令和5年度 秋季入学式

学長式辞 令和5年秋季入学式 (2023.10.1)

 本日、秋深まる広島大学の地に329人の皆さんを、新しい仲間としてお迎えできましたことを、大変嬉しく思います。とりわけ海外から来られた留学生の皆さんの中には、大きな希望とともに、これから始まる大学生活に一抹の不安を抱いている方がおられるかもしれません。広島大学は皆さんが安心して勉学に励めるような環境と体制を整えています。困ったことがあったら、遠慮なく教職員に相談してください。

 皆さんがこれから学ばれる広島大学は、原爆投下から4年後の1949年に開学しました。最も古い前身校の創立は1874年にさかのぼり、来年は150年の節目を迎えます。先人たちのたゆまぬ努力によって、今日では、12学部4研究科1研究院を擁し、海外から85ヵ国・地域の留学生1726人を含め、約1万5000人の学部生や大学院生が在籍する国内有数の総合研究大学に発展しています。

 本年5月に広島でG7サミットが開催されたことをご存じの方も多いと思います。初めての被爆地での開催に加え、ウクライナのゼレンスキー大統領の参加などもあり、世界の注目を集めました。その評価をめぐってはさまざまな意見がありますが、各国首脳が広島平和記念資料館を訪れ、被爆者の声に耳を傾けるなど、核兵器の恐ろしさを直接肌で感じてもらえたことは、大きな意義があったと考えています。サミットでは、広島大学もおもてなしや通訳などで多くの学生ボランティアが参加したほか、さまざまな関連行事を主催しました。本学が理念のトップに掲げる「平和を希求する精神」を広く世界に示せたものと考えています。

 最近の本学の取り組みを少しお話します。2022年度に文部科学省の世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)に、「持続可能性に寄与するキラルノット超物質拠点」が、中・四国地域の大学・機関で初めて採択されました。特定の物質に見られるキラルという性質に着目し、今までにない性質や形状を持つ新物質の研究・開発を目指す世界で唯一の拠点です。英国のケンブリッジ大学、米国のマサチューセッツ工科大学、ドイツのマックスプランク研究所などの世界的に著名な研究者が、ここ東広島キャンパスで活動を始めています。

 また、G7広島サミットの期間中には、米国マイクロンテクノロジー社とのパートナーシップに基づく日米半導体連携「UPWARDS for the Future」の覚書に調印しました。マイクロンテクノロジー社が、今後5年間に6000万ドルを拠出するビッグプロジェクトで、日本からは、広島大学や東北大学、東京工業大学など国内を代表する5大学、米国からは、パデュー大学やワシントン大学など6大学が、半導体分野で研究開発力強化や人材養成拠点の形成に取り組みます。

 こういった教育や研究の活動に加え、広島大学は社会貢献の分野にも力を入れており、高い評価を受けています。イギリスの高等教育専門誌Times Higher Educationによる「THEインパクトランキング2023」において、本学は2年連続で国内3位にランクインしました。平和で持続可能な世界の実現に向け、これからも全学を挙げて貢献していきます。

 「奇跡の人」で知られるアメリカのヘレン・ケラーさんはちょうど75年前、被爆から3年を経た広島の地を訪れ、「広島は世界に光る平和の街になってください」と市民を励ましました。広島大学は彼女のメッセージを胸に、世界平和の実現に向けて努力を続けていきます。

 広島大学では、皆さんが持てる力を十二分に発揮でき、さらにその力を伸ばせるようさまざまなステージを用意しています。ぜひ、積極的に挑んでもらいたいと思います。「広島大学で学んでよかった」と思っていただけるよう、広島大学は全力で皆さんを応援していくことをお約束します。

 終わりに、今日から第一歩を踏み出される皆さんの大学生活が、実り豊かなものになることを心よりお祈りして、私からのお祝いの言葉といたします。
あらためまして、本日はご入学おめでとうございます。

 

 

 

令和5(2023)年10月1日
広島大学長 越智光夫


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