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【開催報告】【2025.9.13】定例オンラインセミナー講演会No.184「避難民を迎える教育の現場から──ポーランドの実践に学ぶ、教師の役割と育成 REFUGEES, MIGRATION, AND TEACHER EDUCATION」を開催しました

広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は、2025年9月13日(土)に定例オンラインセミナー講演会No.184「避難民を迎える教育の現場から──ポーランドの実践に学ぶ、教師の役割と育成 REFUGEES, MIGRATION, AND TEACHER EDUCATION」を開催し、大学院生や研究者を中心に42名の方々にご参加いただきました。
セミナーは、川口広美准教授(広島大学)が司会を務め、冒頭で趣旨の説明が行われました。本セミナーでは、ウクライナからの避難民を最大規模で受け入れているポーランドの学校現場に注目し、移民や難民の子どもたちが安心して学べる環境、孤立せず支援を受けられる環境、新しい言語や文化を学ぶための支援が得られる環境を整える教師の役割の重要性が紹介されました。多文化社会の進展は教育の在り方に大きな影響を与えており、日本でも南米・アジア出身やウクライナ避難民の子どもたちが増える中、ポーランドの事例を参考に日本の教育現場を考えることが重要であると呼びかけられました。 

趣旨説明をする川口准教授

講演ではまず、Marcin Szplit氏(Jan Kochanowski University)がポーランドの社会的・歴史的背景について説明し、その後、Agnieszka Szplit氏(同大学)が「避難民を迎える教育実践と教師育成」について講演しました。Szplit氏は、ポーランドの教育制度や法的基盤を示しつつ、ウクライナからの避難児童を受け入れる教育実践を整理しました。義務教育における外国籍児童の受け入れ方針や統合的教育モデルの特徴、国の「Solidarity with Ukraine」プログラムや教育オフィスによる支援など、多層的なアプローチが紹介されました。具体例として、グダンスク医科大学が避難学生や研究者を受け入れ、学習継続や心理的支援を提供したこと、市民レベルではNOMADAのような団体が母親への直接支援や地域でのワークショップを行うなど、多様な草の根活動が行われていることも報告されました。さらに、難民の子どもたちが求める安心感、仲間や教師からの受け入れ、孤立しない支援、新しい言語や文化を学ぶ手助けといった具体的ニーズが示され、教育現場で直面する課題と、それに対応する制度的・心理社会的支援の必要性が強調されました。大学や地域、教育実践、心理的サポート、市民活動を組み合わせた総合的な対応の事例は、理論と実践をつなぐ内容として参加者に深い理解をもたらしました。

講演するAgnieszka Szplit氏

講演するMarcin Szplit氏

講演後にはフロアを交えたディスカッションが行われ、活発な質疑応答が展開されました。参加者からは、学校現場での受け入れの実態について、避難児童の在籍割合や教師の負担感、補助教員や母語支援の制度の有無が質問されました。また、社会の認識や長期的方針に関する関心も寄せられ、ポーランドにおける排外主義的な言説の有無や戦争の初期と現在での社会的受け止めの変化、「一時的受け入れ」か「共生」を前提とするかといった方向性について議論が行われました。さらに、日本への示唆として、将来的な難民の流入に備え、教育現場が事前に取り組むべき課題が提起されました。具体的には、外国につながる子どもを支える体制が十分でない現状を踏まえ、教師を支援する仕組みや地域社会との連携の構築が重要であるとの意見が出されました。

質問に答える登壇者

ディスカッションの様子

最後に間瀬センター長より、日本の教育に向けた示唆が述べられ、本セミナーは終了しました。ポーランドの事例を通じて、多文化教育における教師の役割や制度・地域・市民との協働の重要性が具体的に示され、参加者に深い学びをもたらしました。EVRIとしては、今後も多文化共生教育や難民教育に関する知見を国内外の事例から学び、日本の教育現場への応用を進めるとともに、教師の育成や地域連携のモデル構築を目指し、教育実践と研究の橋渡しを継続していきます。

挨拶をする間瀬茂夫教授

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【問い合わせ先】

広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI) 事務室

E-Mail:evri-info(AT)hiroshima-u.ac.jp
​※(AT)は@に置き換えてください


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