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広島大学大学院人間社会科学研究科「教育ヴィジョン研究センター(EVRI)」は、 2026年6月18日(木)に、第200回記念セミナー「EVRIがつないだ人間社会科学研究をふりかえる: 2022-2025」を開催しました。研究者や大学院生、学校関係者を中心に、66名の皆様にご参加いただきました。
はじめに、間瀬茂夫教授(広島大学)より、本セミナーのオープニングに際した説明がなされました。まず、第100回セミナーから約4年半が経過し、さらに100回を数える(第200回をむかえる)こととなった本セミナーでの議論をとおして、広島大学大学院人間社会科学研究科の附属センターとして歩みを進めてきたEVRIの役割を、改めてとらえなおすこと目指す、という会の趣旨が確認されました。その後、現在のEVRIがどのような組織であるかの概要が確認されたのち、これまでのEVRIが取り組んできたプロジェクトや活動、第101回以降行ってきたEVRIセミナーの位置づけなどが整理されました。
その後、4つの観点から、EVRIに関する発表がなされました。
「1)社会発信・実装の観点」からは、吉田成章准教授(広島大学)・草原和博教授(広島大学)による発表がなされました。
はじめに、吉田准教授が「ポストコロナの学校教育を提起する」プロジェクトでの取り組みについて説明をしました。2020年のコロナ・ショック下での学校休業に際し、EVRIでは「同級生の教師のSOSに応答したい」という川口准教授からの持ち込み企画をもとに、2022年までの間、「ポストコロナの学校教育を提起する」と題した研究プロジェクトを実施しました。吉田准教授がリーダーを務めたこのプロジェクトでは、書籍4冊の出版、SSCI論文1報の出版、EVRIセミナー19回の開催がなされました。EVRIの構成員全員を巻き込み、他大学、学校現場、子どもたちなど、EVRIの外とのつながりの構築がなされた点が、本プロジェクトの意義として全体に共有されました。
コロナ禍における取り組みを説明する吉田准教授
続いて、草原教授が「広域交流型オンライン学習→DCC」の取り組みについて説明をしました。2019年の日本学術会議のなかでの「教育学とはどのような学問なのか?」という議論の流れをふまえ、草原教授は、①教育学が規範科学的な性格を有すること、②教育には可塑性があること、③教育をとおして人間が変化することにより社会が変化すること、の3点を強く意識していました。このような意識をもとに立ち上がったDCCの取り組みは、EVRIが東広島市立図書館と協力して作成した「のん太の学び場(東広島市地域学習用デジタルコンテンツ)」を用いて、コロナ下(2020年3月)に実施した「東広島市地域学習用デジタルコンテンツを活用したオンライン講座」を下地に展開しています。現在は5年目となり、新聞等のメディアに取り上げられるなど大きな注目を集めているところです。本事業は、今後、2027年に「DCC全国遠隔授業支援センター(仮)」を設立し、全国をつなぐハブとなる組織に発展させることを目指して取り組みを継続していく予定です。結びとして、草原教授は、研究・社会貢献・人材育成・社会実装の循環をとおして、よりよい学びと社会を創出することを目指す、という今後の活動継続に向けた決意を共有しました。
DCCの取り組みを説明する草原教授
「2)国際性の観点から」は、川口広美准教授(広島大学)・金鍾成准教授(広島大学)による発表がなされました。
まず、川口准教授より、これまでEVRIで行ってきた国際交流の概要が紹介されました。EVRIのもつ「国際性」は、ただ単に海外から学ぶ・海外に発信するという一方向のつながりではなく、それらをとおして、日本と海外、若手とベテラン、多様な学問分野の人々のつながりを創出してきたことが共有されました。
EVRIの国際交流を振り返る川口准教授
このような状況をふまえ、金准教授は、EVRIの役割を「教育学部の教員が国際性を発揮するためのプラットフォーム」であると述べました。その具体的な国際交流の取り組みとして、2020年から2022年まで行ってきた「PELSTE」事業の説明がありました。「PELSTE」とは、“Peace Education and Lesson Study for Teacher Educators”の略称です。これは、2018年に広島大学として加盟した「INEI(International Network of Educational Institutes)」において、広島大学らしさを生かした「平和教育」「授業研究」「教師教育者養成」の3点に特化したプログラムとして立ち上がったものです。このプログラムは、広島大学のもつ知見を海外に発信する、という意義だけではなく、海外の参加者の視点を広島大学側にフィードバックする、という意義も併せもつものでした。
川口准教授は、このプラットフォーム的性格を通して①海外での授業研究支援の経験を通じて執筆された『EVRI叢書』、②「授業研究を軸に教師教育を変革する」プロジェクトでの取り組み、の2点を例に挙げました。そのうえで、EVRIのもつ「国際性」が、「既存の研究の深化」「国際共同ネットワークの構築」「次世代の研究者・教育者の育成」「研究成果の国際発信・還元の強化」「社会への還元・影響」など多様なものを育んできたことを共有しました。
PELSTEの取り組みを紹介する金准教授
「3)学術性の観点から」は、影山和也准教授(広島大学)・川合紀宗教授(広島大学)による発表がなされました。
発表は、代表して影山准教授からなされました。EVRIでの研究は、教育研究という大きな傘の下で行われるものであるため、「学際性」ということばには当てはまらない点もあるものの、分野・領域を超えた研究が行われているという点に特徴があります。例えば、2021年より開催された「教科教育を謳う」シリーズのセミナーでは、教科教育・日本語教育・特別支援教育・心理学の教員が共同しました。他の分野と視点を交流することで、互いの分野から見て教科コンテンツがどのように見えるのか、その中に内在される子どもの抱え得る困難はどのようなものか、に関する議論が深化しました。これらのセミナーをとおした取り組みは、学内の他組織との連携、分野・領域を超えた学会への相互乗り入れ、科研費の取得などにつながりました。
このような取り組みでの経験をもとに、影山准教授はEVRIの意義を「関心と関心が交わるところ」「隠れた関心を喚起するところ」「その関心を出発点として次の動きを生み出すところ」であることに見出しました。
分野を超えたEVRIの取り組みを振り返る影山准教授
「4)人材育成の観点から」は、武島千明特命助教(広島大学)・小笠原愛美教育研究推進員(広島大学大学院)・丸山恭司教授(広島大学)による発表がなされました。人材育成につながるEVRIでの取り組みの例として、ブラウンバッグランチョン(以下、BBLと略記)が挙げられました。
まず、BBLの創設者である丸山教授(前EVRIセンター長)より、創設の経緯が説明されました。EVRIのBBLは、丸山教授が米国留学中に目にしたイベントをもとに、昼食をとりながらざっくばらんに研究の話などを行う会として企画したものです。丸山教授がセンター長を務めた当時、EVRIは①セミナー参加者の減少、②インキュベーション研究拠点から人間社会科学研究科の附属センターへの役割の変化、という過渡期を迎えていました。そこで、以前、広島大学でも実施を試みたものの、志半ばで頓挫してしまっていた企画をEVRIの新たな企画として実施してみてはどうか、と、EVRIの背負う人材育成のミッションとも重ねて提案されたのがBBLでした。「これまで黒子に徹していた教育研究推進員の活躍の場を作り、人材育成を目指す」という企画趣旨もふまえ、第1回は丸山教授が企画し、その後はEVRIの教育研究推進員でローテーションを組み、現在まで実施されてきています。
BBL創設の経緯を語る丸山教授
では、BBLをとおしてどのような人材が育成されてきたのか。これらを明らかにするため、武島特命助教は、元教育研究推進員にインタビューを行いました。その結果、①企画者である元教育研究推進員の企画力向上という当初の目的だけでなく、人間社会科学研究科のなかに参加者も巻き込んで大きな研究ネットワークが構築されたことBBLでの経験が参加した若手研究者らの研究観・教育観の涵養につながってきていることがわかりました。
BBLが果たしてきた役割を説明する武島特命助教
最後に、これまでの流れをふまえて、現在のBBLではどのような取り組みがなされているのかについて小笠原教育研究推進員が説明しました。現在では、企画者を中心にポスターを作成し、広報活動に努める体制ができています。また、企画者の関心や研究テーマ、課題意識に加え、学生のニーズも見据えたシリーズが実施されています。最も大きく変わった点は、BBLでもEVRIセミナーと同様にハイフレックス形式での開催を始めたことです。これにより、B101室にて対面で参加することが難しい教員や、遠方に住む博士課程院生に加え、学外者にも参加してもらうことが可能となり、「お昼の校内放送」としての性格が見られています。最後に、BBLの企画に端を発した共同研究の実施など、さらなる発展が示されました。
BBLの今後について語る小笠原推進員
以上の講演を受けて、西岡加名恵氏(京都大学)より、コメントがなされました。
京都大学のE.FORUMの運営や、SIP課題のサブプログラムディレクターとしての経験により、現在のEVRIの取り組みとも非常に近しい状況にある西岡氏は、それぞれの発表者に対して以下の問いかけをなされました。
(吉田准教授へ)改めて、社会において教育学が果たす役割とは何でしょうか?
(草原教授へ)社会における価値の対立や分断を、どのように乗り越えていけばよいと考えますか?
(川口准教授・金准教授へ)双方にとって実りの多い国際交流を実現するコツは、どのようなところにあるのでしょうか?
(影山准教授へ)学校・先生方がインクルーシブな教育を実現するうえで、最重要なこととは何でしょうか?
(小笠原教育研究推進員へ)一番印象に残っているのは、どのBBLですか?そして、どのように人を集め、束ねていったのでしょうか?
発表者へコメントする西岡氏
その後、これらの問いかけに各登壇者らが応答しました。西岡氏からの問いかけへの応答は、2026年秋に予定されている「第201回記念セミナー」のなかでもさらに深めて議論を行う予定です。
応答する草原教授
応答する小笠原推進員
最後に、松見法男特任教授(広島大学)より、本セミナーのまとめがなされました。
松見特任教授からは、現人間社会科学研究科が、来年度から「教育人文社会科学研究科」に名称変更をすることをふまえ、ぜひとも第300回セミナーでは「教育人文社会科学の未来を拓く」という趣旨での提案ができるように発展していってほしいという期待が共有されました。また、間瀬教授の主導のもと、「メディア」として発展してきたEVRIの役割がさらに発展していくことが祈念されました。
今後のEVRIへの期待の言葉を寄せる松見特任教授
EVRIセミナーが第200回の節目を迎えることができたのは、現在のEVRI構成員の力によるものだけではありません。今回、セミナーにご参加いただいた皆さんをはじめ、EVRIに関心をもち、つながり、応援してくださった方々のお力添えなしに、このような会は実施できませんでした。EVRIは今後も、広島大学、とりわけ人間社会科学研究科の中のセンターとして、教育・研究の発展・展開に寄与してまいります。
会場全体の様子
参加者との記念撮影
広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI)事務室
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掲載日 : 2026年07月01日
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