課題研究指導のための「広大メソッド」

発刊にあたって

「広大メソッド」の趣旨・目的

 高校生の課題研究が目指すところは、高度な研究課題に取り組む機会を生徒に与えることも重要であるが、研究の面白さに気づかせ、将来の大学等での高度な研究に耐え得る基本的な態度(困難な問題に対処するための高い洞察力、主体性・粘り強さ、自他の取組に対する評価・改善、意思決定等)を育成することであると考える。そのための教員の指導・支援あるいは評価の方法を、これまでの本校でのSSH研究開発及び課題研究の実践で得られた多くの実例や経験知を織り込んで取りまとめたのが本書「広大メソッド」である。
 本書の完成により、本校生徒による「主体的・自律的」な課題研究の3年間の流れを可視化することができ、教員による課題研究の指導・評価の改善・発展、授業改善等が推進されるものと考える。また、本書は、各高等学校で「理数探究」や「総合的な探究の時間」において課題研究等の探究的な学習活動を指導する教員の指導書として広く使用されることが期待される。

「広大メソッド」の概要

1)「Autonomous 50」
 本校の課題研究の3年間の流れを、「はじめる」(1~2年生)「進める」(2年生)「深める」(2~3年生)の3期に分け、「Autonomous 50」として、50項目の過程に細分化・具体化した。

2)「OPTG(One Page Teacher’s Guide)」
 「Autonomous 50」の項目に対して、各1頁の指導書である「OPTG」を作成した。各「OPTG」の冒頭には、本校教員の課題研究指導ポートフォリオ及び本校卒業生を対象とした調査から抽出した「生徒ファクター」及び「教師ファクター」を列挙した。表2に、「生徒ファクター」及び「教師ファクター」の一覧を示している。また、内容は「生徒のプロセス」、「生徒のつまずき」、「教師の指導・支援」の3項目で構成し、文中に「生徒ファクター」及び「教師ファクター」に相当する動詞を下線(「生徒ファクター」は一重線、「教師ファクター」は二重線)で示した。さらに、末尾には、「Autonomous!」として、教師の指導・支援のポイントを整理した。

「広大メソッド」全編

 ↑↑ 指導書の全編は上をクリックしてダウンロードしてください。

「Autonomous 50」(課題研究3年間の過程)

  • 課題研究を「はじめる」

A1 課題研究についての見通しをもつ【オリエンテーション】
A2 自然科学分野、人文科学・社会科学分野における研究課題の設定や研究手法について学ぶ【リレー授業】
A3 論文の読み方、組み立て方、構成等について学ぶ【リレー授業】
A4 自然科学分野、人文科学・社会科学分野における研究の実際について学ぶ【特別講義】
A5 研究倫理について学ぶ【特別講義】
A6 上級生の課題研究発表を視聴し、課題研究の内容や成果発表等について学ぶ【中間発表会、SSHの日】
A7 ASコース(理数分野の課題研究)かGSコース(多様な分野の課題研究)かを選択する【ASコース選考】
A8 上級生の課題研究論文を読み、科学的な批評を行う【ASコース選考】
A9 課題研究のテーマ例(実現可能な研究テーマ)について学ぶ【オリエンテーション】
A10 研究計画調書を作成し、共有する【個人、グループ】
A11 指導教員との議論により、研究計画調書を修正・改善し、完成させる【グループ】
A12 研究チーム・研究テーマを仮決定する
A13 研究テーマ・研究チームを正式決定する
A14 先行研究(レビュー)を探索し、その内容について議論し、整理する
A15 リサーチクエスチョン(問い)について議論し、設定する
A16 検証可能な仮説について議論し、設定する
A17 研究内容と関わりの深い研究者(大学教員等)や卒業生とコンタクトを取り、議論の結果をもとにリサーチクエスチョンや仮説を修正・改善する

  • 課題研究を「進める」

A18 研究の計画(何をどこまで明らかにするか)を立てる
A19 日本語・英語で書かれた科学論文の内容を理解する【授業】
A20 予備実験あるいは予備調査の方法について、先行研究(レビュー)を探索する
A21 予備実験あるいは予備調査の方法を議論し、計画する
A22 予備実験あるいは予備調査を実施する
A23 推定、検定等の統計的な手法を学び、結果の分析や解釈に利用する【授業】
A24 予備実験あるいは予備調査の結果を分析し、考察する
A25 研究内容と関わりの深い研究者(大学教員等)や卒業生とコンタクトを取り、予備実験あるいは予備調査の結果について議論する
A26 日本語でのプレゼンテーションの手法を習得する【授業】
A27 研究の成果をまとめ、発表を行う【課題研究中間発表会、校外の研究発表会】
A28 本実験あるいは本調査の方法について、先行研究(レビュー)を探索する
A29 本実験あるいは本調査の方法を議論し、計画する
A30 本実験あるいは本調査を実施する

  • 課題研究を「深める」

A31 本実験あるいは本調査の結果を分析し、考察する
A32 研究内容と関わりの深い研究者(大学教員等)や卒業生とコンタクトを取り、本実験あるいは本調査の結果について議論する
A33 英語でのプレゼンテーションの手法を習得する【授業】
A34 研究の内容について、海外の生徒や外国籍の研究者と意見交換を行う
A35 研究の成果をまとめ、発表を行う【SSHの日、校外の研究発表会】
A36 研究論文およびアブストラクトの書き方を理解する
A37 研究の課題を抽出し、明文化する
A38 研究の到達点について議論し、研究論文の章立てを構想する
A39 追実験あるいは追調査の方法について、先行研究(レビュー)を探索する
A40 ルーブリックを具体化し、研究活動の振り返りを行う
A41 追実験あるいは追調査を実施する
A42 追実験あるいは追調査の結果を分析し、考察する
A43 研究内容と関わりの深い研究者(大学教員等)や卒業生とコンタクトを取り、追実験あるいは追調査の結果について議論する
A44 研究の成果について、その根拠となる先行研究(レビュー)を探索し、理論的裏付けを構築する
A45 研究内容と関わりの深い研究者(大学教員等)や卒業生とコンタクトを取り、研究の成果について議論する
A46 研究の成果をまとめ、発表を行う【校外の研究発表会】
A47 研究の成果を研究論文としてまとめ、提出する
A48 研究の成果をふまえ、科学と社会の関係について他者と議論する【授業】
A49 下級生への研究指導を行う【課題研究中間発表会】
A50 ルーブリックを具体化し、研究活動の振り返りを行う


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