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【開催報告】【2022.03.09】広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,東広島市広域交流型オンライン社会科地域学習(東広島市の特色)を実施しました

草原和博教授広島大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」拠点リーダー)は,2021年度から,東広島市教育委員会と連携して,市内複数の小学校をオンラインで結んだ広域交流型オンライン社会科地域学習を開始しました(プロジェクトリーダー:草原教授)。GIGAスクール構想の推進によって実現した子どもたちの「1人1台」端末と学校のICT環境を活用して,市内各地からの中継を交えながら,東広島市の地理・歴史・政治・経済・文化などについて対話的・双方向的に学びます。さらに,この学びを広島大学の教員と大学院生がコーディネートします。

本年度は,2021年6月の試行に基づいて,毎月1回2時間,テーマを決めて授業を行います。この企画が実現することで,小規模校と大規模校の子どもが,年間を通して,各地域のようすを比較したり交流したりしながら学びを深められるように工夫しています。
    
2022年3月9日,プロジェクトリーダー草原教授,広島大学の学生・大学院生らは,東広島市内小学校3校3学級(原,豊栄,風早)の4年生(51名)と,広島大学附属小学校の4年生(32名)が参加した,「東広島市の特色」をテーマとするオンライン授業を実施しました。

1時間目は,現行の社会科副読本『わたしたちの東広島市』の表紙を確認するところから始まりました。事前アンケートの結果,児童の多くは表紙の掲載写真8枚が,どこの・何を撮影した写真かについてよく認知していないことが分かりました。そこで児童とあらためて写真を丁寧に眺めるとともに,写真の選定理由を予想させました。その後,写真を選んだ当事者である東広島市教育委員会の長野氏に登場いただきました。長野氏は各写真の被写体について解説するとともに,「東広島市らしい写真」「9つのいろいろな町から選んだ」と説明がありました。参加校の児童には,表紙に載せたい写真があればぜひ提案してほしいとのコメントをいただきました。

これを受けて今回の学習課題は,「『わたしたちの東広島市』の表紙にぴったりなオススメ写真を選んで,提案しよう!」となりました。その直後,草原教授は「ため池」の写真が一番だ!と提案しました。子どもたちに草原教授の提案に納得できるかをアンケートしたところ,52%の児童は納得できる,32%は納得できないと答えました。

草原教授は「ため池」が東広島市「らしい」光景であると主張し,その根拠として以下の3つの理由を提示していきました。最初に,ため池の数を示すグラフを示した。広島県は全国で2番目にため池が多い県であり,広島県内では東広島市が最も多い市であることが分かりました。次に,東広島市内のため池の分布を示す地図を紹介しました。ため池は市内9つの町に偏りなく広がっていることが読み取れました。最後に,奥田大池周辺の土地利用を伝える中継動画と地形断面図をみせました。黒瀬川よりも土地が高いところで米作りや野菜づくりをするには,ため池と用水路の水が欠かせないことが見て取れました。なお,徳山市や和歌山市の平野部のようすも中継で眺めて,ため池に頼る賀茂台地との違いを確認しました。

以上のデータと観察結果を基づいて,東広島市「らしさ」の条件を再度考えました。その結果,①東広島市は「他のまちと比べて多い・目立つ」,②東広島市なら「どこにでもある」,③東広島市の人々のくらしと「結びついている」が条件となりうること,そして「ため池」はこれら3つの条件を満たしていることがわかりました。これで「ため池」は表紙にふさわしいと納得する児童もいれば,依然として釈然としないとした児童もいました。

2時間目は,(草原教授に対抗して)自分たちで表紙にふさわしい写真を選ぶ活動を行いました。1時間目に学んだ「らしさ」の3条件を踏まえて,この学習課題に取り組むことになりました。参加校からは,酒蔵,じゃがいも,オオサンショウウオ,ツツジ,松の木,牡蠣,びわ,池,大学,エコパーク,じゃぼん,ハート島などが提案されました。

話し合いの結果,「じゃがいも」(風早小),「エコパーク」(原小),「酒蔵」(豊栄小),「大学・学校」(附属小)の4つに絞り込まれ,これらが表紙にふさわしい理由を分担して発表することになりました。「酒蔵」を担当した豊栄小は,①東広島市に酒蔵は10ヶ所あって,県内の他の市と比べても多い,②西条・安芸津など市内のいろいろなところにある,③毎年酒まつりがある,お酒は毎日の生活の中で飲まれている,などの理由を挙げました。「大学・学校」を選んだ附属小は,①東広島市に4つも大学があり,1万人をこえる学生がいる(県内の他の市とくらべても多い),②学校は市内のどこにでもある,③大学・学校は毎日通うから日々の生活に結びついている,などの理由を述べました。

最後に附属小の子どもに,東広島市の3つの学校の提案についてコメントを求めました。代表の児童は,「酒蔵」の提案が良かったと述べ,その理由として「昔から酒づくりを行っている,(東広島市で生産が多い)米などの農業にも関わっている」と理由を述べました。教育委員会の長野氏は,各学校とも基準に基づいて写真を選ぶことができたこと,東広島市の外の視点から市内の特色を考える機会が得られたこと,そして米づくりと酒づくりの関係に気づくことができたこと,を高く評価されました。

2時間を通して,専門家の提案を手がかりに地域の特色を捉える基準を分析し(1時間目),その基準を活用して自分たちが捉える地域の特色を提案する,社会科らしい学習になりました。

風早小学校にて授業をする様子(草原教授)

表紙について解説する様子(長野氏)

奥田大池周辺から中継する様子(川本さん・佐藤さん)

ため池の利用について中継する様子(川上さん)

徳山市からの中継の様子(大坂さん)

和歌山市からの中継の様子(津田さん)

表紙の選定理由について検索する様子

表紙の選定理由について発表する様子

EVRIは,引き続きICTを活用した新しい地域学習のヴィジョンを提案し,それを教育関係機関と連携しながら企画・実施してまいります。

当日の様子はこちらをご覧ください。

プロジェクト全体についてはこちらをご覧ください。

【問い合わせ先】

広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI) 事務室

E-Mail:evri-info(AT)hiroshima-u.ac.jp
​※(AT)は@に置き換えてください


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