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【開催報告】【2025.10.20】定例オンラインセミナー講演会No.186「若手研究者による若手研究者のための授業研究一考察」を開催しました

広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は、2025年10月20日(月)に、定例オンラインセミナー講演会No.186「若手研究者による若手研究者のための授業研究一考察」を開催しました。大学院生や研究者を中心に38名の皆様にご参加いただきました。
はじめに、司会の明月さん(広島大学・院生) と藤原由佳特任助教(広島大学)により、本セミナーの趣旨が説明されました。本セミナーは、2025年11月9日(日)に開催予定であるWALS 2025: PhD & Early Career Researchers Dayのプレセミナーとして位置づきます。英語で開催される本番の会に先立って、本セミナーでは、日本の若手研究者によって、「授業研究とは何か?」という問いについて日本の文脈から議論を深めるという趣旨が確認されました。

趣旨を説明する明さん

趣旨を説明する藤原特任助教

次に、有井優太氏(新潟大学)より、話題提供がなされました。有井氏は、自身が授業研究に外部助言者として参与している経験をもとに、「授業研究とは何か?」という問いへの応答を目指しました。具体的には、まず、平素より授業研究の場で用いている資料などを示しながら、「子どもの学びから学ぶこと」を目指した授業研究について、具体例をもとに示しました。その後、有井講師自身の研究テーマでもある、授業研究に関するリーダーシップ論とも関連づけながら、学校づくりの文脈に応じた授業研究でのかかわりについて論じました。

発表する有井氏

次に、武島千明特命助教(広島大学)より、話題提供がなされました。武島特命助教は、音楽教育研究者としての自身の立場にもとづき、教科教育の研究者による授業研究の特徴について説明しました。外部助言者としての経験をもつ、音楽教育研究者A氏による授業研究の事例を挙げながら、①教科教育学では、一般教育方法学的な「教授学三角形(子ども・教師・教材)」に加え、目標・内容・方法・評価による「教科教育学四角形」(中原、2017)の観点が定着しており、授業研究の視点としても活用されていること、②教科教育研究者がフィールドエントリーをする際には、特定の内容(国語、音楽、体育…など)を一人称に背負うことがほとんどであるため、学校との関係構築に際して、「求められる役割」を意識してふるまわざるを得ないこと、の2点を主張しました。

発表する武島特命助教

次に、田野茜さん(京都大学・院生)により、論点提示がなされました。田野さんは、教室内のすべての参加者(教師+学習者)が「自分らしくいられる」場となるような教育を志向し、教師(や授業研究者)の個性を重視する立場から、以下の4つの観点で整理・問いかけを行いました。①授業研究は、授業者の技術や授業の改善のみならず参加者や学校のためにも寄与する。将来的に、助言者として関わる若手研究者にとって、授業研究に参加することは、授業を見る目を養う場ともなり得る。では、授業研究は誰のための営みなのだろうか。若手研究者にとって授業研究は、どのように価値ある営みとなるのだろうか(単なる業績づくりやトレーニングにとどまるものなのか)。②授業研究のなかで、若手研究者はどのような立場やスタンスをとり得るのだろうか。関連して、それぞれの話題提供者は、「授業者」「外部助言者」「参観者」のうち、どの立場から授業を語っていたのだろうか。③若手研究者は自身の個性や持ち味をもとに、授業をどのように捉え得るのか。④話題提供者らは、授業をどのように記録し、どのように見とるのか。とりわけ、授業研究のなかで、子どもたちの「学び」など、評価を行うのは誰だと考えているのか。

論点提示を行う田野さん

田野さんの問いかけをふまえ、フロアを交えたディスカッションが行われました。 ディスカッションでは、「授業研究で焦点化する子どもは、どのように抽出するのか。また、授業研究のなかで、その子どもの経験はどのように位置づくのか。」「若手研究者には、授業研究に関わる(呼んでもらえる)機会が少ないという課題があるのではないか。その場合、授業研究に継続的なかかわりをもつことに困難を抱える可能性がある。単発的なかかわりのなかでどのようにふるまうべきか。」「学校側に課されたミッションと、子どもの学びの保証が対立してしまうときには、どうすればよいと考えるか。」という質疑がなされました。また、自身の授業研究の取り組みを共有してくださった参加者もいました。これらの問いかけやコメントには、有井氏と武島特命助教を中心に、応答がなされました。

ディスカッションの様子

最後に、明さんと藤原特任助教より挨拶がなされ、本セミナーは締めくくられました。
一若手研究者として授業研究にかかわる自身をどのように意味づけるか、という一人称的視点に関する議論が深まったという、本セミナーの意義が確認されました

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【問い合わせ先】

広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI) 事務室

E-Mail:evri-info(AT)hiroshima-u.ac.jp
​※(AT)は@に置き換えてください


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