支援を受けた学生のご紹介

Vol.11 「留学は自分自身が成長できる場所」

名前: 下郡 三奈

所属: 総合科学部国際共創学科 3年

株式会社ダイクレ様 冠事業基金によるご支援により、広島大学短期交換留学(HUSA)プログラムへ参加。
セント・メアリーズ大学(カナダ)へ2022年1月~2022年4月まで留学。

留学先の大学について教えてください。

セント・メアリーズ大学は、カナダの東部、ノバスコシア州に位置する大学で、学生の29%が留学生という国際性に富んだ大学です。Arts, Business, Scienceの3つの学部があり、合わせて49の専攻があります。この大学の特徴としては、118か国から留学生が集まってきており、国際色が豊かなこと、学部で選べる専攻の数が豊富なこと、そして少人数制クラスのため、同じコースをとっている生徒や教授との関係が築きやすいことが挙げられると思います。実際に大学で出会った交換留学生の生徒もフィンランドやドイツ、フランス、ドバイなど様々な国から学びに来ていました。

元々英語圏の国への留学を希望しており、セント・メアリーズ大学は広島大学では1枠しかなかったので、周りに知り合いが全くいない方が留学としての価値が大きいのではないかと考え、セント・メアリーズ大学を選びました。

留学先ではどんなことを学びましたか。

大学4年次から環境経済学を学ぶことになっていたため、経済関連の授業がある大学を選んだのですが、経済学を英語で学ぶことに最初は苦労し、授業以外の時間を使って勉強したことをよく覚えています。留学を通して得られた一番大きな学びは、どんなことに関しても自分の意見をもつことの重要性です。私は経済に関する授業とセント・メアリーズ大学がある地方の歴史を学ぶ授業を取っていたのですが、どの授業も単に知識をインプットして終わりではなく、学んだことを基に自分の意見を述べることが求められていたように思います。

例えばミクロ経済学では、授業中に学んだ知識を使って、「あなただったらこういう状況でどういう判断をするのか」を問われることが多くありました。私はこれまで、授業で学んだことを正確にアウトプットすることにとらわれていたので、学んだことを根拠として自分の意見を相手に納得させるという学習スタイルは初めてでした。しかし、「もし私がお店の店主だったら・・・」「もし私が政府の一員だったら・・・」というように考え、「こういう根拠を基にこのように判断する」と自分の意見を述べることで、より主体的に楽しんで勉強できていたように思います。

また、セント・メアリーズ大学のある地方の歴史を学ぶ授業では、昔から現在も続く問題を扱うことが多く、その問題に対して自分自身がどう考えるのか、どう解決していけるのかを考えるようになりました。例えば、現在は多様性が重んじられ、誰もが尊重される社会であるべきとなったアトランティック地方ですが、かつては先住民族や黒人迫害をしていたという負の歴史を持っています。それぞれの民族の歴史や締結されてきた条約を理解することで、どのような過程を経て今に至り、これからも多様な民族が共存するためにどういう社会であるべきなのかを考えるきっかけとなりました。実際に、セント・メアリーズ大学のホームページには大学の敷地は先住民族Mi’kmaq(ミクマク)の領土であったことが記載されており、現在が歴史と隣り合わせであることを再認識させられました。

アトランティック地方ならではの歴史を学ぶこの授業では、私自身、歴史に対する見方が大きく変わったように思います。
これまでは歴史を学んで終わりだったのですが、歴史を経て今もまだ解決できていない問題が存在することから、歴史と今を結びつけること、その歴史をふまえて自分自身はどう考えるのかが大切なのだと気づきました。歴史を学ぶ意義を改めて感じたように思います。このように大学の授業を通して、学ぶことに積極的になれたり、今まで意識していなかった新たな視点を見つけることができたと思います。

新たな気づきを得られたのですね。授業以外の生活面ではいかがでしたか。

授業外で学んだことは、対面で人とコミュニケーションをすることの大切さと、英語に自信がないからこそ積極的に話さなくてはならないということです。
私が留学に行ったのは1月からの冬学期だったのですが、コロナの影響で最初の2週間は、授業も含めすべてオンラインで行われました。そのため、オリエンテーションや留学生向けのイベントなど学期の初めに行われるイベントもオンライン開催となりました。留学に来たからには早く友達を作りたいと意気込んでいた私にとって、オンラインでの友達作りはなかなかハードルが高く、うまくいきませんでした。その場で会話が盛り上がったとしても、その後も続くような関係性を構築することができなかったのです。コロナによる人数制限で寮に入居することもできず、せっかく留学に来たのに思うように人と繋がれないもどかしさをずっと感じていました。

そのため、帰国する1か月前にやっと開催された対面での交換留学生が集まる会は、とても楽しかったのを覚えています。対面でイベントが開催された本当に貴重な機会だったので、いろいろな人に話しかけました。そのときはいろんな国の学生と盛り上がることができ、とても嬉しかったです。他の交換留学生から、大学で開催されているイベントや利用できるスポーツ施設など、知らなかった情報もたくさん教えてもらいました。交流会の後は、皆でアイスホッケーを見に行きました。

この経験から、英語に自信がなくても自分から話しかけることで、相手も話してくれることを知りました。自分が続けてずっと話すことはできなくても、最初に話しかけて、あとは聞き手に回り、分からないことを質問することでなんとか会話が続いたように思います。何を話そうかと悩む前に、とにかく自分から話しかけることが大切だと感じました。ただ、交流会後はすぐにテスト週間に入り、そのまま帰国になってしまったので、もっとたくさんいろんな人と話したかったという後悔があります。今度、海外に行く時は今回の経験を活かして最初から積極的に話しかけていこうと思いました。

今回の留学をどのように活かしていきたいですか。

今回の留学を通して、もっと自分の英語力を磨き専門性も高めて、また海外で勉強したいという思いが強くなりました。

まだまだ自分の実力不足で、学問的に吸収できることは少なかったように思います。ただ海外には学びに対して積極的になれる環境があって、そこで勉強したからこそ得られた新しい気づきがあり、自分自身が成長できる場所であったと感じました。勉強は一生続けていかなければならないことです。日本だけに留まっているよりも、いつもとは違う環境の中で他国の人と学ぶことで、刺激を受けたり成長したりする機会が多くあるのではないかと感じました。そういう環境で成長するには、英語力と専門性を持つ必要がありますが、どちらも今の私には足りていないことです。

自分の専門と言えるものがまだ明確ではないのですが、カナダで歴史を学んだ際に、まだ解決されていない問題は日本にもあるのではないかという疑問が湧いてきて、そこから日本の民俗学にも興味を持つようになりました。
カナダで受けた経済学の授業もとても興味深いものでしたので、これから専攻する環境経済にも役立ていければと思います。

英語と専門の勉強にしっかり取り組んで、また海外に行って挑戦したいです。

 

(2022年10月取材/基金室)


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