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広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,2021年12月9日(木)に,第7回人間社会科学研究科設立記念セミナー「EVRI第100回定例セミナー記念シンポジウム:人間・社会科学にとって研究拠点とは何か」を開催しました。大学院生や学校教員を中心に61名の皆様にご参加いただきました。
本セミナーは,定例セミナー開催100回ならびにEVRI設立5年を記念し,人文学・社会科学の研究拠点のあり方をめぐって意見交換することを目的としています。「教育」をテーマとした研究拠点として何をめざし,学術と社会にいかに貢献し,そして何を基準にして成果を評価し,発信していくべきかについて考える場を持つこととしました。
はじめに,EVRI・センター長の草原和博教授が,本日の趣旨及びEVRIが目指してきたことを説明しました。設立の経緯を一次史料に即して再現し,EVRIは,旧研究科の共同研究プロジェクト「カリキュラムR&Dセンターの構想と課題」の取組および平成27年度「ヴィジョンと戦略ワーキンググループ教育学研究科シンクタンク構想サブワーキンググループ答申」を基盤にしていることが確認されました。また,①研究の蛸壺化に抗する学際的な研究拠点をつくりたい,②社会貢献や国際貢献を組織的に展開できるプラットフォームを構築したい,③専門職者の育成や政策提言を担うシンクタンクを組織したい,このような当時の声をうけて立ち上がった拠点であること,研究拠点として機能とアウトリーチ先を拡張しつつ,たえず新たなテーマに取り組んできた歴史的過程が説明されました。
次に,広島大学人間社会科学研究科研究科長の小林信一特任教授より「人文学・社会科学の研究拠点づくりと研究評価のあり方」と題して基調講演をしていただきました。日本の人文社会系の研究振興策を歴史的に振り返り,それは戦時下の人文社会科学振興政策(戦争協力)を起源としていること,人文・社会科学の振興にあたっては,アカデミアと国家・国策との関係に反省的である必要性が指摘されました。また,戦後の振興政策の中で,未だ実現していない課題として,特定の研究目的を持たない,研究者間の交流の場となる「人間社会インスティテュート」の設立があり,そのような組織の構築をめざしたいとのコメントがありました。さらに人文・社会科学の評価について,自然科学に準拠するのは自殺行為であり,研究者は,異なる領域を結ぶ「媒介の専門家」として,研究の社会的・経済的なインパクトや書籍出版,メディアへの露出を含めて評価されるべきことが提起されました。
次に,筑波大学人間系長の井田仁康氏より「筑波大学における人間系の研究拠点づくりのこれまでとこれから」と題して基調講演をしていただきました。筑波大学では,研究者一人ひとりの個人研究をベースとしながらも,多様な組織研究やアウトリーチが展開されている状況が説明されました。具体的には,月1回ペースで研究者が個人研究を語り合い,共同研究のシーズを探る「人間コロキアム」,社会貢献事業を通して外部資金の調達をめざす「エクステンションプログラム」,教育学・心理学・障害科学の3分野の研究者が越境して取り組む共同研究プロジェクト,さらには世界展開力強化事業へのコミットなど,学際的・国際的な研究の展開を支援している状況が開示されました。今後は, Ed.D構想の実現に向けて,教育系3分野が連携し,実務研究者養成と研究者養成,それぞれに特化した大学院博士課程のプログラムを充実させたい意向が示されました。
EVRI設立の経緯を解説する草原教授
本セミナーの趣旨・次第の共有(草原教授)
人文・社会科学の研究拠点のあり方を語る小林研究科長
筑波大学での研究拠点づくりの取り組みを説明する井田人間系長
以上の発表を受けて,教育ヴィジョン研究センター諮問委員の武田信子氏からお言葉を頂戴いたしました。過去5年間,将来的に可能性のある糸を一本一本たどり,それらを束ねて大きなネットワークを構築してきたEVRIの取組を評価いただきました。参加者との質疑では,「総合知」のあり方やEVRIの評価について意見交換が行われました。
セミナーの最後には,広島大学教育学部学部長の松見法男教授からセミナー100回のあゆみに対して,賛辞とご助言のお言葉を頂戴いたしました。
EVRI諮問委員の武田氏からのお言葉
賛辞とご助言を述べられる松見学部長
広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI) 事務室