• ホームHome
  • 教育学部
  • 【開催報告】【2022.02.09】広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,東広島市広域交流型オンライン社会科地域学習(大学と市の移り変わり)を実施しました

【開催報告】【2022.02.09】広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,東広島市広域交流型オンライン社会科地域学習(大学と市の移り変わり)を実施しました

草原和博教授広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」拠点リーダー)は,2021年度から,東広島市教育委員会と連携して,市内複数の小学校をオンラインで結んだ広域交流型オンライン社会科地域学習を開始しました(プロジェクトリーダー:草原教授)。GIGAスクール構想の推進によって実現した子どもたちの「1人1台」端末と学校のICT環境を活用して,市内各地からの中継を交えながら,東広島市の地理・歴史・政治・経済・文化などについて対話的・双方向的に学びます。さらに,この学びを広島大学の教員と大学院生がコーディネートします。

本年度は,2021年6月の試行に基づいて,毎月1回2時間,テーマを決めて授業を行います。この企画が実現することで,小規模校と大規模校の子どもが,年間を通して,各地域のようすを比較したり交流したりしながら学びを深められるように工夫しています。
 
2022年2月9日,プロジェクトリーダー草原教授と熊原康博准教授,広島大学の学生・大学院生らは,東広島市内小学校5校7学級(吉川,高屋東,高美が丘,福富,入野)の3年生(179名)が参加した,「大学と市の移り変わり」をテーマとするオンライン授業を実施しました。
 
1時間目の導入は,大学と小学校・中学校・高校の違いを理解することから始まりました。地理学を専門にする広島大学の熊原准教授に登場いただき,大学の先生の仕事について紹介をお願いしました。大学の先生は,小中高の先生のように「授業」を行うだけでなく,「大発見・新発見」をする研究やその研究でわかったことを「社会に役立てる」社会貢献も使命にされていることをお話しされました。特に「大発見・新発見」をする研究が一番大事な仕事であることを強調されました。
 
その後,広島県内の大学の数,東広島市内の大学の数,東広島市にある大学の先生と学生の数についてクイズを行いました。子どもたちはタブレットを使って回答しました。県内には21の大学があり,その中でも東広島市には4つの大学があること,先生と学生は約1万8千人いることがわかりました。子どもたちは,広島県内では東広島市が2番目に大学が多いこと,先生と学生だけで約1万8千人がいて,さらにその家族を含めると,もっとたくさんの大学に関係する人が暮らしていることに驚いていました。
 
1時間目の中心的な課題は,「東広島市には,どうして大学が集まってきたのだろう?」でした。まず,地図や年表,グラフを用いて,東広島市にある4つの大学の位置と歴史,それに伴う人口の変化を確認しました。次に,1982年の空中写真と現在のドローン映像を用いて,広島大学周辺の土地利用を空から観察し,田や畑があったところに多くの建物ができていることを確認しました。その後,大学近くの西条下見にいる熊原准教授と中継を繋ぎ,現在の広島大学周辺の様子を地上から観察しました。学生用のアパート(住む)やスーパーマーケット(買う),ファストフード店(食べる),カラオケ(遊ぶ)など学生生活に必要な施設が集まった学生街ができている様子を確認しました。
 
次に,中心課題である「東広島市には,どうして大学が集まってきたのだろう?」に取り組みました。これまでの観察結果と副読本を活用し,東広島市に大学が集まる理由について予想しました。「人口が増えたから」「土地が広いから」「広島市から引っ越ししてきたから」「広い土地があり,人が少なく,建物も少なく,大きな研究や設備が整えられるから」などのように,昔の写真に注目して土地の広さを理由に挙げる学級もあれば,「市の面積がふえたから。二大プロジェクトでまちづくりが進められたから」「東広島市に住んでいる人が通うところがないので大学を作った。広い土地があったから。広島県の新しい発見が多く東広島市にあったから」「二大プロジェクトがあって大学に行きたい人が増えたから」などのように,副読本を参照して「賀茂学園都市構想」と「テクノポリス構想」に関連づけて予想した学級もありました。
 
2時間目では,1時間目の課題の解決から始まりました。「賀茂学園都市構想」と「テクノポリス」が東広島市のまちづくりの出発点であり,大学を東広島に招き集めることで町を元気にしようとしたこと,東広島市は大学のまわりに一緒に研究したい研究所や一緒に仕事をしたい工場や大学が集まり,さらにそこで働く人のための住宅団地が集まってできた「学園都市」であることを確認しました。
 
2時間目の中心的な課題は「大学は,私たちの生活とどんな関係があるのかな?」でした。事前のアンケートで,子どもたちは「大学生は勉強をしている人」というイメージがあることが確認されました。次に,3人の大学生についてインタビューをして,子どものイメージを検証してきました。多くの広島大学生は県外から来ていること,授業がない日は勉強以外にも趣味やサークル,アルバイトをしていること,アルバイト先で勤務している人はほとんどが学生であり,学生がいなければお店や塾を開けることができないことがわかりました。
その後「もしも大学が東広島になかったら…」という問いについて考えました。東広島市内の10の施設が書かれたカードを選び,もしも広島大学がなかったらその施設は「絶対にない」「たぶんない」「それでもある」と記された数直線上に位置付け,広島大学がない東広島市のようすを想像しました。子どもたちは,学生アパートや高美が丘小学校は大学がなければ「なかった」と想像する一方で,フジグランや吉川工業団地は大学がなくても「あった」のではないか,と想像しました。
想像をした後にブロックダイアグラムを用いて理由を説明しました。高美が丘小学校のカードを選んだ2つの学級は,「広島大学→人(学生・先生)が増えた→先生の家族→子供が増えた→高美が丘小学校」と説明したり,「広島大学→家やビルが増えた→スーパー,買う場所が増える→買う人・働く人が必要→人が集まる→高美が丘小学校」と表現したりしていました。
 
最後に熊原准教授が解説と学級への質問をしました。一見関係ないように見えても,このように図に表すことで,大学と東広島市の様々な施設の関係が見えてくること,どの学級もこれまでに学んだことを踏まえて考えることができていて素晴らしい,とまとめられました。
 
2時間を通して,「大学と市の関係」を視点に,東広島市の変化と大学との切っても切れない深い関係について学び(第1時),一見自分とは関係なさそうな大学も私たちの生活と直接的・間接的につながっていることに気づく(第2時)社会科らしい学習となりました。 

吉川小学校にて授業をする様子(草原教授)

クイズに回答する様子

ドローン映像を観察する様子

広島大学周辺からの中継の様子(熊原准教授)

吉川小学校での授業実施の様子

施設ができた理由を発表する様子

当日の板書の様子

子どもたちが考えた施設ができた理由

EVRIは,引き続きICTを活用した新しい地域学習のヴィジョンを提案し,それを教育関係機関と連携しながら企画・実施してまいります。

当日の様子はこちらをご覧ください。

プロジェクト全体についてはこちらをご覧ください。

【問い合わせ先】

広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI) 事務室

E-Mail:evri-info(AT)hiroshima-u.ac.jp
​※(AT)は@に置き換えてください


up