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【開催報告】【2022.06.19】定例オンラインセミナー講演会No.112「ポスト・コロナの学校教育を提起する「コロナから学校教育をリデザインする―広島県学校教員意識調査の結果から―」」を開催しました。

広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,2022年6月19日(日)に,第112回定例オンラインセミナー講演会「ポスト・コロナの学校教育を提起する「コロナから学校教育をリデザインする―広島県学校教員意識調査の結果から―」」を開催しました。学生・大学院生や学校教員を中心に118名の皆様にご参加いただきました。

「ポスト・コロナの学校教育を提起する」プロジェクトは,第1フェーズ~第3フェーズにおいて,「コロナと教育」に関する国内外の文献調査および「コロナと教育」に関する大規模アンケート調査を実施し,18回のセミナーを開催してきました。第3フェーズの研究成果として,『教育の未来デザイン―「コロナ」からこれからの教育を考える―』(溪水社,2022年6月)を刊行し,2022年度教育学部共同研究プロジェクト「地域課題に応える教育学研究の革新による学術知共創」の支援を受け,本セミナーが開催されました。

本セミナーでは,2021年11月にEVRIが広島県内の全学校を対象に実施した「広島県の学校における新型コロナウイルス感染症の影響調査」の回答結果のなかでも,コロナによって生じた問題を5件法で問うた24の質問項目および学校教育の展望にかかわる3の質問項目に関して報告が行われました。

司会の木下博義准教授(広島大学)と吉田成章准教授(広島大学)より会の趣旨が述べられ,草原和博教授(広島大学)より2年4ヶ月の「ポスト・コロナの学校教育を提起する」プロジェクトの概要が説明されました。パンデミック前をA期,パンデミック中をB期,そしてパンデミック後をC期としたとき,未だB期がこびりついているものの徐々にC期に突入しつつある現在,改めて2021年11月に集めた学校教員の声を捉えることの意義を確認しました。吉田成章准教授(広島大学)より本セミナーの趣旨が説明されるとともに,EVRIがコロナ下の学校教育とどのように向き合ってきたのか,というプロジェクトのあらましが説明されました。

趣旨説明をする草原教授

司会の木下准教授

司会の吉田准教授

次に,滝沢潤准教授尾川満宏准教授(広島大学),安藤和久さん,川本吉太郎さん,武島千明さん(広島大学大学院・博士課程後期) から教員意識アンケートの調査報告が行われました。報告では,「学校教育が持つ未来への可能性を教師自身がどう捉えているのか?」を問いとしたアンケートへの回答から,①小学校,公立,大規模校,大都市(広島市),ベテラン(16年以上の教員歴)を属性とする教員がコロナの影響をより大きな問題として考える傾向にあったこと,②多くの教師がコロナ「以前の学校に戻る」ことにも,「新たな学校になる」ことにも,明確な指針を見いだせていないこと,③他校種と比較し,高等学校ではコロナの影響と学校リデザイン意識に一定の関連性が見られたこと,の3点が浮かび上がったことが共有されました。

アンケートの全体像を説明する滝沢准教授

アンケートの分析結果を説明する尾川准教授

調査結果の概要を報告する川本さん

調査の回答項目について説明する安藤さん

関連する先行調査について説明する武島さん

以上の報告を受けて,3つの指定討論が行われました。
まず,EVRIが実施した3回のアンケートすべてにかかわった森田愛子教授(広島大学)が,「第1回・第2回調査との比較」と題した指定討論を行いました。森田教授は,学校教員のかかえる困難感が3回のアンケートの間でどのように変遷していったのかを,学校休業と学校再開という社会的な背景をふまえて整理しました。そのうえで,現状維持バイアスの概念を用いながら,「学校教員らは,メリットが大きくなければ「学校リデザイン」というストレスを伴い得る変化に向かわないのではないか」と,学校リデザインを推し進めるうえで直面する可能性のある問題を提起されました。

次に,杉原満治氏(広島県立教育センター)が指定討論を行いました。杉原氏は,2020年2月の学校休業以降,校長・教育行政など様々な立場からコロナと教育に向かい合ったご自身の経験,さらには広島県立教育センターに着任後,広島県でのコロナ下の教員研修をどのように推し進めていったのか,に関してお話されました。そのうえで,「子どもたちがすでにタブレットなどの端末を持っており,新学習指導要領の実施がなされているなかで,何を『以前の学校』とし,何を『リデザイン』とするのか」という問いを全体に投げかけました。

最後に,辻野けんま氏(大阪公立大学)が「広島県学校教員意識調査によせて」と題した指定討論を行いました。辻野氏は,ご自身が新型コロナウイルスの陽性者となった経験や,海外におけるコロナ対応に関する調査で感じたことをふまえたうえで,広島県での調査結果について①学校種による異同の要因をどう見るか?,②学校レベルで現象化したが実は教育行政の影響と考えられるものはないか?,③学校をめぐる多様な意思(学校/教職員,地方自治体,国,研究者,保護者,地域住民,そして子どもの意思)の交錯から新たな学校像をどう構想するのか?という3つの問題提起をしました。

何を『以前の学校』とし,何を『リデザイン』とするのかについて問う杉原氏

様々な要因が交錯する中で新たな学校像をどう構想するのかを問う辻野氏

学校リデザインに向かう難しさを指摘する森田教授

対面やオンラインでの参加者を含めたオープンディスカッションでは,「これからの学校をリデザインするのは誰なのか,また誰であるべきなのか」といった質問や「学校にかかわる様々なステークホルダーのリデザイン志向が必ずしも一致するとは限らないのではないか」,「コロナは学校が全日制であることの重要性を問うたのではないか」といった意見も出されました。このような質問や意見をとおして,本セミナーのタイトルにもある「学校教育のリデザイン」を私たちがどのように定義し,検討していくべきなのか,という点への議論がいっそう深まりました。

総括をする丸山教授

最後に,丸山恭司教授(広島大学)によって,コロナ「から」学校での危機管理やオンライン活用などを考えることができている現状が整理され,コロナによる経験を昇華していくという肯定的な視点の提示をもって,今回のセミナーが総括されました。

今後もEVRIでは,学校教育のリデザインから教育そのもののあり方を考究することをテーマに,引き続き検討してまいります。

当日の様子はこちらをご覧ください。

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【問い合わせ先】

広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI) 事務室

E-Mail:evri-info(AT)hiroshima-u.ac.jp
​※(AT)は@に置き換えてください


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