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広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は、2026年2月5日(木)に、定例オンラインセミナー講演会No.193「広島大学リテラシー共同研究プロジェクト公開ミーティング 第5回 心理学から文章の音読と黙読について考える!」を開催しました。大学院生や研究者を中心に68名の皆様にご参加いただきました。
はじめに、間瀬茂夫教授(広島大学)より、本セミナーシリーズの趣旨および本セミナーの位置づけが説明されました。
その後、森田愛子教授(広島大学)より、本セミナーの概要が説明されました。教育心理学・認知心理学の観点から黙読中の音韻情報処理を研究する意義、研究の背景には音読・黙読のメカニズム比較や、ワーキングメモリ容量の考え方があることが説明され、本セミナーでは現在得られている最新の知見を紹介するという趣旨が確認されました。
セミナーについて説明する間瀬教授
趣旨を説明する森田教授
次に、梁葉飛さん(広島大学・院生) より、「文章黙読中にどんな声が聴こえるか?」と題した講演がなされました。黙読時に頭の中で文章を読み上げる活動である内声化(Subvocalization)は、多くの人が体験する活動であるにもかかわらず、その実態や機能に未解明な部分が多く残されています。まず、成人と中学生を対象とし、物語読解中のセリフ文の内声化の実態を調査した研究結果が紹介されました。内声化実施度の個人差については、内声化を多く行う人もあまり行わない人もいることがわかっています。内声化する時再生される声質についても、どのような声質で聴こえているのかに、様々なパターンがあることがわかりました。しかも、内声化を多く行う読み手や、複数の声で内声化をしている読み手は、物語世界により没入しながら物語を読むという関連も示されました。さらに、内声化実施度の個人差と眼球運動の関連を調べた実験研究が紹介されました。内声化をあまり行わない読み手は、読解中の視線のジャンプが大きく、読むのが速く、効率的な読み方をしているという、成人においても中学生においても同様な傾向が得られました。内声化が読解中に果たす機能により、内声化を多く行う読み方にも、あまり行わない読み方にも、それぞれ長所があり、両者を使い分けるのが、より良い黙読につながるというまとめがなされました。
発表をする梁さん
次に、有馬多久充さん(広島大学・院生)より、「聴きながら読む『範読』は有効的か?」と題した講演がなされました。他者の読み上げ音声を聴きながら黙読する「範読」は、よく行われているものの、読解支援効果については、実は一様ではありません。マルチメディア学習の理論に基づくと、視覚と聴覚の併用が学習を促進する「モダリティ効果」が期待される一方で、同一内容の重複提示が認知負荷を高める「冗長性効果」や、熟達者にとっては支援が妨害となる「熟達反転効果」が生じるリスクが指摘されます。そこで、範読が「誰に」「どのような条件で」有効なのかを体系的に検証した実験結果が紹介されました。大学生を対象とした実験では、文章の難易度と比較して、読みスキルが低い読み手にとって範読は有効である一方、読みスキルが高い読み手にとっては範読が理解を阻害する可能性が示されました。小学校3・4年生を対象とした実験では、学力中位層では範読が読解支援として機能するが、それ以外の児童では範読によって理解が促進されることはなく、低学力層では文章理解が妨げられる可能性があることも示されました。これらの結果から、範読は条件付きで有効であり、場合によっては学習を阻害する要因にもなり得ること、また、範読の効果は、読み手の特性や文章の難易度など様々な要因によって異なることが結論として得られました。
発表をする有馬さん
以上の講演を受けて、ディスカッションが行われました。研究の補足説明にとどまらず、研究成果をどのように解釈し、教育現場で活用すべきか、についての議論がなされ、教育と研究の循環が体現される場となりました。
最後に、森田教授より、本セミナーのまとめと今後の公開ミーティングの予告がなされました。
ディスカッションの様子
広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI) 事務室

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