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広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一環として、「デジタル・シティズンシップ・シティ:公共的対話のための学校」プロジェクトに取り組んでいます。
2025年11月5日、小学校5年生を対象とした広域交流型オンライン学習「半導体をつくる工業-なぜわたしたちの市・国は、『半導体』推しなのか?-」を実施しました。本授業には、東広島市、北海道札幌市・伊達市・釧路市、熊本県菊池市・合志市・南阿蘇村、鹿児島県鹿児島市の各小学校および、各学校のスペシャルサポートルームや各地の教育支援センターから、計14校27学級、656名の児童が参加しました。授業の全体進行は、広島大学の草原和博教授が担当しました。各教室では、担任(T2)と大学・教育委員会から派遣されたサポートスタッフ(T3)が連携しながら、授業を運営しました。
今回の授業では、「なぜ大人(社会)は半導体を推すのか」という理由を探ることを学習課題としました。その手がかりとして、マイクロン・ラピダス・TSMCの各半導体工場が立地する広島県・北海道・熊本県に注目しました。子どもたちは、それぞれの地域の企業の関係者や市役所職員、地元の住民にインタビューを行うことを通して、経済や雇用、税収、生活環境などの観点から、大人が半導体産業を重視する理由を考察しました。
なお、本授業を実施するにあたり、中国地域半導体関連産業振興協議会(事務局 中国経済産業局)および北海道半導体人材育成等推進協議会(事務局 北海道経済産業局)にご協力いただきました。
吉川小学校の窓から見えるマイクロン工場
ブレイクアウトルームで大人にインタビュー!
マイクロンと中継をつなぎました!
地域住民の方々にも登場いただきました!
授業は、東広島市の半導体工場マイクロンからの中継で始まりました。白衣を着た人が登場し、半導体工場ではチリひとつ許されないことや自動化が進んで人が少ないことなどを、自動車工場との違いを踏まえながら確認していきました。さらに、スマートフォンやゲーム機、自動車など、日常生活で使われている多くの製品に半導体が組み込まれていることが紹介され、子どもたちは、半導体が自分たちの生活と深く関わっていることに気づき始めました。
ここで、東広島市の教室に来ていた大人たちに「あなたは半導体『推し』か?」と問いかけたところ、ほぼ全員が◎や○という好意的な反応を示しました。子どもたちは、「推し」の応援団が多いことに驚いた様子でした。これを受けて、「なぜ『半導体推し』が多いのか? 『推し』の理由を考えよう!」の学習課題が立ち上がりました。
マイクロンのクリーンルーム前から中継!
東広島市の大人は半導体「推し」らしい!?
展開1では、なぜ大人が半導体産業を「推す」のかを,子どもたちなりに仮説を立てていきました。子どもたちはまず、自分は半導体を推すかを、フォームを通じて意見を表明しました。投票の結果は、◎/○/△/×/分からない、の5つに意見が見事に分かれていました。子どもたちは、必ずしも半導体推しばかりではないことが明らかになりました。
そこで、あらためて、大人が半導体産業を応援する理由を予想しました。「生活が豊かになって嬉しいから」「まちに人がたくさん来てほしいから」「工場で働くことができるから」など、生活の向上や人口・雇用の増加を視点とする仮説が示されました。さらにこれらの仮説を検証するために、検証先となるインタビュー相手を自分たちで決めていきました。
子どもは半導体「推し」もいれば、そうじゃない人もいるみたい・・・!
なんで大人は半導体「推し」なんだろう・・・?
AIアプリが各学級の意見を集約!
私たちは誰にインタビューしようか・・・?
展開2では、子どもたちが立てた仮説を確かめるために、Zoomのブレイクアウトルームを活用して話を聞きに行きました。設定されたのは、東広島市の市議会議員、東広島市役所の職員、東広島市の工場近くに住む住民、北海道千歳市役所の職員、熊本県合志市役所の職員の5つのルームです。各ルームでは、広島大学のスタッフによるファシリテーションのもと、子どもと大人が「なぜ推すのか(応援する理由)」と「なぜ推せないのか(懸念点)」の両方の視点から対話を進めていきました。各ルームでは、以下のような対話が行われました。
職員さん:推し◎。マイクロンが来ることで関連産業が発達する。
子ども:環境破壊の恐れはないのか。
職員さん:厳しいルールを設けている。工場の周りでは渋滞は起こっている。
【東広島・工場近くに住む住民】
住民:一人は推し○、もう一人は推し△。マイクロンが来て働ける人が増えた。
子ども:デメリットはあるか。
住民:デメリットはある。空調の騒音や渋滞で困っている。
【東広島・市議会議員】
子ども:半導体工場ができたらどうなるか。
議員さん:工場やそこで働く人が税金を納めてくれることで、学校や橋がきれいになる。景気が良くなって、経済が活性化する。
子ども:自分の親がマイクロンに機械を納めており、町の工場同士がつながっている。
【北海道千歳市役所の職員】
職員さん:推し◎。まちが賑やかになる。建物がどんどん建ち、人も増えている。今後税金も増えそう。渋滞は起きるかもしれないが、ラピダスが対策をしてくれている。
職員さん:隣町から水を取ってきている。水を確保することが大事。
【熊本県合志市役所の職員】
職員さん:推し○。お金や仕事が増えて嬉しいが、渋滞などの悩みもある。
子ども:なぜ◎ではないのか。まちが汚くなってしまうのではないか。
職員さん:今のところ汚くなってはいない。
子ども:他にお困りはないか。
職員さん:農地を工場にしていくので、農家さんが困っているかもしれない。
東広島市役所の方とブレイクアウトルームで対話!
熊本からは合志市役所の方が登場!◎じゃなくて○なのはどうして・・・?
他の地域の学校の意見も聞いてみる!
半導体工場がくることのメリット・デメリットを整理!
展開3では、国が半導体産業を「推す」理由について考えました。まず、「国は半導体産業を応援するために、これから10兆円をお助けする。○か×か」というクイズを提示。多くの子どもが○と答える中で、一部には×と予想する声もありました。クイズの答え合わせには、中国経済産業局の職員が登場し、正解は○であることが示されました。さらに「10兆円は、日本国民一人ひとりに8万円ずつ配れる額」であり、「その財源はみんなが納める税金である」と説明すると、子どもたちはその規模の大きさに驚きを見せていました。
では、なぜ国はそれほどの金額を投じて半導体産業を応援するのか。子どもたちは、「国民の生活を豊かにするため」「国の税金が増えるから」「輸入に頼らずに済むので安心だから」など、国の思惑について自分なりの予想を立てていきました。これに対して、中国経済産業局の職員は、「みんなの生活や未来を守るため」であると述べ、具体的には「AIなどに使う性能の良い(電気をあまり使わない)半導体をつくること」、「半導体がないと国民の生活は成り立たないこと」、そして「外国でトラブルがあったときに備えて、自国で生産することが重要である」と説明しました。子どもたちは、市だけでなく国も、半導体をこれからの産業の基盤に位置づけていることに気づき始めました。
本時のまとめとして、草原教授はこれまでの授業から、「地元の人たちは、仕事や税金が増えることが嬉しい。一方で、渋滞や環境悪化は困る」「国は、半導体を日本の将来を担う大きな産業に発展させたいと考えている。しかし、そのためにはお金がかかる」とまとめました。草原教授は、大人が半導体を推す理由について納得できたか、挙手を求めたところ、多数の子どもが納得の意思表示をしましたが、意思を異にする子どもも見られました。ここで時間切れとなり、草原教授は、まちや国をつくっていく市民として半導体産業を見守っていくよう促しました。
国(中国経済産業局)の担当者にもインタビュー!
子どもも半導体産業に対して意見を持つように!
今回の実践では、様々な地域の学校や住民・関係機関を結んで、なぜ半導体産業が社会的に重視されているのかを探究していきました。半導体産業に関わる多様なステークホルダーとの対話を通して、「半導体」産業がもつ意義を、地域、国、世界の各視野から重層的に捉える機会となりました。現在、産業構造は大きく転換しつつあります。今後も本プロジェクトでは、社会と向き合い、社会と学校をつなぎ、デジタル空間での対話や意見の発信ができる市民の育成をめざした授業を提案してまいります。
広島大学EVRI-SIP運営オフィス
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掲載日 : 2026年03月24日
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