インクルーシブ教育の視点から教科のあり方をどう考えるか,教科の視点から特別支援教育をどう振り返るか,を相互に検討し,今後の新しい教育モデルを構想することを目指しています。なお,本シリーズは日本生命財団「児童・少年の健全育成委託研究」「学びのユニバーサルデザインに基づく日本型インクルーシブ教育システムのロールモデルの開発」(研究代表者:川合紀宗)の成果公表の一環としても実施されています。

シリーズ第1回目となる今回は,川合紀宗教授川口広美准教授の司会の下,インクルーシブな社会の実現に向けて,社会科教育・授業・教師の在り方について考えを深めました。以下のとおり,本セミナーは二部構成で行われました。

第1部「話題提供」では,川口准教授が社会科教育とインクルーシブ教育の関係性について提案をしました。特別支援教育の文脈では,社会科の教育内容(=地理や歴史など)をいかに効率よく効果的に伝えるかについて,技術・方法的な支援へと注目が集まっています。しかし,社会科の教科目標は市民的資質を育成することであり,情報の伝達はあくまでも副次的なものです。そこで,インクルーシブな社会科教育の実現のためには,教育方法のみならず,目標や内容についても十分吟味する必要性が述べられました。特に,インクルーシブな社会の実現のためには,私たち一人一人が,社会に生きる人々の多様性を理解することが欠かせません。したがって,社会科では,インクルーシブな社会を志向することそのものが学習目標や学習内容となり得るということが確認されました。

司会の川合教授

司会の川口准教授

第2部「実践報告」では,「社会科の授業実践はインクルーシブ教育にどのように関わり得るか」という視点で,玉井慎也氏(広島大学大学院生,広島市立井口中学校・非常勤講師)・久保美奈氏(広島大学大学院生,広島みらい創生高等学校・非常勤講師)が,それぞれの授業実践の成果とその省察を報告しました。

玉井氏は,中学校1年生の地理的分野の「時差」を事例に,特別支援学級における実践とその振り返りを発表しました。自身の実践を見直す中で,教師の実践がともすれば子どものつまずきや諦めを生み出してしまうことを実感したことが述べられました。また,高校入試などの社会的要請と,目の前の子どもの学びの実態とを勘案しながら,時差学習の目標や内容を再構成することの葛藤が語られました。

久保氏は,高等学校公民科「現代社会」における単元開発・実践について発表しました。単元を作るうえで久保氏が注目したのは,しばしば個人の問題とされやすい「見た目」の問題でした。開発した単元では,体型や肌の色といった見た目の悩みを,「個人の問題」ではなく「社会の問題」として子どもたちに捉えさせようとした試みが報告されました。また,問題を認識させることに留まらず,社会を変革するための力を子どもに身につけさせることが今後の課題であると述べられました。

報告をする玉井氏

報告をする久保氏

また,ウェビナーのQ&A機能を活用して行われた質疑応答では,「自己の実践とユニバーサルデザインとの関係性をどうとらえているか」,「自己責任論が横行する社会的な状況の中で,問題をいかに『社会の問題』として扱うか」,「その際の教師のスタンスはどうあるべきか」,「諦めて,つまずく子どもにどのように教師は向き合うべきか」といった質問が提起され,活発に意見交換が行われました。

EVRIではInclusive・日本語教育ユニットを中心にして,今後も多様な子どもたちがともに学び考える空間の在り方を検討してまいります。

当日の様子はこちらをご覧ください。

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【問い合わせ先】

広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI) 事務室

E-Mail:evri-info(AT)hiroshima-u.ac.jp
​※(AT)は@に置き換えてください


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