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【広域交流型オンライン学習】韓国で「ことばとグローバル化」をテーマとする遠隔授業を実施しました(2024年11月20日)

広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一環として,「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校(通称,NICE)」プロジェクトに取り組んでいます。 

2024年11月20日,東広島市内小学校4校9学級(東西条小学校5年,中黒瀬小学校3年,福富小学校3・4年,三津小学校5年)の児童(210名)と広島市立基町小学校5年の児童(18名),スペシャルサポートルーム,フレンドスペース,スクールSの児童生徒が参加して,「ことばとグローバル化」をテーマとする遠隔授業を実施しました。今回は,「『外国の言葉が上手』とはどういうこと?」と題して,「正確性」「適切性」の視点から外国語でのコミュニケーションについて理解を深めたり,異なる言語や文化への寛容性を育んだりすることを目指しました。授業全体の進行を南浦涼介准教授が,子どもや教室の指名,アンケート結果の解説を草原和博教授が務めました。

掛け合いをしながら授業を行う南浦涼介准教授と草原和博教授

外国の言葉での放送,どうしてがんばれるの?

本時の授業は,子どもが担任の先生やALTの先生,支援学生に「外国語で何語を話せますか?自信はどうですか?」とインタビューすることから始めました。ある学級では,担任の先生は英語に少し自信があること,ALTの先生は日本語に自信があってフランス語は少し自信があることを報告しました。また,ある市民の方は英語やインド語,フランス語を話せるけど苦手だということを教えてくれました。子どもは,多様な外国語を話す大人がいること,しかし必ずしも自信があるとは限らないことに気づきました。 

ここで,子どもたちに英語を話すのに自信があるか,アンケートを取りました。アンケートの結果は,「自信がある」6.5%,「少し自信がある」27.7%,「あまり自信がない」43.7%,「自信がない」22.1%でした。少し自信がある子どももいるけれど,少し自信がない子どもが多いということがわかりました。 

今回の参加学級には事前アンケートで日本語・英語以外の言葉を話せるか聞いていました。アンケートの結果を見ると,基町小学校は,フィリピン語やネパール語,中国語など日本語・英語以外の言葉を話せる人がたくさんいます。多くの学級とは異なる,多様な言葉を話す友だちが多くいる学級もあることが共有されました。 

ここで草原和博教授から1時間目のめあて「外国語の話し上手になろう!」が提示されました。

インタビュー結果をみんなに報告!

市民の方にも聞いてみた!

授業は大きく分けて2つのパートで展開されました。

 授業の前半部では,新幹線の外国語アナウンスについて考察することを通して,「外国語の話し上手」とはどういうことなのか考えました。まず子どもには,新幹線で流れる2つの英語アナウンスを聞いてもらいます。1つはたどたどしいけれどもその場で話す車掌さんの声,もう1つはすらすらと話すネイティブの録音の声です。 

ここで,新幹線の外国語アナウンスは録音と車掌さんの声のどちらがよいと思うか,アンケートを取りました。アンケートの結果,車掌さんの声派が17.6%,録音派が53.7%,どちらでもよい派が28.7%でした。理由を聞いてみると,「録音の方がはっきりと聞こえるので録音の方がよい」「車掌さんの声ははっきり聞こえないから録音の方がよい」「車掌さんの方が,気持ちがこもっているから車掌さんの方がよい」と言いました。 

次に,JRのベテランの車掌さんが「英語力向上委員会」で英語の特訓をしている動画を見せます。そして,ネイティブの録音に加えて,わざわざ車掌さんによるアナウンスを加えた理由を考えてもらいます。子どもからは,車掌さんの声は「緊急時に車掌さんと話せた方がよい」「親近感があるから」「安上り」といった意見を出しました。ここで,前半のまとめとして南浦准教授が,外国語の「話し上手」には,①すらすらだから上手と,②たどたどしいけど相手を想って上手,の2つの意味がありそうだとまとめ,実際どちらがよいのだろうか…とさらなる考察を促しました。

録音派が半数以上だ…!

車掌さんも外国の言葉を学んでいる!

授業の後半部では, ALTの先生や外国から来た友だちが外国語を話すときの気持ちについて考察することを通して,「外国語の聞き上手」とはどういうことか考えました。まず,ALTの先生が日本語を話すことについて語っている動画を見てもらいます。ALTの先生は「外国人と日本語で話すときよりも,日本人と日本語で話すときのほうが怖い」と語ります。南浦准教授がなぜだろうかと問うと,子どもは「ちゃんと伝わっているか不安だから」「どうすればいいかわからないから」と答えました。

続いて,基町小学校の外国から日本に来たばかりの子どもが下校放送をしている動画を視聴してもらいます。東広島市の子どもたちは,自分たちと年の近い友だちが外国語で下校放送をしていることを知って,かなり驚いている様子でした。実際に下校放送をした子どもも教室でこの授業を受けていたので,放送のときの気持ちを聞いてみると,「恥ずかしい気持ち」「ドキドキする」と教えてくれました。 

ここで,南浦准教授が,「緊張するけれど頑張れるのはどうしてだろう?」と問いました。東広島市の子どもからは「笑われないから」「見守ってくれているから」という意見が出ました。 

ここで基町小学校の校長先生に,なぜこういうことを始めたのか,なぜ頑張れるのか,理由を尋ねました。校長先生は,基町小学校では「日本語が得意じゃない子どもたちがたくさんいるので,みんなでいろいろな仕事をするのは当たり前」「日本語が上手でないことも当たり前」と説明してくださりました。外国から来たばかりの子どもが放送をしている動画から,当たり前の場をつくる聞く側の姿勢も大事だということに気づきました。 

そして,これまでの学習を踏まえ,改めて新幹線の外国語放送についてのアンケートを行います。アンケートの結果は,車掌さんの声派が46.6%,録音派が9.1%,どちらでもよい派が44.3%でした。車掌さんの声派・どちらでもよい派が増え,録音派が減りました。このように,外国語が上手ということについて,考えに変化が生じたようです。

元気に挙手をする子どもたち

ALTの先生にとっては日本人と話すときが不安…

基町小の下校放送をしていた本人が登場!

基町小の校長先生に下校放送の裏側を質問!

終結部では,外国語でコミュニケーションをとるときに大切なことを標語で表してもらいました。「外国語の話し上手」もしくは「聞き上手」の条件を表す標語を,各学級に分担して作ってもらいました。標語としては,以下のものが提案されました。 

<話し上手> 
「間違えても気にしない。スラスラと心がこもっていることである。」
「だれにでもききやすいように,あいてのことを考えて気もちをつたえる。」 
「ほかの人のことを考え,がんばれる人!」
「気持ちがこもっていること。親近感がある。リードしてくれる。聞きやすく話している。がんばっていること。自信をもって話す」 
「間違えても気にしない。スラスラと心がこもっていることである。」


<聞き上手>
「話す人のことを思いやることである」
「助けてあげてゆう気をあげる人だ!」
「しんけんに ケラケラ笑わず 最後まで」
「失敗しても大じょうぶ みんな友だちだー!」


子どもたちが作ってくれた標語を踏まえ,草原和博教授は「相手のことを思いやりながら話すことも大事だし,分かりやすくすらすらと話すことも大事」とまとめました。また,南浦涼介准教授は,相手とつながって話す・聞く(コミュニケーションする)ことの大切さを述べました。

車掌さんの声派とどちらも大事派が増えた!

友だちと協力して標語づくり!

本授業を通して,「外国の言葉」を話すとはどういうことかについて学ぶことができました。特に,外国から日本に来たばかりで放送委員を務める同年代の友だちとの交流は,話す姿勢・聞く姿勢を問い直すきっかけとなったようです。引き続きNICEプロジェクトは,様々な経験や文化をもつ人々をつなげることで,公共的な課題を探究する授業を提案してまいります。

当日の様子はこちらをご覧ください。
プロジェクト全体についてはこちらをご覧ください。

【問い合わせ先】

広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI) 事務室

E-Mail:evri-info(AT)hiroshima-u.ac.jp
​※(AT)は@に置き換えてください


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