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【広域交流型オンライン学習】「事故や事件からくらしを守る」をテーマとする遠隔授業を実施しました(2024年12月11日)

広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は,内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一環として,「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校(通称,NICE)」プロジェクトに取り組んでいます。 

2024年12月11日,東広島市内小学校8校19学級(御薗宇小学校,河内小学校,寺西小学校,造賀小学校,高美が丘小学校,高屋西小学校,郷田小学校,風早小学校)の児童(501名)と,スペシャルサポートルーム,フレンドスペース,スクールSの児童生徒が参加して,「事故や事件からまちを守る」をテーマとする遠隔授業を実施しました。今回は,「交番や駐在所の数は,このままでよいか!?」と題して,「公正」「効率」の視点から警察の施設配置を提案できることを目指しました。授業全体の進行を草原和博教授が務めました。

学生スタッフが授業の機器操作を支援!

地図で近くの交番の位置を確認だ!

本時の授業は,拾ったお財布を届ける最寄りの交番や駐在所を調べることから始めました。子どもたちは地図を見て,学校の近くにある交番や駐在所を探します。また,自分たちの町にある交番や駐在所の数や位置を確認しました。 

ここで,警察署・交番・駐在所にまつわる○×クイズを3問出題しました。 

1.交番のおまわりさんは,1日中24時間交代で働いている
2.駐在所のおまわりさんは,家族と一緒に駐在所でくらしている
3.豊栄で大きな事件の時は,東広島警察署から応援に来てくれる 

子どもたちがクイズに答えると,警察署や交番,駐在所から警察官の方が中継で答えを教えてくれました。正解は3問とも○でした。答え合わせに際しては,交番や駐在所で働くおまわりさんの姿や声を中継で見たり・聞いたりすることで,交番や駐在所の働き方や役割を確認できました。

続いて,交番や駐在所の分布図を見て,「変だなあ」「おかしいなあ」と思うことはないか問いました。地図に半径4㎞の透明な円を当てながら,気になることを探します。子どもたちからは,「真ん中に集まっている」「安芸津町と高屋町には交番が1つしかないけど,河内は交番と駐在所が1つずつある」といった答えが出ました。このように,子どもたちは交番や駐在所が集まっている所(ギューギュー)とまばらな所(スカスカ)があることに気づきました。 

ここで,交番や駐在所が集まっている所とまばらな所があることは,当たり前と思うか,それとも納得できないか,アンケートを取りました。アンケートの結果は,「当たり前だ」派が51.5%,「納得できない」派が48.5%で,ほぼ半々に意見が割れました。さらに,授業に参加した市民の方々のアンケート結果も見てみると,「当たり前だ」派が100%で,子どもたちは驚いていました。交番や駐在所の分布について多様な意見があることを知ったところで,草原教授から本日のめあて「私たちの市の交番や駐在所は,このままでよいか?」が提示されました。

まるぅ~!

「正解は○です」と教えてくれた警察署の方

交番から生中継!

今からパトロールに行くそうです!

授業は大きく分けて2つのパートで展開されました。 

授業の前半部では,交番や駐在所の数が町によって違う理由を探究しました。 ここでは,「事件の数」「人口」「交通(道路や駅)」の3つの資料を学級に割り振って調べてもらいました。学級ごとに異なる資料が配布され,担任教師と子どもたちが資料をもとに理由を探ります。事件の数グループからは,「西条町に交番が多い理由は事件が多いから」という意見を出してくれました。人口グループからは,「高屋町の方が,志和町や河内町より人口が多いけど,交番や駐在所が少ない」という気づきを共有してくれました。そして,交通グループからは,「道が多いと事故がよく起こるから,八本松や西条に交番や駐在所がある」という仮説を言ってくれました。これらの発表から, 

・事件の数が多いところほど,交番や駐在所が多い
・人口が多いところほど,交番や駐在所が多い(ただし高屋町を除く!)
・交通の便がよいところほど,交番や駐在所が多い 

こういうことが確認されました。 

ここで,警察署の人に子どもたちの仮説にコメントをいただきました。警察署の方の話では概ね合っているとしたうえで,「高屋町には交番が1つしかないけど,隣町の交番と助け合っているので大丈夫」「たくさんあった駐在所が交番に変わり,お巡りさんがずっといるので安全になった」「事件の数が多いところや,人口が増えていきそうなところに新しく交番ができた」「その1つが広大前交番」などの解説をしてくださりました。このように授業の前半部では,資料や警察官の方の話から,地域の安全のために交番の数が増えてきたり,交番や駐在所が工夫して配置されたりしていることに気づくことができました。 

授業の後半部では,現行の交番や駐在所(の数や立地)をどうしたらよいかを考えることにしました。まず,市内の交番や駐在所の数はちょうどよいか,もっと減らすべきか,あるいはもっと増やすべきかアンケートを取りました。結果は,「ちょうどよい」派が55.1%,「もっと減らすべき」派が6%,「もっと増やすべき」派が38.9%でした。ここでも,授業に参加した大人の意見を見てみると,「ちょうどよい」派が66.7%,「もっと減らすべき」派が0%,「もっと増やすべき」派が333.3%でした。全体としてみると,「もっと減らすべき」派が少ないことが分かりました。 

しかし,ここで草原教授は,2024年1月~3月に起きた事件の数が0件という理由で,志和堀駐在所か豊栄駐在所を減らすべきだ,と提案しました。さらに,子どもたちに草原教授の提案に対して賛成か反対かを問いました。子どもたちの意見をスプレッドシートに集約したところ,1つの学級を除いて,ほとんどの学級で「反対」派が多数となりましたが,「賛成」派も少数ながらもいました。賛成・反対の理由を問うと,賛成派の理由には「事件の数が少ない」「近くの交番や駐在所から応援にいけばよい」といったものがありました。一方,反対派の理由には,「1~3月は0だったけど,それ以外は5件起きているから結局必要」「近くに交番がないから」といったものがありました。反対派の方からたくさんの理由が提出されましたが,どちらの立場からも説得的な理由が示されていました。 

次に,草原教授は,交番や駐在所を増やすならどこがいいか,それはなぜか?と問いました。子どもたちは,授業の前半で読み解いた地図や資料をもう一度眺めながら,各学級で答えをまとめてGoogleスライドに入力していきました。例えば,ある学級では,「東広島の北の方に交番を作りたい。名付けて「東広島北交番!」理由は,豊栄町・志和町・福富町に交番がなく,24時間対応ができるように東広島の北の方に交番をつくる。道路に面しているのもいい。」とまとめました。また,ある学級の議論をAIで分析してみたところ,「安芸津町に増やすべき」「高屋町に増やすべき」「人口の多い場所に増やすべき」など意見が分かれていることも分かりました。

タブレット端末でアンケートに回答するよ!

交番を減らすべき派が少ないなあ

駐在所を減らすべきか?みんなでアンケート結果を確認だ!

なぜ減らさない方がいいのか,友だちに説明中!

本時の終わりにあたって,地域の防犯連合会の宮川さんに,子どもの発表や提案について感想を聞きました。「犯罪や事件,事故に敏感なんだと分かった」「交番があるからと言って安全というわけではない」「『いかのおすし』を心がけて,自分の身を自分で守ることも大切」と言いました。そして最後に草原教授は,「(スカスカの所に交番や駐在所を増やすだけでなく)ギューギューの所に交番や駐在所をもっとつくるという考え方もあるね」「交番や駐在所の地図を分布に注目して眺めてほしい」とまとめました。

東広島市の北の方に交番を作りたい!

地域の安全のために活動している宮川さんからのアドバイス!

本授業を通して,市民の安心安全の保障という公共的な課題を取り上げ,安心安全を実現するための視点(隙間がないようにバランスよく(公正)VSあぶない所に重点的に(効率))を学ぶことができました。実際に,他の学級の見方を聞いたとき「ああ,そうかあ!」と意見をこぼしたり,学級と学級の間や子どもと大人の間で意見に相違が見られたときに盛り上がったりする場面が,随所で見られました。引き続きNICEプロジェクトは,公共的な課題について様々な意見が出会う空間を生み出す授業を提案してまいります。

当日の様子はこちらをご覧ください。
プロジェクト全体についてはこちらをご覧ください。

【問い合わせ先】

広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI) 事務室

E-Mail:evri-info(AT)hiroshima-u.ac.jp
​※(AT)は@に置き換えてください


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