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広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一環として、「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校」プロジェクトに取り組んでいます。
2025年9月16日(火)、全国3校(広島県立広島国泰寺高校、長崎県立佐世保南高校、熊本県立済々黌高校)をオンラインで接続した遠隔合同授業が実施されました。本授業は「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校」事業の一環として行われ、総勢60名の高校生が参加しました。授業のテーマは「深海をなぜ調査?どんな意義・価値があるの?-海に眠る資源:レアアースをめぐる論点・争点-」。先端研究開発に関するELSI(倫理的・法的・社会的課題)をめぐって他者と対話する力を育成することをねらいとしました。本授業は、内閣府戦略的イノベーション(SIP)第3期課題「海洋安全保障プラットフォームの構築」(海洋SIPチーム)との連携により,JAMSTEC(国立研究開発法人海洋研究開発機構)からの中継映像や海の専門家・技術者による解説、また専門家への質問を織り交ぜながら展開されました。授業全体の進行は、広島大学の草原和博教授が授業の全体進行を務め、各校の進行は担当教員が務めました。
授業の全体進行を務めた草原教授
JAMSTECから生中継!
授業の冒頭では、 JAMSTECからのライブ中継や〇×クイズを通じて、深海への関心を高める導入が行われました。生徒たちは「深海とは何か」「有人潜水調査の限界」「日本近海の地形的特徴」「レアアースの本質」といった4つの問いに〇×で回答し、専門家の解説を聞きながら深海に関する基礎知識を確認しました。生徒たちは、深海とは水深200m以上の光の届かない世界であること、深海調査は一度に8時間しかできないこと、日本はEEZ内の水深5000m以上の海水体積では世界一を誇る「深海大国」であること、レアアースとは量が少ない元素ではなく「取り出しにくい」元素であることなど、深海とその調査の実態について概観することができました。また、JAMSTECは「海洋の総合的な研究を行い」「船舶を所有している」「国家プロジェクトとして研究開発を進めている」研究機関であることも解説されました。
続いて、生徒は「6000mの山に登るのと、6000mの深海に潜るのでは、どちらが難しいか」という問いに生徒が投票し、結果は「潜る派」が多数となりました。その理由として「海は休憩できる施設がない」を挙げた生徒の意見に対し、JAMSTECの専門家は、「6000mの深さでは非常に高い水圧にさらされる(数10mの深さで金属バットが凹む)」「7cmの厚みのあるチタン合金で覆われた潜水艇で潜る必要がある」「しんかい6500は真円構造で水圧に強い」「潜水艇は定期的に点検しているので安全性に自信あり」と述べました。このような導入を通して、生徒たちは「危険な深海に潜って調査することにどんな意義・価値があるのか?あなたは深海調査を行うことに納得?」という学習課題に取り組むことになりました。
○×クイズで深海に関する基礎知識を確認!
海洋の専門家がクイズの答え合わせ!
この学習課題に対して、生徒は自らの仮説を立てる活動に取り組みました。生徒からは、「深海生物に備わる圧力に耐える方法が分かれば、人間に活かせるのではないか」「海底は玄武岩層に近いので、深海は資源採掘に有利ではないか」「資源を確保する上で、深海は重要ではないか」「プレートの動きを知ることで、災害対策になるのではないか」など、多様な視点からの仮説が提示されました。
これを受けてJAMSTECが考える深海調査の意義をお尋ねしました。技術者によると、「JAMSTECは単に海洋を調べているだけではなく、海洋を切り口にして地球の構造を調べている」と回答。技術者ならではの深海調査の意義を聞くことで、生徒たちは深海の世界に引き込まれていきました。また、音波を用いて海底地層を調査し、「レアアース」等の資源の在りかを探る無人探査機「しんりゅう6000」の調査結果も紹介いただきました。
さらに深海調査で注目されているレアアースについて理解を深めました。レアアースに対する生徒のイメージをワードクラウドで表示すると、「貴重」「金属」「材料」「希望」などのキーワードが並びました。研究者や技術者の説明によると、「まず深海の海底にある泥を集める。それを精製してレアアースを集めている」「レアアースは白い粉状」「パソコンやスマホに使われている」といった実態を教えてくださいました。生徒たちは、電気自動車やスマホといった現代生活を支える技術に欠かせない資源:レアアースの確保という視点から、深海調査の意義を確認しました。
先端研究開発の成果「しんりゅう6000」のすごさを解説!
「レアアース」に対する生徒のイメージをAIが可視化!
授業の終盤では、深海調査の意義に対する多様な見解に触れながら、自分の考えを問い直していきました。生徒はレイアースの開発をめぐる6つの記事を読み取り、各記事の主張と根拠を一覧表に整理した上で、深海調査の「推進派」~「抑制派」のベクトルに位置付ける活動に取り組みました。例えば、「日本の資源安全保障のために推進すべき」「外国の輸出規制に対抗するために推進すべき」とする主張や、「非営利目的ならば、環境被害がない範囲で開発は是」「技術を継承できずに、研究や資源探査ができなくなってしまうのは問題だ」とする中間的な意見がある一方で、「生物多様性への悪影響があるかもしれない」「国際的にみれば、騒音・振動・汚染のリスクの観点から反対も多い」として懸念を示す見解もありました。このような記事の比較読みを通して、深海調査をめぐる論点争点を浮き彫りにすることができました。
授業の終盤には、草原教授から「あなたは深海調査の推進派か、抑制派か」の問いが投げかけられました。大半の生徒が「推進派」「やや推進派」と答える一方で、少数ながら「やや抑制派」とする生徒も見られました。最後に草原教授は、次時は自分たちの意見を他校の生徒と一緒にスライドにまとめてJAMSTECに発表・提案するという方針を示し、本時を締めくくりました。
深海調査に対する多様な立場を分析!
主体・主張・根拠をスライドに整理しました!
各資料を推進~抑制の中に位置づけ!
高校生らしい鋭い指摘も!
本実践は、DCC授業を高等学校で初めて行う取組となりました。深海調査という先端技術開発の意義や課題をELSI(倫理的・法的・社会的課題)の視点から探究し、科学者やジャーナリスト、政治家・企業、市民らの多様な声を手がかりに意見分類に挑戦する「総合的な探究の時間」となりました。後日開催される授業後半では、深海調査推進の是非と留意点について子どもが自らの意見を表明します。続報はコチラからご覧ください。
広島大学EVRI-SIP運営オフィス
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掲載日 : 2026年01月06日
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