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【開催報告】【2022.02.05】広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」はEVRI Forum No.31 「EVRI-HU PELSTE 2022 Localizing Lesson Study: The Cases of America, Brazil and India」のシンポジウムを開催しました

広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,広島大学INEI学内委員会との共催で,2022年2月5日(土)に,第31回研究拠点創成フォーラム「EVRI-HU PELSTE 2022 Localizing Lesson Study: The Cases of America, Brazil and India」を開催しました。

PELSTE2022は,2024年以後に予定されているINEI年次総会・広島開催にむけて,広島大学教育学部が「平和教育」と「授業研究」の国際的な(東アジアの)拠点となるべく,研究交流のプラットフォームを提供することを目的としています。「授業研究」に焦点を当てたPELSTE2022では,三名の参加者や二名の指定討論者とともに,92名の参観者を迎えて,教師教育における授業研究の可能性を検討するとともに、授業研究のローカライゼーションに必要な要素を議論しました。

はじめに,EVRIセンター長の草原和博教授,司会の金鍾成准教授より,PELSTE2022の目的とプログラムが説明されました。 日本の授業研究(Jyugyou Kenkyuu)が現地のニーズや文脈によってローカライズされたものを海外の授業研究(Lesson Study)として見るのであれば、両者をまったく同じものとしてみなすことはできません。よって、日本の「Jyugyou Kenkyuu」と海外の「Lesson Study」は互いに何が学べるかという視点で本日の報告を聞くことの重要性がセミナーの参加者全体で確認されました。

次に,アグナルド・アロイオ氏(ブラジル・サンパウロ大学)からは、ブラジルにおける理科教員志望学生の授業研究プロジェクトと、ICT活用に関する小学校教員向けの授業研究プロジェクトに関する発表が行われました。PELSTE2021から得た授業研究に関する学びを活かし、自分が関わっている学部の授業や教員研修プログラムに適用を試みたアロイオ氏は、参加者が授業を観察することの重要性に気づいたことを一番の成果としてあげました。その気づきの裏には、互いが互いを教員として支えるコミュニティの形成があったと指摘し、授業研究が授業について気軽に語り合える場を形成することに寄与したと語りました。

次に,インディラ・ズブラマニアン氏(シンガポール・南洋理工大学)からは、自らが計画・運営したインドの現職教員の授業研究グループの事例を報告しました。PELSTE2021から得た授業研究に関する知見をインドの実践家とも共有したいと思ったズブラマニアン氏は、授業研究に興味を示す5人の実践家とともに授業研究グループを作りました。パンデミックによりオンラインで行われた授業研究は、一時間の数学の授業をともに作り、ともに観察し、ともに改善策を考える流れとなりました。授業研究に参加する前、参加中、参加後の三つの時点において参加者に授業研究に対する考えを調査した結果から、彼女は授業研究が参加者の授業観を柔軟なものにすること、授業に関する教育学的知識や授業内容に関する知識を深めることができたと報告しました。

次に,ケイシー・ロジャース氏(アメリカ・ウィスコンシン大学メディソン校)からは、自身が関わっている郊外地域の教員のための研修プログラムに授業研究を導入した事例が報告されました。郊外地域にいる教員は授業に関する悩みを語り合う仲間が少ないことに悩むことが珍しくないと語ったロージャス氏は、オンラインで行う授業研究がその解決策になりうると主張しました。現在進行中であるため、プロジェクトの結果までは発表されませんでしたが、参加者が授業研究をうまく理解するためにどのような工夫をしているかが報告されました。

アグナルド・アロイオ氏(ブラジル・サンパウロ大学)

インディラ・ズブラマニアン氏(シンガポール・南洋理工大学)

ケイシー・ロジャース氏(アメリカ・ウィスコンシン大学メディソン校)

以上の発表を受けて,指定討論者のキャサリン・ルイス先生(アメリカ・ミルズ大学)からは,授業研究が、内容の伝達に重きをおいた教員養成から授業観察・授業対話に重きをおいた教員養成・教員研修としての可能性、授業の専門家というアイデンティティを持ち互いを支え合える教員集団作りとしての可能性を提案させていただきました。なお、すべての授業研究がオンラインで行ったことにも注目し、オンラインで行われる授業研究の特徴とは何かを今後検討していく必要性も指摘していただきました。最後には、授業研究が本当の文脈でローカライズされ、なおかつ、ローカライズされた文脈においてインパクトを与えるためには、組織的な試みが必要であることも語っていただきました。

指定討論者のクリスティーン・リー先生(シンガポール・南洋理工大学)からは,どのような文脈で授業研究を行ったか、なぜ授業研究を扱ったか、授業研究の何に重点をおいていたか、授業研究のプロトコルは何だったか、という視点から三本の発表を比較・分析していただきました。その結果大きく以下の二つび質問を投げかけていただきました。一つ目、「あなたの事例で維持され続けられた授業研究のコアとなる特徴は何か、それはなぜか」。二つ目、「あなたの次回の授業研究実践では何を変えたいと考えるか」

キャサリン・ルイス氏(アメリカ・ミルズ大学)

クリスティーン・リー氏(シンガポール・南洋理工大学)

また,ウェビナーのQ&A機能を活用して行われた質疑応答では,「既存の学校のルーティンがあるなかで、授業研究をどのように適用したか」,「どのようなオンライン・プラットフォームを使って授業研究を行ったか」,「本日のセミナーのなかで議論された様々な課題をどのように克服することができるか」といった質問が出されました。授業研究は行われた文脈によって異なっていましたが、はやり授業研究の文化がない文脈で授業研究を導入することは容易な作業ではなかったと発表者たちは答えました。正規の居員養成課程や研修プログラムの場合は大きな問題はなかったが、そうではない場合は放課後や休日、休みを利用するなど構成員の合意を得て授業研究の時間を確保したと答えました。主に用いたオンライン・プラットフォームとしては、グーグル・クラス、ユーチューブ、グーグル・ミートなどを使用したと答えました。時間切れで最後の質問に答えることはできませんでしたが、各々の発表者、そして参加者が自分の文脈の課題を改めて見つけて考えることにし、次回のPELSTEで議論することにしました。

最後に開催大学学部長の松見法男先生より,閉会の言葉をいただき,盛会のうちに会が終了しました。

松見法男教授

草原和博教授(左)と金鍾成准教授(右)

当日の様子はこちらをご覧ください。

PELSTE2022プロジェクトについてはこちらをご覧ください。

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【問い合わせ先】

広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI) 事務室

E-Mail:evri-info(AT)hiroshima-u.ac.jp
​※(AT)は@に置き換えてください


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