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【広域交流・オンライン学習】【2025.9.10】「自然災害からくらしを守る―家や学校でのそなえと訓練だけで命を守れるか―」をテーマとする遠隔授業を実施しました

広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一環として、「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校」プロジェクトに取り組んでいます。

概要

 2025年9月10日、広島県内小学校12校22学級(三永小学校、原小学校、八本松小学校、高屋東小学校、高屋西小学校、上黒瀬小学校、福富小学校、豊栄小学校、河内小学校、入野小学校、龍王小学校、上下南小学校、平良小学校)と、北海道内小学校4校5学級(清明小学校、霧多布小学校、奥尻小学校、青苗小学校)、鹿児島県内小学校9校10学級(桜峰小学校、桜洲小学校、東桜島小学校、前之浜小学校、亀津小学校、亀徳小学校、母間小学校、尾母小学校、花徳小学校)、SSR、フレンドスペース、スクール“S”、島われんきゃハウスの2~5年生、全833名が参加し、遠隔授業を実施しました。授業の主題は「自然災害からくらしを守る―家や学校でのそなえと訓練だけで命を守れるか―」。本授業では、広島・北海道・鹿児島の学校がつながり、防災の可能性と限界を考えました。授業の全体進行は広島大学の草原和博教授が担当し、各教室の進行は学級担任が担当しました。

今回の授業は防災について!

防災施設はだれが作ったの?あなたの考えを教えて!

導入:避難訓練だけでそなえは十分…?

 授業の冒頭では、事前アンケートをもとに、児童たちが備えている災害の種類を確認しました。多くの学校が地震への備えを行う一方で、津波や噴火に備えた訓練をしている学校もあり、地域ごとの違いが浮かび上がりました。
 その後、いくつかの学校から避難訓練の様子が紹介されました。桜峰小(鹿児島県)では、桜島の噴火に備え、ヘルメットを被って避難港に逃げる訓練を実施。霧多布小(北海道)では、津波に備え、月に1回「役場ランニング」として30メートルの高台に駆け上がる訓練を実施。亀徳小(鹿児島県)では、津波に備え、標高71メートルの高台まで月に2回の訓練を重ね、「体が覚えるまで」繰り返していると報告がありました。こうした取組に、他地域の子どもたちは避難場所の高さや訓練の頻度に驚きの声を上げていました。
 各学校が、それぞれの地域の災害に応じた避難訓練を真剣に行っていることが伝わったところで、「一人ひとりが真剣に避難訓練していたら、備えは十分か?」という問いについてアンケートを実施しました。その結果、「十分だ」が23.4%、「不十分だ」が76.6%となり、「自然は何が起こるか分からないから訓練だけでは不十分」といった意見が多く聞かれました。こうして、訓練だけでは命を守るには不十分だと多くの児童が感じたことを受けて、学習課題「災害から私たちの命を守るためには、(避難訓練に加えて)どのようなそなえが大事か?」が提示されました。

津波避難訓練と体力づくりをかねた役場ランニングを発表!

役場ランニングの様子を動画で紹介してくれました!

桜島付近の桜峰小は噴火へのそなえを発表!

個人の避難訓練だけでは不十分?!

展開1:社会で取り組む災害へのそなえ

 授業の前半では、避難訓練に加えて、社会全体としてどのような備えがあるのかに焦点を当てました。子どもたちは9枚の写真をもとに、防災施設を「知らせる系(防災ラジオ・スピーカー・噴煙カメラ)」「せきとめ系(砂防ダム・水門・堰堤)」「避難系(防災倉庫・津波救命艇・退避壕)」の3つに分類し、それぞれの役割について考えました。
 分類活動の後、草原教授から「これらの施設は、誰が何のために作ったのか?」という問いが投げかけられ、子どもたちは「国や市が税金で作ったのでは?」「被災者や地域の人かも」などと意見を出し合いました。そこで、専門家の熊原康博教授が登場し、国や県・市といった公的機関が税金を使って個人では作れない防災施設を整備していることを解説しました。さらに、東広島市高屋町から中継で、川の水位を監視するカメラの実例を紹介してくれました。実際に防災インフラを目の当たりにすることで、子どもたちは災害対策が個人だけでなく、社会全体で行われていることを具体的に理解する機会となりました。

防災施設をみんなでグルーピング中!

リアルタイムで河川監視カメラにうつる熊原先生

展開2:地域で語り継ぐ災害へのそなえ

 授業の後半では、災害の記憶を後世に伝える地域の取り組みに注目しました。まず、東日本大震災で被災した宮城県仙台市の「震災遺構荒浜小学校」からの中継を通じて、津波被害の大きさや、避難行動によって多くの命が守られた事実を学びました。子どもたちは、壊れた校舎が今もそのまま残されている理由として、「地震や津波の恐ろしさを伝えたい」「お墓の代わりになっているのではないか」といった意見を挙げ、未来に記憶を継承する意義を考えました。
 続いて広島県東広島市の「小寺池」からの中継では、昭和初期の台風と大雨による土石流災害の跡地に建てられた石碑をオンラインで見学しました。震災遺構荒浜小学校の事例と合わせて、子どもたちは「未来に同じ被害を与えないため」といった碑の意義を共有しました。さらに、北海道や鹿児島の参加校からも、津波を記憶する時空翔(北海道奥尻町)や母子像(北海道浜中町)といった記念碑が校庭や地域に存在することが紹介されました。子どもたちは中継を通して、災害の記憶を遺すことが、次世代の防災意識を育てる役割を果たしていることを学びました。

仙台市の震災遺構から生中継!

震災遺構の中から担当者が解説!

東広島市の「山津波」を伝える碑からも中継!

土砂崩れの様子をドローン映像で確認!

終結:災害から命を守るために大事なこと

 授業の終盤では、これまで学んだ個人・社会・地域の防災の取り組みをふまえて、「命を守るために本当に大事なことは何か」を考える時間が設けられました。児童たちは、①地域で災害の記憶を語り継ぐ、②国や県・市が地域を守る施設を作る、③一人ひとりが準備・行動する、という三つの選択肢について、学級ごとに話し合い、重要だと思う順にランキングを作成しました。
 結果は、「一人ひとりが準備する・行動する」を第1位に選ぶところが多数でした。話し合いでは、「どんなに施設を備えたり記憶を語り継いでも,そもそも避難の仕方がわからなかったら意味がない」といった意見が出ました。一方で、「地域で災害の記憶を語り継ぐ」を選んだ学級も少なくなく、「未来の人がこうすればいいんだという指針を示すことが大切」という考えも示されました。順位付けに対する考え方の多様性と、3つの側面の密接な関わりが確認されました。
 最後に、「人間はすごい(最強) vs 自然はこわい(最強)」のアンケートを実施したところ、「人間はすごい」派が18.3%、「自然はこわい」派が81.7%という結果となりました。子どもたちは、自然の脅威を過小評価しない姿勢を見せており、草原教授は、自然のこわさをふまえたうえで、地域に応じた適切な防災のあり方を考えていくことの重要性を伝えて授業をまとめました。

どのようなそなえが一番大事?

手を振ってお別れ!

まとめ

  今回の授業では、「災害から私たちの命を守るためには、(避難訓練に加えて)どのようなそなえが大事か?」という問いを起点に、自助努力に留まらない、公助や共助の視点を踏まえた防災の可能性と限界について考えを深めることができました。
 また、水害や土石流の経験を持つ東広島市、噴火と隣り合わせの鹿児島市・桜島,大津波の経験のある北海道浜中町や奥尻町、そして宮城県仙台市といった複数の学校や地域がつながることで、異なる地域の自然環境と減災の取組を知り、自分たちの地域の防災の課題を考えるきっかけになりました。引き続きNICEプロジェクトでは、学校や社会を結び付けることで公共的課題を探究する授業のあり方を提案してまいります。

宮城教育大HPにも記事が掲載されました!こちらをご覧ください。
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【問い合わせ先】

広島大学EVRI-SIP運営オフィス

Email:sipstaff-evri(AT)ml.hiroshima-u.ac.jp
※(AT)は@に置き換えてください

電話:082-424-6809


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